概要
形式番号AS-1。全高8.6m。基本装備時重量11.0t。
日本初の純国産「第三世代型AS」を目指して、防衛省技術研究本部とEHI(恵比寿重工)などが共同開発した試作AS。劇中初期では青色の1号機と赤色の2号機が投入された。
本機のアピールと性能試験のために、日本側からD.O.M.S.(ダーナ・オシー・ミリタリー・サービス)へ武器輸出三原則の制限から(固定武装を持たないので)「重機」という理屈で引き渡された。そのため、電子兵装は動作上の最低限でECSの類も一切装備されていない(5巻で不可視モード機能を除いたECSが搭載された)。
既存の第三世代ASと比較すると最高自走速度、最大跳躍高、最大稼働時間などで劣っており、装甲防御力は第二世代ASの96式改にも及ばない。一方で動力源のパラジウムリアクターの出力はミスリル仕様のM9ガーンズバックよりも高く、フレームが強靭なのでペイロードにも余裕がある。
一見するとチグハグに見えるが、そもそも兵器全般に言える事だが十年以上の稼働を見込んでいるので、その間の技術的発展や運用思想の変化を取り込む必要があり、そのための余地の確保と後述のアジャイル・スラスタが関係している。
本機の開発には13年前のある拾い物が関与しており、中枢制御機器を除いた白いM9を解析することで得られた技術(具体的に言えばコックピット周辺にTAROS)が反映されている。
TAROSの運用方法は元になった白いM9の母艦に近い。
アーバレストが忍者のイメージだったのに対し、サムライをイメージしてデザインされた。
アジャイル・スラスタ
本機の両肩及び腰部に装備されるアークジェット推進システム。
大電力をかけてプラズマ化させた推進剤を噴射するもので、機体の急加速や方向転換に用いられる。これによって脚部の跳躍力に頼った従来の3次元起動を超越し、通常のASとは全く異なるイレギュラーな運動性能が発揮できる。
(例:跳躍時の最高到達点で機体の位置をずらす、着地点をずらす、正面から仕掛ける際に加速し敵機の間合いに不意打ち気味に急接近する等)
本来なら科学エンジンと比べて低い推力しか得られないが、世界最高水準の大容量コンデンサ、耐熱素材、独自のノズル形状により、短時間とはいえASという重量物の推進に使えるレベルを実現した。
おまけに製造コストはそれほど高くはないらしい。
一方でデメリットも多く、消費電力の大きさから連続使用だと数十秒しか持たず、隠密性を重んじるASにおいてプラズマ化した推進剤は非常に目立ち、既存の運用思想からかけ離れた機動を行う為に一般的なASに慣れたベテランほど習熟し辛い。
しかし、開発陣は「どうせブーストを使う時は発見されたあと」、「機動時の軌跡が綺麗なのできっと納税者受けはいいはずだ」、「総合火力演習や隊員募集PVで使えば絶対ウケる」等の強引すぎる理屈で押し切った。(決して的外れな事を言っているわけではなく、専守防衛が前提の自衛隊が運用する事を前例とした場合は「そもそも攻め込む側に回らないから隠密任務を考える必要が薄い」「同じく先制攻撃をしないのだから敵地で無補給行軍もしない」「拠点防衛なら連続稼働時間が多少短くても補給をするので問題ない」と運用思想的にはきちんと筋は通っている)
改修機・派生機
高い出力と強靭なフレームによるペイロードの余裕から、日本独自の魔改造が施されている。
1号機改「ブレイズ・レイヴン」
クインコム要塞での戦いで大破した1号機を改修した機体。
改修のコンセプトは「アジャイル・スラスタによる高速機動戦闘能力の向上」であり、機動性を重点に置いた出力バランスの変更により改修前の肩を含め腰部にもスラスタが増設されている。これにより単純な推力強化に留まらず、ブースト中の射撃や格闘戦における安定性の向上も図られている。
しかし、更なる消費電力によって唯でさえ短い活動時間は65時間に縮まり、レーバテインの次に短くなっている。
