概要
伝説の「大破壊」によって荒廃した世界、そのうちの一地域「アシッドキャニオン」を舞台にした『メタルマックス2』。多くの町やダンジョンがある中、ひときわ異彩を放つ施設、それがデスクルスである。
かつて刑務所だった場所を再利用した「自由の楽園」。
順当に旅をしていれば最初にデスクルスの名を聞くのはハトバの村だろう。ギンバがデスクルスの牢を破ったためグラップラーから追われる身である、という情報を酒場で聞くことができる。デスクルスがグラップラーと繋がっていることが早くも判る。
次にデスクルスの名が出されるのは湖東の町イスラポルト。病院で臥せっている1人の男が謎の感電をしながらデスクルスの名を叫ぶ。ここでハッキリと、プレイヤーに印象を残す名前として刻まれるであろう。
次にこの名前を聞くのはおそらくモロ・ポコの町だと思われる。そこで聞こえるのは「入ったら二度と出て行きたくなくなる町」という妙な言い回しの評判であった。だが、痛みで苦しんでいる男にある物を使って治すと、その男は「あそこは地獄だ」と言う。丁寧に情報収集をしていればここで辻褄が合う。
そして、砂漠を抜けて巨大な谷レインバレーまで辿り着いた一行の前に巨大な建造物が姿を見せる。
どう見ても現役の刑務所である。
確かに目の前にある坂を下りればレインバレーなのだが、その前に興味本位で入ってみた人もいるのではなかろうか。
いきなり流れるエルニニョの町と同じBGM・・・そして書かれていた看板に書かれていた「じゆうの らくえん デスクルス」の文字・・・なぜか刑務所の面会窓口の向こう側でモロ・ポコの評判と同じ言葉を喋る人々・・・
いよいよもってプレイヤーの疑いは確信へと変わる。
ここにいるのは騙されて連れてこられて閉じ込められている人々であり、今もその実態は刑務所そのものであることを。
しかし騙されるのを覚悟でいざ潜入してみたとき、さらに想像を絶する実態が広がっていたことを、まだ知る由もなかった。
見張り塔・大量の新品家具・面会室など、実際の刑務所の知識をある程度持ったスタッフが作ったのではないかと古くからのファンにはある意味評判のスポット。
「ドラム缶」
意を決して潜入すると、やはり待っていたのは強制労働であった。
しかしその労働内容は一般の刑務所とは一線を画す。
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上記の形で広場に置かれた5個のドラム缶。
これをすべて広場の反対側へと押していく。
それが終わったら看守へ報告し、
そのドラム缶を今度は再び元の場所へと戻す作業が待っていた。
何の意味があるのだろうか。
しかも看守が言うには翌日は本日の2倍のノルマになるとのこと。
どういうことだろうか。
翌日。
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広場に置かれた5個のドラム缶。
これをすべて広場の反対側へと押していく。
それが終わったら看守へ報告し、
そのドラム缶を今度は再び元の場所へと戻す作業が待っていた。
戻し終わったら看守へ報告し、
戻したばかりのドラム缶を再び反対側へと押して行き、
報告ののち再び元の場所へと戻していく。
本当に何の意味があるのだろう?
