硬貨を捧げれば、パンを得られる。
税を捧げれば、権利を得られる。
労働を捧げれば、報酬を得られる。
なら一体何を捧げれば、この世の全てを知れる―?
概要
『チ。-地球の運動について-』とは魚豊氏による漫画作品である。
累計250万部を突破し、「マンガ大賞2021」の第2位、「このマンガがすごい! 2022 オトコ編」の第2位、「次にくるマンガ大賞2021」のコミックス部門第10位、「第26回手塚治虫文化賞」の大賞など数々のマンガ賞を受賞。
週刊ビッグコミックスピリッツにて2020年9月より連載が開始され、2022年6月30日に最終巻となる8巻が発売された。
2023年には星雲賞のコミック部門を受賞。他に同部門には『ゴールデンカムイ』や『タコピーの原罪』、『Dr.STONE』などもノミネートされていた。
あらすじ
舞台は15世紀のヨーロッパ。異端思想がガンガン火あぶりに処せられていた時代。
主人公の神童・ラファウは飛び級で入学する予定の大学において、当時一番重要とされていた神学の専攻を皆に期待されていた。
しかしある日、ラファウの元に現れた謎の男が研究していたのは異端思想ド真ン中のある「真理」だった———!!
(作品ページより)
登場人物
第一集
CV:坂本真綾
本作品の主人公の1人。
孤児でありながら弱冠12歳で大学に合格する神童であり、六等星まで見えるほど優れた視力を持つ。「合理的に生きる」ことを信条とし、「合理的なものは常に美しい」と考えている。天体観測を好むが養父のポトツキに止めるよう言われる。大学では神学の専攻を決意していたが、フベルトと出会い異端思想とされる『地動説』を知る。作者曰く特定のモデルはいないが合理的にスキルを磨いてひたすら「上」を目指す「器用な人」。
CV:津田健次郎
元傭兵の異端審問官。常に気だるげ。仕事のためと割り切って異端者を拷問し、処刑している。家族に自分の仕事の詳細は伝えていない。
作者曰く人物造形にあたってヒントにしたのはナチスの「アドルフ・アイヒマン」
ポトツキ
CV:巻島康一
ラファウの養父であり、教師。大学に合格したラファウに神学を専攻するよう求める。実は異端の前科があり、異端は2度目は処刑されるため非常に恐れている。フベルトの知人。
CV:速水奨
「異端思想」の研究を行う天文学者。ラファウから見て「デカッ!ヤバッ!なんだこの怪しさしかない人は!?」と形容されるほど怪しい容姿。顔は拷問を受けたかのような跡があり杖をついている。しかし、研究を棄てるつもりは一切無い。ラファウに『地動説』を説き、二度目の連行の際に木製のネックレスを託して火あぶりの刑に処された。
第ニ集
オクジー
CV:小西克幸
代闘士。超ネガティブ思考。優れた視力を持つが、空を見ることを恐れている。現世に何も期待しておらず、早く天国に行きたいと願っている。作中では大柄な方。長髪で後ろに団子にして纏めている。文字はあまり読めない。
CV:中村悠一
修道士。「人生を特別にする瞬間」を求め、教会の規律に従うことなく純粋に「知」を追求した結果、眼を焼かれ田舎村に左遷された。知識量、計算力など並外れた頭脳をもつ。
視力を失った右眼には眼帯をしている。傲慢で他人との「知識の共有」に興味がない。顔の傷は出家前、友人に研究成果を取られ、逆上した相手との決闘の末ついたもの。
ヨレンタ
CV:仁見紗綾
天文研究助手。宇宙論の大家の施設に入れたが、「女だから」という理由で満足に研究をさせてもらえずに絶望している。バデーニが出題した難問を解くなど、施設でも有数の頭脳をもつ。コルベの助手。こっそり研究内容の盗み聞きをしている。
グラス
CV:白石稔
オクジーの同僚。超ポジティブ思考。疫病で家族を亡くし絶望していた中、火星に希望を見出した。
火星の観測記録をつけている。
ピャスト伯
