中つ国の竜
なかつくにのりゅう
※トップ画像には誤りもあるので注意 (例:ゴンドリンの獣は翼を持たないし、この時代にはそもそも翼を持つ竜は生まれていない)。
J・R・R・トールキンの作品世界『中つ国』に見られた竜 (ドラゴン)である。つまりは、我々の世界に存在していたということにもなる。
太陽の第一紀末、(二つの木の時代の「力の戦い」や来るべき最終決戦「ダゴール・ダゴラス」を除けば)中つ国史上最大の超大戦と言われる「怒りの戦い」にて2頭を残して全て滅ぼされた。そして、ごくわずかが生き延びて再び数を増やしたとされる。『ホビット』や『指輪物語』の時代に怪物や化け物が少ないのはこの戦いの影響でもある。
第二紀にも所々で台頭はあった可能性が指摘されているが、次の歴史の大きな転換点となったのは第三紀のスマウグの討伐であった。この時代、竜族の根城はヒースのかれ野であり、スマウグもそこの出身とされる。
誤解されやすいが、スマウグは「最後の竜」ではなくて「最後の大竜」・「最後の大火竜」・「力の指輪を溶かせるほどの古い火を体内に持つ最後の個体」(ガンダルフ談)である。実は第三紀末期にはまだ北方にたくさんの竜が存在していたとされ、スマウグによるエレボールの襲撃も「この時代にはありふれた悲劇」とされている。火竜自体も指輪戦争の直前にもガンダルフが確認しており、竜自体は第四紀以降も存在した。つまり竜またはその子孫は今でもいるかもしれない、ということである。
トールキン教授は竜が好きであったとされ、彼の作品にはさまざまな竜が登場する。また、古来伝承のさまざまな竜やドラゴンからの着想も見られる。
初期稿では、生物としての竜ではなく、竜型の攻城兵器が登場した。イラストの一部には、生物でもあるが人工兵器でもある竜が描かれている。
竜の起源は現在でも不明。
初代冥王モルゴスの最高の被造物とされているが、モルゴスもサウロンも最高神エル・イルーヴァタールの『神秘の火』には到達できなかった、つまり無から有を生み出すことはできず、模倣しかできないとされたため、竜も何かの模倣または何かを強制的に捻じ曲げた存在だと推測されることもある。モルゴスが造り上げたのは確かだが、その起源が不明ということである。
以下は、推測されたことのある起源のリストである。
- ヤヴァンナの被造物をモルゴスが模倣したり捻じ曲げたり、生物としてのアイディアや物質化する前の状態を模倣したり盗んだ存在である(つまり、本来なら生態系の一員だったり、大鷲などのようにヴァラールの遣いになる予定だった)。つまり、オロメが狩りの対象としていた可能性もある。また、フェルビーストもこの時期にモルゴスによって穢されていたのかもしれない。
- 大鷲の模倣または捻じ曲げた存在である。
- バルログのような、形を変えたマイアである(大鷲などにもこの説が挙げられることも)。
- たとえばウンゴリアントがそうしたように、爬虫類型の悪魔や魔神、マイアや悪の精霊、または「名前無き者たち」が中つ国の生物と交配した子孫である。
- 恐竜やティタノボア、サルコスクスなどの大型の爬虫類を模倣したり捻じ曲げた存在である。
- ナズグルの乗騎「フェルビースト」も、竜より古い生物とされている。
これらのことから、後述の冷血竜などは、「竜になる前の竜」に近いのでは?と推測されることもある。また、推測によっては、竜の一部はアルダ(地球)の創成期またはそれ以前から存在したことになる。
いわずもがな、最強の種族の一つである。一頭で一つの国を楽々と陥落させてしまう。
怪力、強固な鱗の鎧、爪と牙、などの他、火炎のブレス、水蒸気や霧(ブレスとしての霧であり、魔法として使った霧とは別)、火柱の様になる、発光する、魔法、呪いなども使った。グラウルングに関しては、その巧みな知恵と策略も、ある意味では強力な武器であった。
モルゴスの最終兵器としてアンカラゴンと飛竜の軍勢が登場した際 (トールキンの描写通りに取れば100頭ほど)、「雷や焔の嵐」を伴ったと表現されており、スパーク竜という種類も存在したとされることから、雷撃や電撃を操った種類がいた…のかは不明。だが、ヴァリノールの軍勢を劣勢に追い込むほどの戦闘力を持っていた。その後、空飛ぶ船ヴィンギロトに乗ったエアレンディルとソロンドール率いる鳥達が飛来して丸1日の攻防を経て竜の殆どが滅ぼされた。
- どのように飛竜軍が倒されたのかは不明だが、ヴィンギロトは(トールキン自身が神々と称した)ヴァラールの加護を受けており、エアレンディルはおそらくシルマリルを所持しており(シルマリルは最大最強の狼魔カルハロスの肉を焼き滅ぼす魔力を持つ)、エアレンディルの輝く盾にはルーン語が彫られあらゆる攻撃を防ぎ、竜の骨でできた弓と「黒い矢」(スマウグを屠った黒い矢と同じなのかは不明)を持ち、(トールキンの描写通りに取れば)神獣に等しい大鷲が一万体程もいたことは判明している。大鷲達とエアレンディルと武器も加護を受けた可能性もある。