看守が言うには翌日は本日の2倍のノルマになるとのこと。
そろそろ自分の名前さえ忘れかけてくるころである。
翌日。
🛢----- 1
🛢----- 2
🛢----- 3
🛢----- 4
🛢----- 5
広場に置かれた5個のドラム缶。
これをすべて広場の反対側へと押していく。
それが終わったら看守へ報告し、
そのドラム缶を今度は再び元の場所へと戻す作業が待っていた。
戻し終わったら看守へ報告し、
戻したばかりのドラム缶を再び反対側へと押して行き、
報告ののち再び元の場所へと戻していく。
2往復したことを報告した一行は、
またまたこれをすべて広場の反対側へと押していく。
それが終わったら看守へ報告し、
そのドラム缶を今度は再び元の場所へと戻す作業が待っていた。
戻し終わったら看守へ報告し、
戻したばかりのドラム缶を再び反対側へと押して行き、
報告ののち再び元の場所へと戻していく。
もしかすると自分はドラム缶を押すために生まれてきたのかもしれない。
ここでの生活が板についた一行は、ドラム缶押しが終わると、
看守によって、厨房係へと任命された・・・
厨房では食器の整理を命令される。
しかし一行はこの刑務所から脱獄した男の噂を聞かされる。
独房からある日忽然と姿を消した事件があったこと。
そこでは怪しい金属音がしていたという。
食器の中に先割れスプーンを見つけた一行は、噂を辿ってそのスプーンを使い、掘れそうな地面を探り当てる。
首尾よく地下へと逃げ込んだのち、地下道を抜けて刑務所の外へと脱出したのであった・・・。
要約および実態
倍々式にドラムカンを無意味に押しながら往復することだけを数日間強要されるという、竜退治5作目の奴隷イベントも真っ青の強制労働シミュレーションイベント。
なにしろ意味のない強制労働とは、最も精神的にこたえる拷問である。
だが、イベントシーンで片付けるのではなく、プレイヤーが操作できる形で(操作を強要されるとも言う形で)実装してしまったことで、ドラム缶ならびにドラム缶押しの作業が、プレイヤーの脳髄へと嫌でも刻まれることになり、それまでは崩壊した世界において使いまわしのよい道具程度にしか思われていなかった「ドラム缶」というオブジェクトが、メタルマックスシリーズを象徴する道具の1つへと昇華された瞬間でもある。
ちなみにこのドラム缶押しを卒業したい人は、厨房において絶対に木箱を調べてはならないことを忠告しておこう。入口からは出られないが、メモリーセンターは利用できるため、セーブしておくのも手かもしれない。
厨房の置くにある食器棚から「さきわれスプーン」を発見することで、使われていない独房のタンスの真下にある地面を掘り進み、下水道から脱出できるようになっている。敵も出現するが、きゅうけつナマコやびんかんバニーといった弱い敵なので大丈夫だろう。なお、この下水道には死体が遺棄されている。リローデッドでは死体はないが、タンス等が投棄されており、別の意味でデスクルスの実態を垣間見ることができる。
しかし、この刑務所の真の恐ろしさは、頭防具を感電ベルト「エンジェルリング」に強制交換させられており、現時点では自分じゃ外せないという点。看守である監獄キーパーにまともに逆らうと、電撃リモコンによって強制的に「マヒ」状態にさせられ、全滅してしまうのである。イスラポルトの病院にいた男が感電していた理由でもあり、多くの強者がなぜこの刑務所から出られないかの答えでもあった。非常にレベルが高い場合や、スリープ・ボトルなどで状態異常に落として足止めすれば例外的に勝てるかもしれないが、正攻法ではひとまず看守は放っておくのが定石となる。
感電ベルトは守備力自体は無いに等しいため、脱獄するだけでは真に解決したとは言えない。今後のことを考えると、大元を断つ必要があるだろう。
対処法はきちんとある。リモコン一つで感電させられるのは送電施設というカラクリが存在するためであり、デスクルスの地下道から送電コンピュータへ辿り着いてこれをOFFにしてしまえば、監獄キーパーはもはや、偉そうに威張っているだけのタダの人。
