三つの指輪は、空の下なるエルフの王に、
七つの指輪は、岩の館のドワーフの君に、
九つは、死すべき運命の人の子に、
一つは、暗き御座みくらの冥王のため、影横たわるモルドールの国に。
一つの指輪は、すべてを統べ、
一つの指輪は、すべてを見つけ、
一つの指輪は、すべてを捕らえて、
くらやみのなかにつなぎとめる。
影横たわるモルドールの国に。
概要
本作のラスボス冥王サウロンの最も忠実かつ最も強力な9人の配下。
主の命に従い、指輪を得るために方々を駆け回ったり、軍を率いて敵対する人間やエルフ、ドワーフなどを攻撃した。
元は人間だが、既に実体を持たないため、全身を黒装束で覆っており、素顔を窺うことはできない。
ただしサウロンにはその姿が見え、また指輪を嵌めた状態のフロドにも見えていたとおぼしき描写がある。
力の指輪
かつてサウロンは、一つの指輪を作り、またエルフの職人たちを利用して19個の力の指輪(リングズ・オブ・パワー。支配の指輪とも訳せる)を作らせた。この19個の指輪は、エルフ、ドワーフ、そして人間の王たちに与えられ、定命の者にあまる魔力を与える強力なものだった。
エルフに与えられた3つの指輪、ドワーフの7つの指輪には、持ち主を堕落させ、一つの指輪を持つサウロンの下僕にするだけの力はなかったものの、指輪の魔力で強大な力を手にしたために際限ない欲望の虜となった。
特にエルフの王たちは、一つの指輪を破壊すると自分たちの力も大きく衰えてしまうことを恐れたため、ある種の牽制役としての効果を発揮した。
(サウロンは、3つの指輪をエルフたちから奪おうとしたが失敗している。)
ただし人間に与えられた9つの指輪は、持ち主を堕落させ、次第にサウロンの僕となるよう作られていた。彼らは、強大な力を得たものの、そこから破滅的な運命を辿り、影の中(幽界)に引きずり込まれてしまったという。
ナズグルは、元は王や妖術師であったが現在は、完全にサウロンの僕と化しており、人としての心は失われてしまっている。
またサウロンに極めて忠実なため、指輪を見つけても自分のために使うという発想は持ち合わせていない。
屈強な戦闘力に加え、通常の武器では倒すことが出来ない。ただし火が苦手で他にアングマールの魔王以外は太陽の光と水も苦手としている。
闇夜の方が力を増し、モルドールに近づくほどに強くなるとされる。
また幽界を移動することができ、幽界に姿を隠したものを発見することができるのだが、この能力は同じく姿を隠すことができる一つの指輪を持っている者=フロドを探すのに役立った。
- 対ガンダルフでは、灰色のガンダルフには数の力で上回るが、白のガンダルフだとアングマールを含めても勝てない、オローリンだと言わずもがな、と考察されている。
- 水を苦手としていたのは、ヴァラールでもエルフと人間、強いては中つ国を最後まで見捨てないとされたウルモの力が水に込められていたからだとする考察もある。
- このほか、アングマールの魔王は「決して人間の男には殺せない」。だからこそ、止めを刺したのは「人間の男」でない二人組だった。
乗り物
彼らのまとう瘴気にも耐えられる闇の黒馬にも乗るが、さらに有名なのは「おそるべき獣」である。
おそるべき(おぞましき)獣(Fellbeast)
日本語訳の名称は、「おそるべき獣」、「おぞましい獣」あるいは「フェルビースト」とされる。
フェルビーストは、存在そのものが”恐怖”であり、”恐怖”を武器に生きる存在。
オークの腐肉を与えて育てられたというある意味かわいそうな生き物で質の悪い餌を食わされ続けたからなのか元からなのかは不明だが、こいつら自身もかなり臭い。
スマウグを皮切りに龍、特に翼をもつ大型の飛龍が軒並み絶滅した第三紀後期の中つ国で空を飛ぶ生物では最大。
(龍自体は、第四紀以降も生存していたとされる)
大きさは、明記されていないが体長21mぐらいになると思われる。原作でのグワイヒアは、体高6m、翼開長23mぐらいだとされているので原作の設定準拠なら、これよりも大きいことになる。
ライバルは鷲しか残っていない。
ただドラゴンも鷲もロードオブザリングの時代には、非常に弱体化した種族となっている。
(やがて現在の地球に繋がる設定であり、神々の影響が少なくなっていくので魔法族はいずれ全て消え去る定めにある)
誤解されやすいが、映画での甲高い声を上げてるのはこいつらではなくてナズグル本人たち。
これまた誤解されやすいが、こいつらはナズグルではなくて、あくまでも乗り手がナズグル。
最も誤解されやすいポイントとして、監督PJの実写映画版での描写の所為もあるが、彼らは竜ではない。もう一度言おう、彼らは竜ではない。
だから火も吐かない(ゲームでは、恐怖で敵を束縛するブレスは吐ける)。竜よりも古く発祥した種族だが、サウロンの軍勢に取り込まれてから映画のような悪の化け物としての面を強めたと思われる。
また原作では「怪鳥」とされており、ワイバーンというよりもプテラノドンのような翼竜やハゲタカのような身の毛もよだつような巨鳥という意味合いが強い。
教授も先史時代の翼竜をイメージしたと述べている。クチバシを持つことも明記されていて、呼び名もヘルホーク(”地獄の鷹”)やナズグル・バードなど、鳥を思わせる呼称である。
