概要
スプルーアンス級駆逐艦(Spruance-class Destroyer)は、アメリカ海軍が過去に保有していた駆逐艦。一番艦の艦名は、海軍軍人のレイモンド・スプルーアンスに因む。かつての軽巡洋艦並みの大きさ(満載8,000t)を誇っていたが、実に31隻もの同型艦が就役した。2018年現在、試験艦として運用されているポール・F・フォスターを含め、全てが退役している。
特徴
元々、対潜任務を行うDXとDDの設計を基に艦隊防空システムを搭載したDXGを整備するDX/DXG計画という駆逐艦調達計画に基づいて建造されたものであり、本級はDXにあたる。DXはアレン・M・サムナー級やギアリング級など従来の大戦型駆逐艦を代替する対潜駆逐艦的な性格を持っていたため、本級は対潜戦闘を重視している。大型化によって静粛性、航洋性の向上を図り、将来への余裕も確保していた。そのぶん、砲・対艦兵装などがソ連艦や大戦型駆逐艦より少なかったので、「装備が少なくて弱そう(意訳)」という議会の疑念はあったが、実際には優秀な対潜艦として活躍した。
改装によって垂直発射装置や、装甲ボックスランチャーを搭載したことでトマホークの運用能力を獲得し、対地攻撃までできる汎用艦になったが、対空能力だけは個艦防空にとどまっていたため、艦種はDD(駆逐艦)のままであった。また、調達コストが既存の艦よりも高額になってしまったことや艦隊防空システムのターター・D・システムの開発が遅延したことなどによりDXG計画は破棄されてしまった。ただ、後にイラン海軍がDXGをベースとしたミサイル駆逐艦として発注しながら、イラン革命により結局アメリカ海軍が運用したキッド級ミサイル駆逐艦は、わずか4隻とはいえDXGを具現化した存在といえる。また、大型化による余裕を活かして、世界初の実用型イージス艦タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦のベースとなっており、対空能力を重視したDXG計画が、形を変えて実現しているといえる。
本格的なガスタービン搭載大型艦であり、機動力が非常に高く、巡航速度から全速航行への移行までの時間もかなり短い。