概要
2015年に「軽飛行機で配達人をしている女の子」という有馬の着想をもとに、同氏が運営している同人サークル「スタジオゴンドワナ」にてさかきいまさと作画でオリジナルの同人漫画として「ステラエアサービス 曙光行路」そ制作し、コミティアなどで販売を開始したのが始まりである。
それから暫くして、有馬の執筆により2018年1月からカクヨムにてライトノベルが公開され、2020年に電撃の新文芸にて書籍が刊行された。
史実とは異なる歴史を歩んだ日本を舞台に、新米商業パイロット、天羽夏海の成長を描く。
あらすじ
亡き父に憧れ商業飛行士デビューした天羽家の次女“夏海”は、高校に通う傍ら、空の運び屋集団・甲斐賊の一員として悪戦苦闘の日々をスタートさせた。
受け継いだ赤備えの三式連絡機「ステラ」を駆り、夢への一歩を踏み出した彼女だったが、パイロットとして致命的な欠点を持っていて――。
南アルプスを仰ぐ県営空港を舞台に三姉妹が営む空の便利屋「ステラエアサービス」が繰り広げる、家族と絆の物語。
(裏表紙の紹介文より)
この世界での第二次世界大戦
この世界での第二次世界大戦は、戦前から政府が力を入れた航空政策により、1945年9月15日に日本が降伏するまで続いたことになっている
史実より一か月ほど終戦が遅れたことになるが、そのおかげで国内の鉄道網は戦略爆撃でズタズタにされ、帝都東京の住民たちは飢餓により死の淵に瀕していた。
東京に物資を届ける方法は空路のみとなり、GHQは接収していた日本軍機を民間に放出し、物資輸送を行わせた。
空の運び屋集団・甲斐賊について
空の運び屋集団・甲斐賊は、第二次大戦終了直後の物資輸送時に旧日本陸軍玉幡飛行場を拠点とした一団のこと。当時は普通の物資輸送のほか、ヤミ米の輸送なども行っていた。
玉幡飛行場が県営玉幡空港になったのちも、同地を拠点とする空の運送会社たちを自他ともに甲斐賊と呼んでいる。
登場人物
レギュラーキャラクター
- 天羽夏海
ステラエアサービス専属の新人パイロット。同じくパイロットであった父に憧れて同じ道を目指す。
山梨県立甲斐杜高校二年生。
真っ赤に塗られた三式連絡機を愛機とする。
憧れの商業パイロットとなったものの、本人も知らない致命的な弱点がある。
- 天羽美春
夏海の姉であり、新興航空会社「ステラエアサービス」の社長。
父親とともに世界中を飛び回っていたが、父の死をきっかけに空に出ることをやめている。
その美貌と柔らかな物腰からファンが多く、本人には内緒でファンクラブや親衛隊も結成されている。
- 天羽秋穂
夏海の妹。中学生。
得意科目は地理。学校での成績は常にトップクラスだが、運動は苦手。
その地形をイメージする能力は群を抜いており、何の専門教育もなしに飛行機の管制を行えるほど。
外部には秘密で玉幡空港の航空管制を手伝っており、飛行機乗りの間では、的確な管制を行う謎の航空管制官「甲州ウィッチ」として有名。
三姉妹の中で唯一の貧乳。
- 天羽冬次郎
夏海たち三姉妹の祖父。もと大日本帝国陸軍軍人。
第二次世界大戦中は独立整備中隊に所属しており、ビルマで航空機の整備を行っていた。
復員後、一機の三式連絡機を手に入れ、物資輸送を始める。
老いてもその体力と整備技術は衰えず、どのような航空機でも整備、修繕することができる。
- 天羽芳郎
夏海たちの父(故人)
南極の空を飛ぶという夢を持っていた。
彼への憧れが、夏海が商業パイロットを目指した要因である。
- 名取陸生
ステラエアサービスの整備士。夏海と同じ県立甲斐杜高校に通う。
美春のファンであり、天羽美春親衛隊、隊員ナンバー001番。
彼によると、天羽美春のファンクラブは「美春さんに邪な思いを抱えた連中の吹き溜まり」らしい。
師匠である冬次郎によく怒鳴られている。
- 光岡桜子
夏海のクラスメイト。彼女とは小学校以来の付き合い。
勉強の苦手な夏海のテスト勉強を手伝っている。主に直接勉強の指導をしていることが多い。
- 枇杷島雪乃
夏海のクラスメイト。
桜子と同じく、夏海のテスト勉強に付き合っている。こちらはテストの範囲を山掛けする担当。
陸生に恋をしている。
ゲストキャラクター
- 稲葉耕作
「曙光行路」に登場。
白峰連峰に位置する山荘、白峰山荘の主人。
元甲斐賊であり、かつては局地戦闘機「雷電」を愛機に飛び回っていた。
甲斐賊を引退した今でも、かつての愛機と同じ塗装を施したウルトラライトプレーンを操り空を飛ぶ。
白峰山荘の雷親父として有名。
- 柿崎和馬
「曙光行路」に登場。「霧幻邂逅」では、仕入れに出かけたことが桜子から語られている。
玉幡飛行場内で唯一の旅客用設備。喫茶店「エアポケット」の店主。
かつては甲斐賊の一員で、腕のいいパイロットだったが、先代店主だった父の死去をきっかけに引退し、喫茶店を継いだ。
