概要
ニパルタック(Nepartak)は、2000年に台風委員会により制定された台風のアジア名(国際名)の1つである。順番は93。命名国はミクロネシアで、コスラエ島の有名な戦士の名前に由来する。より正確な発音に近い表記は「ネパルタク」であるが、気象庁は「ニパルタック」と表記している。この名前が付けられた過去の台風の中で、驚きの記録や珍しい記録を残したのが、2016年の台風1号と2021年の台風8号である(詳細は後述)。
歴代のニパルタック
2003年の台風20号
2003年11月に発生した台風。はじめて「ニパルタック」と命名された台風。
2009年の台風19号
2009年10月に発生した台風。勢力はあまり強くなかった。
2016年の台風1号
2016年7月に発生した猛烈な台風。台湾や中国などに大きな被害をもたらした。この台風は、台風としての記録を複数残した。
まずは発生日時の遅さである。この台風は、発生日時が7月3日であり、統計がある1951年以降では、「台風1号」の発生日時が過去2番目の遅さとなった。「台風1号」とはその名の通りその年の1番目(最初)に発生した台風の名称であるが、その発生月は様々で、1月に発生する事もあれば、7月にまで遅れた例もある。統計史上最も早い日時に発生した台風1号は2019年の1号(1月1日に発生)、最も遅い日時に発生した1号は1998年の1号(7月9日に発生)である。2016年は1998年に次いで史上2番目に遅かったのである。また、7月以降に台風1号が発生したのは、2016年と1998年以外では1973年のみである。
実は、この台風が発生した際、もう一つの大記録が目前にまで迫っていた。それは「台風空白期間」の最長記録である。エルニーニョ現象の終息により、2015年12月に発生した台風27号が消滅してから半年以上もの間は、北西太平洋上に台風が全く存在せず、その空白期間の長さは199日間と統計史上最長タイ記録となった。あと少しで従来の最長記録を更新するタイミングであったのだが、この台風が7月3日に発生したことで4,776時間(199日)という史上1位タイ記録で途切れた。
そして、勢力も記録的であった。この台風は、「台風1号」でありながら、史上初めて猛烈な勢力(中心気圧900hPa)にまで発達し、「台風1号」としては観測史上最強となった。
2021年の台風8号
2021年7月に発生した台風。7月23日に南鳥島近海で発生。7月28日に宮城県石巻市付近に上陸した。
宮城県に台風が上陸したのは統計史上初であった。しかも、東北地方の太平洋側に上陸した台風は、この台風以外では、岩手県大船渡市付近に上陸した2016年の台風10号(東北地方の太平洋側に上陸した史上初の台風)しかない。そのくらい、このような台風の進路は珍しいものなのである。
ちなみに、この台風は東京オリンピックにも影響を与えた。