寿命は存在しないとされるが、外傷によって殺される。グラウルングはおそらく344歳にて死んだ。
弱点としては、腹部が弱い事が挙げられる。著名な竜の多くが、待ち伏せや狙い撃ちによって腹部を攻撃されて倒されている。だが、逆に言えばそれぐらいしか明確な弱点もないということである。スマウグは、この点を恐れたのか宝石のチョッキで防護していた(バルドとつぐみの前には通じなかったが)。
火竜は、湖などの大きな水源に落ちると火が消えてしまうと言っているが、実際に致命的となるのかは不明。大量の水に弱い理由も、単純に体内が冷やされて火が消えたり、または火を燃やすための体内構造には冷温がキツいのか、なども考えられる。
または「水にはウルモの力が宿っている」のではないかという推測もある(ナズグルが水を避ける理由の一つと推測されることも)が、これだと水に潜む邪悪な存在の証明ができない。
二次創作限定だが、冷血竜は蒸気のブレスを、水竜は「ウォーターボルト」を吐くとされる。
また、人間やドワーフなどが竜の黄金に手を出したりすると、「竜の黄金病」という呪いのような精神病のようなものに取りつかれ、無残な最期を迎えることがある。
強力だが、成長に著しい時間(最低でも数百年)を要するため、いささか兵力としての汎用性に欠ける。それでも、成長すれば司令塔としても動くことができ、軍団を組めばヴァラールやマイアール、ヴァリノールの軍勢をも押し退けるなど、モルゴスの切り札と言っても過言ではない力を持っていた。が、おそらくモルゴスは竜や闇の軍勢を産み出す度に疲弊し力を失っていったのも事実である。
とくに初期の竜は、モルゴスが操縦するツールとして機能していた可能性があるが、実情は不明。また、モルゴスの虚空への追放後は、後代の竜たちは第一紀の祖先たちよりは悪に縛られていないという意見もある。
大鷲は天敵であるが、これはガルーダ鳥と竜の関係にも似ていると言えるのかもしれない。
ドワーフとは(主に黄金絡みで)ことさら因縁が深い。たとえば、トーリン・オーケンシールドとその先祖は嫌というほど竜との確執があり、ドワーフの七つの力の指輪のうち四つは竜の炎で破壊された。
黄金に執着する理由や不老不死かどうかは現在でも決着がついていない。
バルログとの力の上下関係は不明であり、バルログ側に投票する人もいれば、竜側に投票する人もいる。
バルログ側の意見としては、
- 「竜の腹は弱い」
- 「限られた数しかいなかったバルログに対して竜は数がいた」
- 「マイアールであるバルログと竜では格が違う」
- 「マイアールなので一応は不死」
などがある。
竜側の意見としては、
- 「腹が弱いといっても、竜殺しに使われた武器は魔剣や「黒い矢」などの特別な業物などであり、エルフやドワーフの特別製の武器だからこそ竜にも通じた」
- 「バルログが飛べたかどうかは今でも不明」
- 「力の指輪を溶かせる竜の焔の方が、ガンダルフが(完全ではないが)免疫があるバルログの焔よりも強力である」
- 「竜の方が遥かに巨大である」
- 「(素人判断という前提で)竜の方が破壊規模が上に思える」
- 「竜もマイアールの可能性があり、繁殖する事以外はそれが最も理に適った説である」
- 「巨狼の事例を見ても考えられるが、モルゴス自身が身血を注いで創造したのなら、マイアールを上回る可能性がある」
- 「ダゴール・ブラゴルラハではグラウルングが戦の先頭だった」、「「怒りの戦い」でヴァリノールの軍勢を押し退け、モルゴスの切り札だったのは竜である」
- 「いくら初期のバルログは設定が確立されていなかったとは言え、泉のエクセリオンをはじめとする上のエルフにボッコボコにされていた事実はどう説明するのか」
などがある。
「冷血竜がなぜ火を吐く能力を失ったか?」という疑問に関しては、
- 「モルゴスの力が世に及ばなくなったから」
- 「アイヌアやエルフや大鷲などの注意を引かないため」
- 「モルゴスのような悪からの離脱」
- 「生態系への回帰のため」
- 「多大なエネルギーを消費するため、もはや必要ないコスパの悪い能力を切り捨てたから(生物学的にも理に適っている)」
- 「そもそも火が吐けなくても強い」
などの推測がなされてきた。
スカサやスマウグのように、倒した竜の宝物を巡って光と闇どころか自由の民同士でも争いを引き起こすこともある。ある意味でお家騒動や遺産問題みたいなものだろうか?