宇宙論の大家。『天動説』の証明に人生を捧げる貴族。親族から除け者にされ、従兄弟違いの教授のもとへ勤める。コベルの提出した論文に高評価を与える。
コルべ
CV:島崎信長
ヨレンタの先輩。パーマをかけたような髪型に好青年な容姿。ヨレンタが作成した論文を自身の名義で発表。ヨレンタの実力を認める度量はあるが、無意識に女性軽視的な行動をしている。
クラボフスキ
バデーニが左遷された教会にいる司祭。村人との仲は良好で人当たりも良い。
アントニ
司教の息子。教会の今後を考え、ノヴァクを敵視している。
第三集
ドゥラカ
黒髪のポニーテールに褐色肌の少女。移動民族。
幼少期に両親を亡くす。親戚として飲酒が趣味の叔父がおり、ある過去から「金稼ぎ」に固執している。
シュミット
異端解放戦線の隊長。幼少期に村のc教の派閥争いに巻き込まれた過去がある。解放戦線の志願者に入隊試験を行う。
フライ
異端解放戦線メンバーの一人。爆薬の調合ができる。
レヴァンドロフスキ
異端解放戦線メンバーの一人。
その他
- タイトルの「チ」は大地の地、血液の血、そして知識の知の3つの意味が込められている。
- アニメ前にNHKの番組『コズミックフロント』にて地動説が採り上げられた際にコラボし、名シーンがアニメ化された。
フィクション性について
- ガリレオ裁判などの印象が強いため勘違いされがちだが、実際の歴史において地動説はキリスト教から劇中のような迫害を受けていない。そのため本作品は地動説が苛烈に迫害される世界を描いたフィクション作品であり、登場する国名は「P王国」、主要な宗教は「C教」などとなっていると考えられる。
- 現実の聖書においてC教のような「地動説は異端そのもの」とする記述は無く、どちらかといえば天動説はアリストテレスやプトレマイオスといったギリシア文明の権威的な哲学者・科学者によるものである。
- しかし、物語の終盤では、地動説は異端と必ずしも判断、迫害されるものではないと明言された上で、本作品のような限定された場所での時の権力者の独断による異端判断など歴史の記録上には残さない形で迫害された本作キャラクターのような人間が存在したことが、民衆には上記の勘違いを引き起こすに至ったという史実性と整合し得る解釈を示し、ある種のどんでん返しが行われた。そこから続く時系列の最終章では「P王国」ではなく「ポーランド王国」と実名表記となって、本作キャラクターによる残滓が実在の天文学者アルベルト・ブルゼフスキ(地動説提唱者として最上級に有名なコペルニクスの師)に示唆を与えたところで物語は終了する。
- 1~3章と最終章との関係は明言されておらず、序盤の展開は劇中劇・平行世界・あるいは一種のメタフィクションとして捉えることもできる。
- 劇中で描かれる天体理論についての図は不正確であり、特に地動説が真理・天動説が虚構という構図を分かりやすくするために天動説で惑星運動を説明するための周天円が過剰に複雑に描かれている。
- テレビアニメ版では国や宗教などの名詞がさらに変更されており、例として「C教」は「教会」と言い換えられている。
- このことを踏まえたうえで、この作品から現実のポーランド王国・キリスト教・中世ヨーロッパ人への偏見を導き出さないように気を付けたい。
テレビアニメ
2024年10月より、NHK総合にて放送。初回は1話と2話が連続放送された。各話放送終了後にはNetflix、ABEMAで配信される。
NHK総合での放送の為、自然災害や海外情勢などによっては放送休止があることには注意されたし。
全25話、連続2クール(2024年秋・2025年冬)の放送予定。
スタッフ
主題歌
関連動画
外部リンク
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