- 工藤絵梨花
「霧幻邂逅」で登場。
玉幡空港に着任したばかりの新米管制官。
他とは何もかも違う玉幡空港に戸惑いつつ、秋穂の教えを受けて玉幡流の航空管制を学んでいる。
- 的場瑞樹
「霧幻邂逅」で登場。
小学校以来の秋穂の友人。クラスは秋穂の隣の2年1組。
水泳部に所属しており、よく日に焼けた肌とショートカットの髪が特徴。
かつて、父の操縦する飛行機が秋穂の管制で墜落をまぬかれている。
- 小泉紗英
「霧幻邂逅」で登場。
秋穂のクラスメイト。クラス内のスクールカーストでは第二位にあたる。
大手航空会社で商業パイロットをしている父を持つ。
自己顕示欲が強い。
- 小泉賢治
「霧幻邂逅」で登場。
小泉紗英の父。大手航空会社「日本空輸」で機長を務めている。
人手不足により長期休暇を返上して勤務に入り、そのおかげで家族での北欧旅行が延期となった。
シアトルから羽田まで、米国政府の依頼で首脳会談用の機材を運ぶ「日本空輸301便」に機長として乗務する。
- 福留
「霧幻邂逅」で登場。
日本空輸301便の副操縦士。機長への昇進を控えている。
- 八十神太郎
「霧幻邂逅」で登場。
アメリカ政府から派遣された荷物の管理人として、日本空輸301便に搭乗する。
両親は日本人だが、そのアメリカ出張中に生まれたため、米国籍となった。
かつては日本空輸やアメリカ空軍に勤務していたことがあるほか、玉幡空港にもいたことがある。
三姉妹の父、天羽芳郎や祖父の冬次郎とは知り合いらしい。
- 黒崎
「霧幻邂逅」で登場。
玉幡空港で地上での荷扱い作業などを行う「有限会社百足組」の社員であり、天羽美春親衛隊のメンバー。
バルバスバウのようなリーゼントが特徴。
陸生のことを総長として尊敬しており、彼と夏海の危機に駆けつける。
登場機体
天羽夏海の愛機。コールサインは「ステラ11」。
夏海の商業パイロットデビュー前は格納庫の裏でボロボロの状態で放置されていたが、冬次郎と陸生の手によって復活を遂げた。
冬次郎が最初に手に入れた機体でもあり、三代にわたって天羽家の人間が愛機としている。
紅の塗装をまとっているが、三倍速くなるわけではない。
赤い塗装は山田昌景の鎧の色をもとにしており、甲斐賊たちの旗印、玉幡空港のカナメのような存在。
南極で撮影された天羽芳郎の写真に映り込んでいる機体。彼はこの機体で南極に飛んだと思われる。
- カーチスC-46
玉幡空港を拠点とする航空会社「鹿山運輸」で使用されている機体。忠岡という男がパイロットを務めている。
- 四式基本練習機
夏海が航空機の自家用免許を取得する際、教習で搭乗した機体。
玉幡空港のフライトスクールで練習機として使用。
ドイツの練習機、Bü131ユングマンのライセンス生産機。
- 二式高等練習機
四式基本練習機と同じく、フライトスクールで練習機として使用。
九七式戦闘機を複座化し、練習機としたもの。
「霧幻邂逅」で登場。
日本空輸301便に使用された機体。
ボーイングの双発機「B767」の空軍向け空中給油機仕様「KC767」を改造し、長距離貨物機に仕立て上げたもの。
空中給油機の他機に給油する分の燃料タンクも自機の燃料タンクとして使用し、通常の貨物機と比べて荷物の搭載量は劣るものの、シアトルと羽田を無着陸で飛行可能な航続距離を持つ。
試作はしたが注文が入らず、ボーイング社で眠っていたところを八十神が借り出してきた。
書籍情報
ステラエアサービス 曙光行路(ISBN978-4-04-913327-1)
同人漫画として先に公開されていた部分で、第一巻にあたる。
カドカワ電撃新文芸から出版中。よしづきくみちが挿絵を務める。
商業パイロットとして最初の一歩を踏み出した三姉妹の次女、夏海の成長を描く。
ステラエアサービス 霧幻邂逅(ISBN978-4-04-913626-5)
山梨・甲府に迫る大型貨物機墜落の危機に、ステラエアサービスが任務開始!
中学生でありながら、類まれな才能を買われて航空管制業務を手伝う、天羽家の三女・秋穂。
亡き父の夢を追い、パイロットとなった高校生の姉・夏海の姿を見て、自分の進路に漠然とした不安を抱える日々を送っていた。
そんな折、濃霧の玉幡飛行場に緊急着陸要請が舞い込む。大型貨物機墜落の危機に、秋穂も否応無く巻き込まれて──。
南アルプスを仰ぐ県営空港を舞台に三姉妹が営む空の便利屋「ステラエアサービス」が繰り広げる、家族と絆の物語。
カクヨムによる小説のみで、第二巻にあたる。今回は三姉妹の末っ子である「甲州ウィッチ」こと天羽秋穂に焦点を当て、玉幡空港に迫る未曾有の事態に対処する姿が描かれる。
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スーパーカブ(小説):カクヨム発・山梨県をネタにしたという点で共通。