しかし彼らがボスというわけではなく、本当のボスは刑務所中心部の見張り塔の頂上で待ち構えているスカンクスコピー。かつてのスカンクスと似ているが、ポチをつれてこられないうえに白兵戦を余儀なくされるため十分な戦力は必要になるだろう。
かくしてスカンクスコピーは撃破され、刑務所を牛耳るグラップラーの勢力が消えうせた次の瞬間、囚人たちはいつの間にかこの敷地を自分たちの町として使うようになっていた。この切り替えの早すぎる対応も一種の持ち味と言えよう。
グラップラーが牛耳っていた割には、人間狩りへ連れ出したという報告が噂一つ立っておらず、人間狩りに利用できそうな囚人の中には何故か10年もここで労働させられていた人までいたらしい。なぜ人間狩りに送られなかったのかという点など、最後の最後まで目的がよくわからない刑務所であった。(強制的に連れ込む事をしていない。監守がリモコン頼りで弱い事からここまで来れるような戦闘技術に長けた人間たちが過信から罠に嵌り囚人として力が弱いものに管理されながら暮らすことでの精神の変化を観測する施設だったと考える事はできる)
なお、町として解放されてからはエンジェルリングも外れるようになり、入口は戦車止めの杭が抜かれ、戦車に乗ったままで買い物などができるようになる。受付で装備品を返してもらうのを忘れずに。
アフターエピソード
町として解放されたデスクルスだが、広場へ向かうとそこにはドラム缶5連が変わらず設置されている。もちろん看守だった男はもはや命令するわけにもいかず、かといって解放された町へおめおめと入るわけにもいかないのか、看守だった頃の場所で立ち尽くしていた。
しかし彼が言うには目の前で自分にとって異様な光景が未だ繰り返されているらしい。
「別に、誰に命令されたわけでもねえのに、みんな時々ドラム缶を押しに来るのさ。
どうしてだ? 懐かしいのか?」
これまで人々をこれでもかとムシケラ呼ばわりしながら命令してきた男だが、さすがに自分の所業の深さはなんとなく自覚していたらしい。
この問いに「いいえ」と返答すればそれを窺わせる科白を見る事ができる。
「んなわきゃ ねえよな‥‥ 俺もこの仕事が長いから、そろそろヤキが回ってきたかな‥‥。」
それは、命令していた立ち位置にいながらも何もすることができず、狂気の光景を見せられる毎日であった。
しかし、このやりとりの見所は、この問いに「はい」と答えた場合にある。
「わかんねえな‥‥ 俺には。
‥‥押してもいいんだぜ! 懐かしいドラム缶をよ!」
やられたと思ったプレイヤーはどれぐらいいるのだろうか。
確かにもう何のかかわりをもつ必要もないドラム缶ではある。
しかし、押すという自由は確かにそこにある。
だが、途中でやめても、誰に咎められるわけでもない。
かつては無意味で過酷な往復だったが、終わってしまえばドラム缶が懐かしいと本気で思ったプレイヤーもいる。
あるいは、かつての真似事をしながらも途中で放棄して帰ることで、改めて自由を体感したプレイヤーもいる。
振り返ってみると、アズサの町ではドラム缶を押すことを寝言で言っている住民もおり、ある種の中毒になっている模様。
この町で強制労働を味わうことにより、自由って素晴らしいということを逆説的に気づかされるスポット、それがデスクルスなのかもしれない。
余談
この施設は刑務所的エピソードばかり取り上げられがちだが、実は西へ向けて壮絶な砲撃も行っている。モロポコから海岸伝いへ西へ進んで上陸し、北ゲート経由で近づくのが距離としては近いのだが、砲撃に晒されるばかりか、バリケードが張られていてデスクルスへの道が封鎖されている。
実際はモロポコからいったん南部の砂漠へ出て、南ゲート経由で回り道する必要があり、このルートだと砲撃にいっさい遭わない。
砲撃しているエリアにはバトー博士の研究所へとつながる砂漠地帯しかないのだが、なぜここまで躍起に砲撃態勢を敷いているのかは謎に包まれている。
ちなみにスカンクスコピーを倒してグラップラーの手から奪還すると、バリケードも砲撃態勢もまるで嘘みたいに全て撤去される。
ちなみにあのドラム缶押しだが、2018年4月の電ファミニコゲーマーでのインタビューによると開発中は当初、押すノルマが現在の2倍だったとのこと。一説によると、ドラム缶押しがもう1日用意されている予定だったとか。