なぜワイバーンのような姿に映画でされたのかは不明だが、当時はスマウグなど正規の竜を映像化できるか不明であり、何らかの想いを込めたのでは?などと考察されることも。特にスマウグは、PJが映画監督を目指す原点にも近い作品の大キャラクターであり、腹を射抜かれた場所も近い。
ゲーム「シャドウ・オブ・ウォー」では、フェルビーストの別名であった”ヘルホーク”の名を冠した、似ているがより小型の生物が登場する(参照)。その代わり、ドレイクというウルローキ (火龍)とフェルビーストのハイブリッドが登場する。
構成員
メンバーは以下の9人。
アングマールの魔王(Witch-king of Angmar)
ナズグルの首領。元々はヌーメノール人の王。魔王の名に違わぬ力を持ち、メンバー中で唯一、外見が他と異なる。小さな傷ひとつで敵の命を奪う「モルグルの刃」と、強力な魔法が主な武器。映画では白のガンダルフを圧倒してみせたように思えるが、実際はガンダルフ達イスタリが壮縛りプレイを課せられているだけであり、何の制約もないガンダルフの足元にも及ばない(原作のファンには、映画での魔王>ガンダルフともとれるような描写を嫌う人もいる)。また、指輪戦争時にはサウロンからのパワー増強もあったらしく、モルドールに近づくほど強化されたらしい。
東夷のハムール(Khamûl)
別名「東方の影」。序列は2位。元からサウロンの影響が強い人間の国「東夷」の王だった。ナズグルは魔王以外の外見の区別がつかないが、その魔王を除けばリーダー的存在。物語序盤、ホビットの庄に現れ、フロド・バギンズ一行を襲撃した。その後も軍を率いて登場している。ICE設定によれば、西方最強国のヌーメノールに対抗する東方最強の帝国ウォマワス=ドラスの皇帝だった。
原作者がはっきりさせているのはこの2人のみで、残りの7人は派生作品によってのみ差別化されている。そのため作品によって設定が異なる。
Games Workshop版
影の君主(The Shadow Lord)
かつては小国の王だった。体の周りに闇をまとう能力を有する。
けがれ(The Tainted)
高貴な生まれだったが内面は堕落しており、他のナズグルと違って自らサウロンに身を差し出した。腐敗をまきちらし、近づくだけで生命を害する。
死なざるもの(The Undying)
最年長の幽鬼。冥王の魔力に最も強く抵抗した。
黒の総大将(The Dark Marshal)
ヌーメノールの裏切り者の1人。恐怖で軍を支配する強力な指揮官。なお、『指輪物語』でアングマールの魔王の称号として出てくる「黒の総大将」はBlack Captainである。
裏切りしもの(The Betrayer)
南方諸国の出身で、同族を裏切りサウロンの配下となったが、後悔と自己嫌悪で正気を失ってしまった。その経緯のため冥王からの信頼は薄く、副官中での地位は最下位。毒を扱う。
ウンバールの騎士(The Knight of Umbar)
ヌーメノールの裏切り者の1人。南方の国々を支配していたといわれるが、詳細は不明。鎧に身を固め、相手の能力を模写する特殊な戦法を使う。
ドゥイメルライク(Dwimmerlaik)
ローハンの言葉で「さまよえる霊」を意味する。もっとも謎に包まれたナズグールであり、長年ローハンの地で恐れられてきた存在とされる。武器は両手持ちの大剣。
Iron Crown Enterprises版
ドワル(Dwar)
別名「犬の王」。モルドールの狼たちを操る。元は漁師の息子で、侵略により殺された父の仇を討つべく呪術を学んでいた。復讐を果たして故郷の島を取り戻した後も、満たされない憎しみと支配欲のままに東岸の国々を荒らし回った末に、王にのし上がった。第3位。
インドゥア(Indur)
別名「ムーマクの主」もしくは「夜明けの死」。元々は中つ国最南端の商業国家コロナンデの貴族。国の利権を守るため、ヌーメノールの植民地拡大に対抗しようと共和制を廃し王座に就こうとしたが失敗、サウロンに通じた隣国ムーマカンに亡命し、半神の王を名乗っていた。第4位。
アコーラヒル(Akhorahil)
通称「嵐の王」。ヌメノール王家の縁戚にして植民地太守の息子。気性の激しい性格で、若い頃より放蕩の限りを尽くし、さらなる力を得ようと、自分の両目をくり貫いて「みなもとの目」と呼ばれる義眼を押し込んだ。第5位。
ホアルムーラス(Hoarmurath)
通称「氷の王」もしくは「ディアのホアルムーラス」。極北の地ウルドの女系部族の出身。残虐で野心が強く、族長である姉妹を殺害してその座を奪い、全部族を支配した。第6位。
アドゥナフェル(Adûnaphel)
通称「静錬のアドゥナフェル」。ナズグルの紅一点。人間の定命とエルフを憎んでいたため、そこをサウロンに付け入られた。貴族の出身で、かつては伝説的な美貌を誇っていた。第7位。
レン(Ren)
通称「不浄のレン」。自称「炎の王」。元は東方にある平原の王国チェイの王族で妖術師。温厚な性格だったが疫病によって正気を失い、暴君として君臨していた。第8位。
ウーヴァタ(Uvatha)
別名「騎乗者」。9人の中でも最も恐怖を体現していた人物。モルドールの南に住む人間ロリアグの首長の息子。後継者争いに破れて追放されるものの、ライバル部族に取り入って出世し、ハンド全土を統一した。騎兵の扱いに長ける優れた指揮官だが、極めて残酷な性格。第9位。