2号機改「ブラスト・レイヴン」
2号機からアジャイル・スラスタを取り除き、代わりに大量の重火器を装備させた火力支援型のバリエーション機。アデリーナ・アレクサンドロヴナ・ケレンスカヤが引き続き搭乗している。
元々スラスタ抜きだと機動性が優れていない機体なだけに他の第三世代ASの機動性と比べると見劣りするが、AS-1の高出力と強靭なフレームによってM9A1E1ガーンズバック・アーセナル並の大火力を実現している。
この形態は換装によるものなので、近接格闘戦などの状況によっては武装をパージして本来の機動力を取り戻す事が可能。
3号機「ファントム・レイヴン」
AS-1のペイロードを指揮管制能力及び電子戦能力に割り当てたバリエーション機。
愛機のヴォルフを失ったユースフ・ビン・ムハンマド・ビン・カリーム・ケートリーが搭乗した。
背部に三基の展開式レドームを備え、AIサポートとデータリンク機能により大隊規模のAS部隊を管制可能となっている。レドームから発する指向性レーダー波を一点に収束させ、対象の電子兵装・機器を狂わせる事も可能。
腰に小型のアジャイル・スラスタ装備し、不可視モードのECSも搭載されているので、機動性や隠密性も高い。
4号機「イージス・レイヴン」
AS-1のペイロードを全て防御力に割り当てたバリエーション機。
新生D.O.M.S.の捕虜になった三条菊乃がクララと溝呂木から任されることになる。
ASサイズのアクティブ防御システムと追加装甲により、盾の名に相応しい防御性能を発揮する。
背中のコンテナに様々な兵装を収納でき、両腰のスカート状装甲内部に装備された2本の副腕を用いることで自在に兵装を切り替えることが可能。この副腕は単なる補助システムではなく、そのまま腕としても使用できる。
頑強なフレームと高出力ジェネレータのバランスから来る操縦感覚は、劇中でも前の搭乗機Rk-02セプターに近いと語られている。
5号機「ミラージュ・レイブン」
外見こそ1号機改と同仕様であるが、日本に残っていた機体に完全版のECSとTAROSも搭載した完成型のAS-1で、上記の試作機全ての戦闘データを反映した改修を施した結果、他の試作レイブンはおろか米軍の最新鋭装備のM9シグマエリートを凌駕している。
不可視型ECSによる機体隠蔽用レーザー・ホログラムをアジャイル・スラスタの急加速でその場に置き去りにする工程を短時間に繰り返すことによって、敵機センサーに対し瞬間的に自機を複数機と誤認させ攪乱する戦法を取ることが可能。
欠点として、ワンオフとして組み上げられた結果、量産には到底向かないほどコストが膨れ上がった(制式採用を示唆した調達関係者が試算を見た途端に本機の採用について一切言及しなくなるレベル)他、アジャイル・スラスタと不可視型ECSという電力をバカ喰いする兵装を二つも持つ以上搭乗者はかなり繊細かつ複雑なエネルギー管理を強いられる上にそもそもTAROSを使いこせる人間でもない限りフルスペックを発揮できない、(上記の戦法も相まって)幻の機体というレベルになっている事くらいであろうか……
機体カラーは白、最終回で登場し日本に襲来したカエサル・ベスティアを迎撃する際に、ミハイロフとの戦闘で大破した一号機の代わりとして達也が富士教導隊の新型機のテストオペレーターという名目で使用した。
11式(ヒトヒト式)
後日談において、上記を含む試作機を踏襲したうえでTAROSによる思考制御からテイマーシステムとよく似た物理的操作でアジャル・スラスターを操作する方式に変更された、ブレイズレイブンの量産型、操作系統からのTAROSの除外で達也が1号機や1号機改で見せたようなトリッキーな機動は不可能となったが上手く使いこなせば他のASを超えるだけの運動性能を発揮可能な高性能機型。劇中では改修前の一号機の状態で登場しオリーブドラブ塗装の機体が複数機で演習している。
