「マンクット (Mangkhut) 」は、台風のアジア名(国際名)の1つで、順番は26である。命名国はタイで、タイ語で「マンゴスチン(มังคุด)」を意味する。
「マンクット」と命名された過去の台風としては、2013年の台風10号および2018年の台風22号の2つがあるが、この記事では主に、より勢力が強く甚大な被害をもたらした2018年の台風22号を中心に解説する。
2018年の台風22号
2018年の台風22号(マンクット)は、同年9月7日にマーシャル諸島で発生した。台風は日本のはるか南の太平洋上を西に進みながら発達を続け、最盛期には中心気圧905hPa・最大風速55m/sという猛烈な勢力になった。9月15日、台風は大型で猛烈な勢力のままフィリピンのルソン島に上陸。その後16日に中国広東省に再上陸し、17日に華南で熱帯低気圧に変わった。
この台風の特徴の1つとして、最盛期が極めて長かったことが挙げられる。11日に最盛期を迎えてから15日にルソン島に上陸する直前までの間、一貫して勢力は衰えておらず、中心気圧が905hPaであった期間は3日間以上、猛烈な勢力であった期間は約90時間にそれぞれ及んだ。
この台風は、フィリピンや中国、香港などに甚大な被害をもたらし、台風による犠牲者数は合計で134人に達した(うち最も被害が大きかったフィリピンでの死者数は127人)。そのため、「マンクット」という台風名は、この台風をもって引退した(後述)。
名前の引退
台風の国際名には「引退」という慣例がある。台風の国際名は原則として繰り返し使用されるものであるが、顕著な災害をもたらした台風などについては、以後は同じ名前を使用しないように別の名前に変更されることがあり、これを「引退」という。大災害をもたらした台風は将来も言及されることが予想されるため、別の台風が同じ名前を付けられてしまうことによって混同が生じることを避けなければならないからである。
例えば、2013年にフィリピンに甚大な被害を出した台風30号の名前「ハイエン」は、2013年をもって引退し、「バイルー」に置き換えられた。2018年の台風22号も、フィリピンや中国、香港などに甚大な被害をもたらしたためアジア名が引退し、「クラトーン」に変更された。ちなみに、2019年に日本に大きな被害を出した台風15号と19号のアジア名「ファクサイ」「ハギビス」も、引退することが決まっている。