テレビでこんにちは!の巻
てれびでこんにちはのまき
こち亀第571話として少年ジャンプに掲載。『あるシステム』を先駆けた予言的な内容であるが、該当エピソードを観てから記事を読んでいただけたい。
就職情報誌を読みながら派出所に入っていく両さんこと両津勘吉。減給の上ボーナスカットの月給300円(麗子曰く「小学生のおこづかいより少ない」)になっていた為、生活困難になりそうな両さんは(多少やばい物を目をつぶりつつ)バイトを探していた(※警察官を始めとした公務員はバイト等の副業は禁止です)。
そして両さん的にピッタリなバイトを募集している「イベントネットワークコーポレーション(以下「INC」)」を見つけ決めた。しかし、中川曰く(力より頭を使う)コンピュータの会社のようだが、両さんは少々疑問を持っていたが、生活費の為に気にしないようにした。
そしてバイト初日。
両さんは3つの班の内1つを担当。クラス会をやっている居酒屋にテレビを運ぶ事になった。
両さん「運送屋じゃないか!どこがコンピュータの会社なんだ⁉」
先輩バイト「今にわかるよ!」
両さん達は居酒屋に到着し、部屋にテレビを運ぶ(曰く30キロ以上)。両さんが目に入ったのは多くの料理が乗ったテーブルだった。
その席にテレビを置くことになっているのだが、先輩バイトによると、テレビ電話でクラス会が行われ、出席者には事前にモニターテレビが送られ、電話回線で会場と中継するそうだ。つまり、家に居ながらクラス会に出るわけである。今回の場合、学校が廃校になり、銀行等を勤めている者が多く、転勤ばかり(海外勤務も多い)で一堂に集まるとこは不可能らしい。
クラス会が始まった瞬間、一斉にテレビが付きしゃべりだした(先輩バイト曰く「15年ぶりの対面」)。そして、バイト達も見ているだけじゃなかった。テレビ自体は動けないので、出席者の指示でテレビの角度を度々動かして、クラス会を進行させないといかなかった。
両さんは名簿を見て多くがエリートばかり(先輩バイト曰く「出席者でパリ支店に勤めているはずの青山氏は、実は会社がつぶれて4畳半のアパート暮らし」のようである。両さん「インチキかよ!」)。INCのテレビ電話型システムは、本人が映るので背景オプションが付けられており、海外ではよく使われており、更に本物の服まで付いて顔だけ出せばOK(両さん曰く「観光地の看板みたい」)。
しかし、トイレから戻ってきたその顔出しパネルを使用しているエリート商社の赤木がとあるハプニングを起こした。
教師「クラス1のエリートのキミがなぜ…そのような仕事を…!!」
赤木「何を言うんです!私は今の仕事につくのが夢だったんですよ先生!!」
本人は気づいていないようだが、使用しているパネルが金髪美女の背景パネルだった為、周りからは妙な誤解をしていた。たまに間違えている人がいるようだが、真顔だけに知らせようにもしづらい雰囲気であった。
翌日、両さんは中川と麗子にバイトの内容を説明していた。結婚式などの会場への往復を含めると1日潰れる為に合法的と両さんは語る(麗子曰く「画面同士のあいさつじゃムードがない」)。肝心のクラス会は途中で停電になり、それでおひらきという悲惨で後味が悪い終わりになってしまったという(赤木の誤解が解けたかどうかは不明)。今後どんどん伸びる企業そうなのでバイト代も最高なので、両さんはもうしばらくバイトを続けることに。
そしてあくる日、今度の結婚式は相当集まり、INCの社運がかかったビッグイベントで、バイトの量も5倍になっている。両さん達が会場内を見ると、1000台のテレビ電話が設置されていた。両さんは不気味なほどの静けさとこの後の1000台のテレビが一斉に喋るという不気味な予想に引いていた。
後10分で始まろうとした時に、両さんが2時間もかけて繋げたテレビ回線を足に引っ掛けて外れてしまう。
仕方なく配線をメチャクチャに繋げて式をスタートしたのだが、新郎新婦が男同士で、仲人が10歳の子供やらでヒドイ結婚式になったと言う。
中川「ニューハイテクビジネスも大変ですね」
両さん「世の中先ばかり見て突き進むからパニックになるんだ!たまに後ろをふりむいて…テレビ電話より糸電話に変えるとかな!これこそ通信ネットワークの基本だぞ!」
中川「いやあなつかしい!このほうがいいですね!」
もうお気づきの方はいると思うが、このエピソードは「リモートワーク」を題材した話で、まだ年号が昭和である1988年に掲載されていた。これを見た現代人からは、「時代を先取っている」「予言の書」と感想を言っている(他にも予言的なエピソードもあるので探してみよう)。さすがに今回のように会場や(本物の)料理を用意したり、大規模な(生身の)スタッフがテレビを動かしたりはしないが…。今では当たり前のシステムなのだが、ネットも普及し始めたばかりの時代なので(ネットの知識があまりない)当時の麗子の言い分ではあながち間違いではなかった。
社運の駆けた結婚式が台無しになったINCはその後どうなったのかは不明だが、少なくとも致命的な大ダメージを受けてしまったのは間違いないであろう(両さんが原因に見えるが、本人によると新米のバイトが移動中にテレビを落としているらしく、他にもミスをしたバイト達もいると思われるので両さんだけが非があるわけではない)。