「質量を持った残像だというのか!?」
質量を持った解説
『機動戦士ガンダムF91』の主役機「F91」が起こした「現象」。
F91のMCA(Multiple Construction Armor)の副産物であるMEPE(金属剥離効果=Metal Peel-off effect )を端的に表現した言葉である。
発生のメカニズム
F91は装甲材に電子機器を埋め込み、それその物が電子機器・装甲・構造材として振る舞う「MCA構造」という多機能装甲技術を採用している。このMCAとF90から継承されたヤシマ重工のマイクロハニカム技術が合わさった結果、飛躍的な軽量化と高性能化が実現した。
さらにサイコミュ、バイオセンサー、MCA自体に含有されるサイコフレームにより、並の技量のパイロットでは扱えない機体となってしまった。
そこでF91には性能を抑制するリミッターが設けられ、それらを統括する為に次世代サイコミュデバイスの雛形となる「バイオコンピュータ」が搭載された。このバイオコンピュータがバイオセンサーと連動し、リミッター解除の判定を行う。そして最大稼働にパイロットが耐えられると判断した場合リミッターが解除され、最大稼働状態へと移行する。
最大稼動状態に移行すると肩部冷却フィンが展開し、必要に応じ頭部フェイスガードが開き冷却触媒を排出する。
それでも機体冷却が追いつかない場合、高熱を帯びた装甲表面を剥離させる「MEPE」(金属剥離効果=Metal Peel-off effect )という現象が発生し、装甲そのもので強制冷却を開始する。
この時、機体各部の微細な塗装や装甲が剥がれ落ちることによって、これらMSの形状に残留した熱を伴う金属微粒子を敵機のセンサーがMSとして誤認してしまい、まるでF91が分身を発生させているかのように見える。
当時のMSの全天モニターシステムは、カメラやレーダーなどから得た情報を元に、敵MSのCG映像を表示するという形態をとっていた。これによりMS型の風船(ダミーバルーン)や、MSの残骸を正規五体満足のMSとして表示してしまう事故が多々あった。これらの事からMEPEは絶大な効果を発揮し、残像どころかはっきりと分身しているように見える。
F91と相対した鉄仮面のセリフ「質量を持った残像だというのか!?」という台詞からこのように呼ばれる。この時、機体は金色のオーラを纏い、残像を発生させる表現がなされた。
戦闘での有用性
鉄仮面の搭乗していたラフレシアはガラスキャノピー式であり、鉄仮面自体は直接F91との戦闘を見ているにもかかわらず、ラフレシアのモニターはF91の残す「残像のような物」に対してセンサーが「MSである」と認識する様を目の当たりにしたことで「ただの残像がセンサーには反応する=質量を持った残像」と考えたようである。
結果、ラフレシアは「残像」をテンタクラーロッドで追いかけようとした結果自らコックピットブロックを撃ち抜いてしまい自滅するという形で敗北する事となった(この時、F91がフェイスガードを展開して現れた口部分からビームが出てるように見える有名なシーンがあるが、これは排出された冷却触媒が高熱を帯びてビームのように見えただけで、F91の口部分にビーム砲がある訳ではない)。
以前よりセンサー誤認を狙ったダミーバルーンと呼ばれる撹乱装置が開発されており、「質量を持った残像」現象も場合によってはダミーバルーンよりはっきりとMSの形に反応を示すために高い撹乱効果が期待できる。
実際、ザビーネが受信したラフレシアの戦闘記録には数十機のMSと戦闘を行ったとする旨の情報が伝えられている。
『シルエットフォーミュラ91』第2章の主役機「クラスターガンダム」もMEPEの残像を発生させている。この機体は当時最速と言われた高性能機であった。
『機動戦士クロスボーン・ガンダム』に登場する改良された量産型F91は、冷却システムの改良が進みMEPEなしでも最大の力を発揮できるようになっているため、残像は発生しない。
しかし、それに続く『機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人』ではチューンナップされたミッチェルの量産型F91がそれに近い現象を起こしており、ディキトゥスに一撃を与えることに成功している。
上述の通り量産型では改良されているが「有益な機能なのに改良しちゃうの?」と疑問に思うかもしれない。
ただ、MEPEが発生するということは機体の発熱が限界を迎えている危険な状態である上、装甲が剥離しているということは装甲の強度も多少落ちている筈である。
残像を誤認してしまう仕組みの都合上味方も誤認してしまう可能性があることを考えると改良されてやむなしと言える。
質量を持ったネタ
M.E.P.E.、そして質量を持った残像は、ざっくり言うと塗装を少しずつ剥がして発生させる現象であるため、映画公開当時(1991年)主にSDガンダムを取り扱っていた少年雑誌『コミックボンボン』では、「残像を使いすぎて、塗装が全部剥げた!」という四コマ漫画が何度か掲載された(少年誌なので「何度もやるな」とは言わないであげて欲しい)。
『スーパーロボット大戦』シリーズにおいては機体能力「分身」として攻撃を回避する能力として再現されている(効果自体は「分身」と同様である場合がほとんど)。『COMPACT2』以降は一連の攻撃を必殺技としても実装しているケースが増えてきているが、ウェイブライダー突撃と違って技名がまちまち。『COMPACT2』『COMPACT for WSC』では「分身ビームバズーカ」だったが、『IMPACT』『第2次α』では「MEPE攻撃」となり、『X』では「リミッター解除」となっている。
当然ながら、これによってF91は、「分身」の能力を持つゴッドガンダムやガンダムデスサイズヘルの先駆けとして、MS系初の「分身」実装機体の栄誉に預かっている。
現在では転じて、ガンダム以外でも「高速で移動し、残像が生じている様子」「写真などがぶれてあたかも残像のように見える様子」などを「質量を持った残像」と呼称することがある。
例えばそれは、
高速移動であったり阿修羅閃空であったり乳揺れであったりする。
質量を持ったオマージュ
ガンダム作品内外を問わず「残像」をオマージュ・リスペクトしたと思われる作品・設定は多い。
例えば『機動戦士ガンダムSEEDDESTINY』のデスティニーガンダムのミラージュコロイドで発生する残像はモロに「残像」であり、リスペクト説が濃厚とされている。
ただしこちらは演出の側面も強く、無意味にはなっていないが、戦闘面で恩恵を受けている印象は薄い。
しかし、続編にて凄まじい活躍を見せた。
また、『機動戦士ガンダム00』のTRANS-AMも劇中では「赤いオーラを纏い、機動時に分身が追随する」という描写がなされるために、古参のガノタは宇宙空間を疾駆するF91の姿を思い浮かべたとか浮かべなかったとか。
そして『ガンダムビルドファイターズ』22話では、ついに質量をもった残像VSTRANS-AMの夢の対戦カードが実現した。
質量を持った関連タグ
クラスターガンダム:U.C.0123時点では最速のFシリーズとも言われる。こちらもMEPEの残像を発生させた事がある。
TRANS-AM:ネタとしての使われ方が似ている。
光の翼:V2ガンダムにおけるミノフスキードライブの副次効果。ある種の欠陥が想定外の効果を示した点が共通する。
質量のある残像:表記ゆれ