概要
『ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めて』の登場人物の1人。
本名は「モーゼフ・デルカダール3世」であるが、PlayStation 4版のまめちしきで呈示されたり、公式資料等で記述される程度で、劇中はこちらの名前で呼ばれることはない。
デルカダールを治めるロトゼタシアで最も聡明にして、剣術の達人であり、王の素質全てを備えているとして希代の帝王として褒め讃えられる国王。
寛大な性格の持ち主だが、その一方で秩序を乱すものには厳しく接する厳格さも併せ持つ。
イシの村から「勇者とは何か、その使命とは何か」を知るために自身の元へと訪れた主人公に対して“悪魔の子”と言い放つ。それを切っ掛けに主人公はグレイグ、ホメロスをはじめとするデルガダール軍に追われることになるが、その真意は謎に包まれている。
実は、デルカダール王は16年前のユグノア王国襲撃事件の時に魔導士ウルノーガに取り憑かれてしまっていた。彼本来の人格はウルノーガに抑え込まれ、16年もの間休眠状態であった模様。
ウルノーガは16年前、まだ赤子だった主人公をユグノア城もろとも始末するつもりで襲撃をかけたが、主人公の実母・エレノアに連れられた彼を取り逃がしてしまった。そこでモンスターに探させるよりも同じ人間を利用したほうが後々やりやすいと踏んだのか、エレノアらの後を追ってきたデルカダール王に憑依する。
そして手始めにその場で目撃者である主人公の実父・アーウィンを騙し討ちのような形で刺殺。遅れてやってきたグレイグには嘘を吹き込み、デルカダール国に戻ると主人公を「悪魔の子」として巷に大々的に喧伝し始めるのだった。
作中で多くの悲劇の元凶となるウルノーガだがデルカダール王はその中でも彼による最大の被害者と言っても過言ではない。
主人公達の仲間の一人であるマルティナはデルカダール王の娘。盟友であったはずのデルカダール王の変心に不信感を抱いたロウが彼女の生存を隠していたことや「悪魔の子に殺された」というウルノーガの嘘もあって、ウルノーガを倒すまで再会は果たせなかった。
勇者は魔王と表裏一体と表したのはあくまでウルノーガであり、デルカダール王本人は勇者はロトゼタシアの救世主になると考えている。
そのため「16歳になったならばデルカダールに客人として預けてほしい」とアーウィンに言っていた(エレノアもそれを見込んで「16歳にはデルカダール王を頼れ」と遺言を残していた)。
世界崩壊後はグレイグと共に最後の砦に身を寄せている。
PlayStation 4版と『ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めてS』では変化が無いが、ニンテンドー3DS版では窶れ具合が更に深刻になっている。
ウルノーガの支配から逃れたためか、元の善良な王として砦の指揮を執っており、時には老骨に鞭打って自ら剣を取ることも厭わないなど、王としての威厳は損なわれていない(16年前のユグノア襲撃事件の際にも、鋼鉄の剣を手に奮戦していた)。
なにも守れなかった後悔から自分に鞭打つような戦いを続けていたグレイグを心配して、主人公に共闘を願ったり、マルティナを案ずる一面もあった。
なお、とても厳めしい顔立ちをしているが、取り憑いていたウルノーガが離れた後もそのままなので、この険しい面構えはもともとのようである。
ただし、配下の兵たちの中には「姫様(マルティナ)が亡くなられてから一層険しくなった」と証言する者もおり、ほぼ時を同じくしてウルノーガに憑依されたことを考えると、やはり表情にもウルノーガの影響が出ていたと言えよう(兵や民たちには「姫様を失ったショックでこうなった」と解釈されていたようだ)。
この他憑依された後の変化として、妻であった王妃の命日に花をあげなくなったことやホメロスを冷遇していたことも挙げられる。
過ぎ去りし時を求めたあとでは、主人公が未来から持ってきた魔王の剣によってホメロスを打倒、計画が狂ったウルノーガが自ら姿を現したことによって解放される。
ウルノーガ亡き後に現れた邪神ニズゼルファとの戦いに向かうマルティナを心配するが、彼女からの答えを聞き王妃の形見であった黄金のティアラを託した。
担当声優
- 菅生隆之:『ドラゴンクエストⅪ 過ぎ去りし時を求めてS』
同氏は、過去に『CDシアター ドラゴンクエストⅥ』にレイドック王の役で出演している。
余談
厳めしい面構えに似合わず結構な甘党であり、デルカダール城の彼の寝室の本棚には自筆のスイーツレビューが置かれている(しかも、やけに詳細に書かれている)。
また、過去には城内の隠し通路まで使ってケーキをつまみ食いしようとしたこともあるなど、甘いものに関しては本当に目が無いようだ。ホメロスは幼少時に彼が王妃に叱られていたのを目撃しており、恐らくつまみ食いの常習犯であったと思われる。
世界中の多くの人が「悪魔の子」の話を信じていた一方で、ドゥルダ郷や聖地ラムダも勇者に縁のある地として封鎖していたことが現地の人間にデルカダールへの警戒心と敵意を抱かせた上に、かつての「勇者ローシュ」と「勇者の星」の伝説と辻褄の合わない部分が見られたことから、クレイモランの王は疑念を抱いて悪魔の子の捜索には後に王位を継いだ娘のシャールと共に中立を貫き、サマディーの王も半信半疑であった様子があり、若干の警戒態勢を敷くだけで積極的に動いていなかった。
また、とあるクエストを依頼する吟遊詩人は「悪魔の子」の話を全く信じておらず、むしろ本来の勇者の伝説を信じて魔王による危機を救う希望と信じ、自分の希望とそれを込めた歌を勇者本人とは知らずに主人公に託していた。
勇者が災いを引き起こすのであるから、勇者を滅ぼせば良いという安直な考えを人々が鵜呑みにして、万が一にでも違っていればどうなるかを考えていなかったのは軽率としか言いようがない。しかし、人々が悪魔の子を信じていたのも名君である彼の思惑を図りきれなかったことや、特にデルカダールでは「妻に引き続いて娘を喪ったのを何かのせいにせずにはいられず、その矛先が勇者に向けられた」と解釈されても無理はなかったかもしれないので、悪魔の子の話を鵜呑みにした人々を只単純に非難するのも酷だろう。