概要
台風は、日本では「台風10号」「台風15号」などと番号(台風番号)で呼ばれることが多いが、すべての台風には実は国際的な名前がある。
太平洋戦争後しばらくの間は、アメリカ軍が台風に女性名をつけていたため、日本でも台風番号ではなく女性名が使われることが多かった(カスリーン台風やジェーン台風など)。台風に限らず、熱帯低気圧には女性名が付けられることが多い(台風以外ではハリケーン・カトリーナなどが有名)のだが、これは、台風等の航空機観測を行なっていた海軍や空軍の担当者が、自分の妻や恋人等と同じ名前をつけて遊んでいたためであるといわれている。しかし、女性名だけでは男女同権に反するという理由から、1979年からは男性名と女性名が交互に使われるようになった。
ちなみにアメリカなどでは、カトリーナのような女性名ハリケーンの方が、男性名ハリケーンよりも被害が大きくなる傾向にあるという調査結果がある(過去に大被害を出したハリケーンのほとんどは女性名であった)。これは、女性名の方が男性名よりも可愛らしい(穏やかな)響きのため、人々の防災意識を低下させてしまうことによるものと考えられている。
アジア名
1999年まではアメリカ合衆国が英語名をつけていた台風であるが、2000年からは、台風と関係があるアジアの国など(台風委員会メンバー)が提案した「アジア名」が使用されている。全部で140個あるアジア名のうち日本からは、台風と同様に自然の事物である「星座」に由来する名前10個が提案されている。メイン画像は、日本が提案したアジア名のひとつである「ウサギ」を擬人化したものであり、この名前は「うさぎ座」に由来している。
アジア名のリスト
- ダムレイ
- ロンワン → ハイクイ
- キロギー
- カイタク → インニョン
- テンビン → コイヌ
- ボラヴェン
- チャンチー → サンバ
- ジェラワット
- イーウィニャ
- ビリス → マリクシ
- ケーミー
- プラピルーン
- マリア
- サオマイ → ソンティン
- ボーファ → アンピル
- ウーコン
- ソナムー → ジョンダリ
- サンサン
- ヤギ
- シャンセン → リーピ
- バビンカ
- ルンビア → プラサン
- ソーリック
- シマロン
- チェービー
- ドリアン → マンクット → クラトーン
- ウトア → バリジャット
- チャーミー
- コンレイ
- イートゥー → インシン
- トラジー
- マンニィ
- ウサギ
- パブーク
- ウーティップ
- セーパット
- フィートウ → ムーン
- ダナス
- ナーリー
- ウィパー
- フランシスコ
- レキマー → コメイ
- クローサ
- ハイエン → バイルー
- ポードル
- レンレン
- カジキ
- ファクサイ → ノンファ
- ヴァーメイ → ペイパー
- ターファー
- ミートク
- ハギビス → ラガサ
- ノグリー
- ラマスーン → ブアローイ
- ツァターン → マットゥモ
- ハーロン
- ナクリー
- フンシェン
- カルマエギ
- フォンウォン
- カンムリ → コト
- ファンフォン → ノケーン
- ヴォンフォン → ペンニャ
- ルーサー → ヌーリ
- シンラコウ
- ハグピート
- チャンミー
- メーカラー
- ヒーゴス
- バービー
- メイサーク
- ハイシェン
- ポンソナ → ノウル
- ヤンヤン → ドルフィン
- クジラ
- チャンホン
- リンファ → ペイロー
- ナンカー
- ソウデロア → ソウデル
- インブードー → モラヴェ → ナーラ
- コーニー → ケナリ
- モーラコット → アッサニー
- アータウ
- ヴァムコー → バンラン
- クロヴァン
- ドゥージェン
- マエミー → ムジゲ → スリゲ
- チョーイワン
- コップ → コグマ
- ケッツァーナ → チャンパー
- パーマァ → インファ
- メーロー → チャンパカ
- ニパルタック
- ルピート
- スーダエ → ミリネ
- ニーダ
- オーマイス
- コンソン
- チャンスー
- ディアンムー
- ミンドゥル
- テンテン → ライオンロック
- コンパス
- ナムセーウン
- マーロウ
- ムーランティ → ニヤトー
- ラナニム → ファナピ → ライ
- マラカス
- メーギー
- チャバ
- アイレー
- ソングダー
- サリカー → トローセス
- ハイマー → ムーラン
- メアリー
- マーゴン
- トカゲ
- ノックテン → ヒンナムノー
- ムイファー
- マールボック
- ナンマドル
- タラス
- ノルー
- クラー
- ロウキー
- ソンカー
- ネサット
- ハイタン
- ナルガエ
- バンヤン
- ワシ → ハト → ヤマネコ
- マッツァ → パカー
- サンヴー
- マーワー
- グチョル
- タリム
- ナービー → トクスリ
- カーヌン
- ヴェセンティ → ラン
- サオラー
名前の引退
台風の国際名には「引退」という慣例がある。台風の国際名は原則として繰り返し使用されるものであるが、顕著な災害をもたらした台風などについては、以後の台風に同じ名前を使用しないように別の名前に変更されることがあり、これが「引退」である。大災害をもたらした台風は将来にわたって言及されることが予想されるため、別の台風が同じ名前を付けられてしまうことによって混同が生じることを避けなければならないからである(スポーツでいう「永久欠番」のようなものであるといえよう)。
例えば、2013年にフィリピンに甚大な被害をもたらした台風30号のアジア名「ハイエン」は、その後「バイルー」という名前に置き換えられた。また、2019年に日本に大きな被害を出した台風15号と19号のアジア名「ファクサイ」「ハギビス」も引退し、それぞれ「ノンファ」「ラガサ」という名前に変更された。