11式改(ARX-10d)「アズール・レイヴン」
2024年に始まる新シリーズ「フルメタル・パニック!Family」にて登場する機体。11式とM9の部品を組み合わせたハイブリッド機で宗介が恵比寿重工やDOMSなど方々の協力を得て北米で制作された。相良家の所有する「自家用AS」であり、普段は自宅付近のコンテナトレーラに保管されている。
外見こそは1号機改、5号機と同じでありながらアーバレストと同じカラーリングで、ARXに連なる形式番号を隠し番号として有する。
アナザーからさらに約10年経っていることや一部M9のパーツの流用などで、完全不可視ECSの実装や売りのアジャイルスラスタの高出力化でヘリコプター並みの空中機動が可能になるなどそのスペックは凄まじいものとなっている。
以上のように単体でも充分強力であるが、その真価は地球上のいずれかに秘匿されているAI「アル」とリンクし支援を受けられる環境下で発揮される。その稼働条件は1G bps以上の通信速度が出せる環境下のみとかなり制約されるううえ膨大なデータトラフィックからアルの秘匿場所を逆探知される危険があるため多用は出来ないもののリンクシステム発動下ではラムダドライバの使用も可能であり、総合性能では並ぶもののない最強機体となっている。ARXシリーズの前型であるレーバテインとの比較でもリアクター出力ではほぼ匹敵し、フレーム強度ではラムダドライバー無しでデモリッションガンの反動に耐える等々上回っている部分も多く前述の強力な機動性能とも相まって既に第三世代の水準を大きく超えていることから原作者側でも第四世代を新設定し本機をそちらに入れることも検討されていたが後に
本機を代表する有人高性能機を新設のドミナント.スレイブというカテゴリーに分類することが発表された。(第4世代にはM11のような小型無人量産機が充てられた。)
なお、メインパイロットは相良宗介だが、原作者によると上記のようにほぼ無敵と言える機体で乗っていれば危険はないため宗介が溺愛している娘の安全確保を兼ねて 夏美を搭乗させている機会が多くなりそうとしていたが、アジャイルスラスター搭載機には新兵の方が相性が良いという特性もあって夏美が性能を充分以上に引き出しより強力な戦士として活躍しだしたため 夏美が戦士として成長していくのを望まない宗介は夏美のアズールへの搭乗を禁止にすべきでは?と思い悩むようになっている。
武装
- 東芝10式単分子カッター
日本刀型の単分子カッター。刀身はM9等の機種で用いられるものよりも細長い。
ブレイズ・レイヴン独自の装備ではなく、他の機種も装備可能。
- EHI「ドラゴンフライ」近接戦闘システム
十文字槍型の単分子カッターとアジャイル・スラスタ、兵装マウントで構成される近接戦闘用装備。
モチーフは天下三名槍の一つに数えられる『蜻蛉切』。
- ツーソン・インスツルメント M57 57mmハンドガン
中折れ式のリボルバーであり、装弾数は僅か4発。
しかし、相良宗介が愛用した《ボクサー》57mm散弾砲と同口径ということもあり、予備兵装としては破格の威力を持つ。
- JSWおよびEHI「ゴルゴン」155mm破砕砲
ブラスト・レイヴンの右腰にマウントされる大口径の榴弾砲。
レーバテインのデモリッションガンを製造したセワード・アーセナル社に対し、恵比寿重工がパテント料を支払って独自に改良したモデル。
有効射程は制限されているものの、銃剣を備えることで近接戦闘においてもある程度の対処が可能
- アライアント・テックシステムズ「ブッシュマスター3」35mm機関砲
ブラスト・レイヴンの左腰にマウントされるチェーンガン。マニピュレーターで保持するためのグリップが備えられている。
- EHI「リンドブルム」兵装システム
ブラスト・レイヴンの両肩側面に装備される武装コンテナ。
AS用アサルトライフルを内蔵する他、面制圧用にロケットランチャーを搭載する。