『失われた物語』では、竜の心臓を食べた者は毒の血にも耐え、神の言葉すら含むあらゆる生物の言葉を聞き分け、モルゴスの囁きを聞くこともできると人々が噂している。
論理的に考えると、『不死の国』があるため、現在の地球よりも広大なアルダ (地球)である。そこには様々な怪物や化け物、魑魅魍魎の類が存在したとされる。竜に関してもいくつか種類かいた。火を吐くウルローキとそうでない冷血竜に大別される。他のブレスや能力を持つものがいたのかは不明。
- 地這い竜
- 長虫/ワーム:四つ足であり、(存在すればだが)ワニ型や四足獣に近い体形やより蛇に近い体形もおそらく含まれる。ロングワームもこれに当てはまるのかは不明。けっこうカラフルで、銀・金・赤・黒などのカラーリングがあった。霧や炎のブレスを吐いたという。実写映画で「化けミミズ」として登場したが、本来は竜の類である存在たちも、ここに分類される可能性がある。
- 蛇型
- 翼を持つ竜
- 中つ国の竜は、どちらかというと「翼のある蛇」に近く、教授の絵もめちゃくちゃ細長いタイプが見られる。
- 映画『ホビット』シリーズのスマウグは、厳密に言えばワイバーン型である。
- その他
いわゆる眷属の類だが、実際に中つ国に存在したのかどうかで議論を起こしやすい種類もいる。
※1
- 「ワー」とは、ワーウルフの「ワー」と同じもの(中つ国の場合、「狼人もいた」とされているものの、ワーウルフとは巨狼を指す言葉として使われることが多い)。
- ホビットの伝承にあった、砂漠に棲む蛇や竜の類という解釈をされてきたが、映画『ホビット』では、『DUNE、砂の惑星』シリーズのサンドウォームやPJのキングコングに登場した巨大ミミズのような見た目の「化けミミズ」として登場した。
- 小説『ホビット』の初期稿では、ビルボが「ゴビの大砂漠(ゴビ砂漠)に行って中国のワームと戦う」と発言していた。後の稿では「東の最後の砂漠」としている。このため、モンゴリアンデスワームとの関連性を見出す人もいる。
- 二次創作に出てくるワイアームもいるが、ワイアームもきちんとした語源が存在する。
※2
- 「グロー」とは「発光する」という意味。
- 「夢の道(Olórë Mallë)」にいるとされる存在だが、竜や蛇としてのワームなのか、グローワーム(土ボタルの幼虫など、発光する芋虫や蛆虫のような見た目を持つ生物の総称)の類なのかは不明とされている。
他には「鉄竜」、「石竜」などの言及もある。
『MERP』などの二次創作では、より多くの個体や種類、能力などが追加されている。ゲームでは、「竜王」ドロゴス、利害関係から自由の民との共存を選んだウルゴスト、どちらかと言えば中立的で場合によっては闇の軍勢をも攻撃するフェルビーストとのハイブリッドのドレイクなどがいる。
- 黄金竜グラウルング(「祖竜」、「全ての竜の父」、「アングバンドの長虫」、「大長虫」など。とてつもなく強力な竜であり、例え最強でなくても最も魔術に長けていたとされる。アングバンドの外で確認されたという意味では最初だが、最初の「竜」かどうかは厳密には不明であり、どのように生まれたのかも不明。モルゴスは、パランティーアのごとく、グラウルングの内面から物事を見ていたともされる描写がある。己が死の間際にもどこか飄々としていると捉えられるのかもしれない描写など、重厚なキャラクター性を持つ。初陣の際は、若さ故の過ちかエルフ達にフルボッコにされたが。忌まわしき呪いをかけた相手は、最終決戦「ダゴール・ダゴラス」にてモルゴスに止めを刺すと予言されている英雄トゥーリンとその妹。)
- 黒竜アンカラゴン(「突進する顎」。最大最強の飛竜であり、飛竜の祖とされることも。この竜を倒したのはエルロンド卿の父で星の光を残し、モルゴスの監視役として星になったエアレンディルである。)
- 赤竜/黄金竜スマウグ(「第三紀最大の脅威」)
- 長虫スカサ(「敵」、「泥棒」、「害を為す者」。当時の灰色山脈に巣食っていた長虫では最大の個体であったし、スマウグよりも940年程度も昔に倒された事から、成長しつづければスマウグ以上の存在になったのかもしれない。この個体が第一紀の生き残りなのか第二紀以降に産まれたのかは不明だが、スマウグが第三紀最大の個体とされているので、スマウグの後に産まれた可能性もある。所有していた宝はスマウグ同様に様々な争いを引き起こした。メリーが指輪戦争で吹いたローハンの角笛は、この竜の所有物であった。)
- 大冷血竜(トーリンの先祖たちを襲って当時の王や王族をも殺害し、灰色山脈の王国を奪った。この事がきっかけで、トーリンの一族達ははなれ山へと移住してきた。)
- ゴンドリンの獣 (ゴンドリンの陥落時に参戦していた個体。泉のエクセリオンやトゥオルは潰されかけたが、トゥオルに足を刺された痛みで暴れ、敵味方問わず数多くの命を奪った。バルログの大将ゴズモグを背中に載せていたのかは不明。)
- Gostir(バジリスクのような能力を持っていたと名前から推測されることもある)
- Lhamthanc(名前のみが知られる個体、名前は「ジグザグの舌」を意味する)
- 『トム・ボンバディルの冒険』にて言及された、赤い眼、黒い翼、ナイフのような牙を持つ個体
- スランドゥイルの顔を焼いた北方の大竜 (映画『ホビット』シリーズで言及されたが、おそらくウルローキということ以外の詳細は不明。原作の世界に存在する個体なのかどうかも不明であり、既知の個体の誰かなのかも不明)。
とくに初期稿においてだが、『仔犬のローヴァーの冒険』は場合によっては中つ国と繋がっているので、一概に無関係とは言えない。
(以下は主にテレビゲーム関連に出てくる個体や亜種のほんの一部で、たとえば『MERP』由来の個体や種類は含んでいない。)
- 竜王ドロゴス①
- ウルゴスト(映画のスタッフが作り出したゲームに登場し、利害関係から自由の民と不戦の協定を結んだ)①
- ドレイク(サウロンによって生み出された、火竜とフェルビーストのハイブリッド。無生殖性で小型だが強力。自らよりも大きなものを持ち上げることもできる。通常の炎や火球のほかに蒼緑の炎を吐くことも。サウロンに創られたが、善悪のどちらにも完全に属さず、自由の民も闇の軍勢のどちらも敵に回すことも(というか、オークを狙ってか要塞を襲うこともある)。腐肉食がもっぱらだが、新鮮な肉を食べることもある。オークなどはふつうに餌にされる。一番の好物は、モルドールに迷い込んでくる大鷲らしいが。魔術を使わずには手なずけることはほとんど不可能とされるほど抵抗力があり知能も優れる。冥王の軍勢に捕らえられ、檻兼火炎放射機に閉じ込められ、火種として利用されることもあるが、そこから解き放たれれば直ちに周りのオークなどを攻撃する。主人公の術にかければ、強力な乗騎となる。)①②
- カーナン・ドレイク (森の精霊カーナンの力によって具現化した存在であり、クチバシなどが特徴的である。他のカーナンの化身同様、鎧を纏っている。酸性?の焔や火球、氷のブレスと冷気球を吐く。)
- ドレイク (「ロード・オブ・ザ・リング オンライン」では、純粋な竜の小型の亜種として登場する。)
※特にアンカラゴンの大きさについて議論が発生しやすいので参考程度に留めていただきたい。だが、原語版の表現を見ると、アンカラゴンの墜落でサンゴロドリムの三つの頂だけでなく、サンゴロドリム全体が崩落したとも取れる描写がなされている。また、この戦争で大陸サイズの陸地が丸ごと破壊されるレベルなので、画像のサイズもそこまで荒唐無稽ではないのかもしれない。