永久欠番
えいきゅうけつばん
野球やサッカー、バスケットボールなど、背番号を使う競技において輝かしい実績を挙げた選手を讃えるため、その選手の引退後、その番号を他の選手に使わせないようにする措置の事である。
野球における初めて永久欠番はニューヨーク・ヤンキースに在籍したルー・ゲーリッグの「4」で、これはルー・ゲーリック病とも言われる筋萎縮性側索硬化症で引退を余儀なくされたゲーリックのために、彼が漬けていた背番号を空き番号としたものが起源で、1939年に制定されている。ヤンキースではかつての名選手が一桁台の背番号をつけていたケースが多く、一桁台の番号が全て永久欠番となっている。
日本のプロ野球では1947年に制定された巨人の黒沢俊夫がつけていた「4」と、沢村栄治が付けていた「14」が最初とされている。なお、黒沢は腸チフスで亡くなっており、彼の背番号である「4」が死を連想させ不吉であるため永久欠番となったという俗説があるが確かではない。
讃える意味とは別に、「死に」「死人」を連想させる「42」は日本人がほとんどつけない番号であるが、日本にくる外国人は好んで使う番号である。これは「42」が黒人初のメジャーリーガー、ジャッキー・ロビンソンを讃えてMLBの全球団が永久欠番に制定した番号であり、メジャーではつけられないためである。ロビンソンは全球団で欠番だが、複数の球団で永久欠番に指定された人物は他にノーラン・ライアン(カリフォルニア・エンゼルス、ヒューストン・アストロズ、テキサス・レンジャーズの3球団)やグレッグ・マダックス(シカゴ・カブスとアトランタ・ブレーブスの2球団)などがいる。逆に複数の人物名義で永久欠番となっている番号もあり、ヤンキースの「42」はジャッキー・ロビンソンとマリアーノ・リベラ(MLB史上最後の背番号42を着けた選手)の名前で欠番となっている(※)。
※これは、「42」が永久欠番として制定された時点ですでに「42」を付けていた選手やコーチらは引退するまで「42」をつけることを例外的に認められたためである。
また、「13」は「13=悪魔(サタン)」との連想から特にキリスト教徒はこれを嫌うことが少なくない。(映画「13日の金曜日」などで知られているため、日本人でもつけたがらない者は多い)。
なお、サッカードイツ代表では、伝説的ストライカーのゲルト・ミュラーが着用していたことから、13番が一種のエースナンバーとしての扱いを受けている。
サッカー・Jリーグの横浜F・マリノスはかつて在籍した松田直樹(当時・松本山雅FC)が練習中急死したことにより、同選手がつけていた背番号「3」を永久欠番としている。
アメリカンフットボールNFLのデンバー・ブロンコスはペイトン・マニングとの契約に際して、既にフランク・トリプカの名義で永久欠番になっていた「18」(P.マニングがインディアナポリス・コルツ時代に使用していた)を解禁して用意し、マニングの引退を以てトリプカとマニングの2人の名前で永久欠番とした。アメリカに於いては後発の人物が永久欠番となっている番号を“借りる”ケースは少なくないが、後発の選手も永久欠番に名を連ねたのは希少なケースである。
また、永久欠番を作らないと云う方針を掲げている球団も存在しており、中でもラスベガス・レイダースは「過去の人物を番号で讃えない」としている。
アイスホッケーでは1934年にトロント・メイプルリーフスがエース・ベイリーの背番号「6」を永久欠番に指定したことを北米プロスポーツ界初の永久欠番としている。
NHLはリーグ全体でウェイン・グレツキーが選手時代に使用した「99」を永久欠番にしている(2000年2月6日、NHLオールスター開催に合わせて発表された)。
ベガス・ゴールデンナイツは、2017年に起きたメスキート(球団の本拠地パラダイスと同じクラーク郡に属する)の銃撃事件での犠牲者を追悼する意味を込めて、その人数「58」を永久欠番としている。
バンクーバー・カナックスでは、双子の兄弟ダニエル・セディンの背番号「22」とヘンリク・セディンの背番号「33」が揃って永久欠番となっている。
バスケットボールのNBAでは、ビル・ラッセルが2022年7月31日に死去したことに伴って、彼が選手時代に使用していた背番号「6」をリーグ全体の永久欠番にしている。
ロサンゼルス・レイカーズはコービー・ブライアント名義で「8」と「24」の2つの番号を永久欠番としている。1つのチームが1人の人物の名義で複数の番号を欠番とするのはアメリカ史上初である。
ボストン・セルティックスのジム・ロスカトフは自身が使用していた背番号「18」を後続の選手が使えるようにと願い欠番化を拒否した為にニックネームの「LOSCY」で永久欠番扱いされている。なおセルティックスの背番号18はその後1981年からデイヴ・コーウェンズの名義で永久欠番となっている。
日本では2023年現在、Bリーグのチームで15名が永久欠番に指定されている。
アメリカでは選手のみならず、球団に永く関わった人物をも永久欠番扱いとすることがある。チーム専属アナウンサーであれば数字の代わりにマイクロフォンのアイコンを掲げたり(ニューヨーク・メッツのラルフ・カイナーやロサンゼルス・ドジャースのヴィン・スカリーなど)、球団の経営・運営に携わった人物をその苗字やイニシャルで顕彰するケースもある(コロラド・ロッキーズの初代球団社長ケリー・マクレガー「KSM」など)。
日本語では“永久”としているが、オーナーの交替や球団名の変更、球団そのものの解散・消滅を理由にして失効することもある。(MLBのモントリオール・エクスポズ、NHLのケベック・ノルディックス、NPBの大阪近鉄バファローズなど)。
永久欠番は元々ニューヨーク・ヤンキースでルー・ゲーリッグが引退後もチームに入られる配慮として生まれ、それから多く名選手や早世した選手を称えるために欠番になっている。
また、若手選手に歴史のある番号を安易に付けるとプレッシャーになるため、それを避けるという側面も存在する。
ドカベンなど、現実のプロ野球とリンクさせて、架空選手を活躍させる場合、扱いが困るのが、架空の登場キャラに何番の背番号を与えるか、という問題が生じる。
巨人の星の星飛雄馬は川上哲治の背番号「16」(新・巨人の星では長嶋茂雄の背番号「3」)、侍ジャイアンツの番場蛮は前述黒沢の背番号「4」を使っている。
これは現実の選手が使ってる背番号は使えない、かと言って現実に空いてる背番号が連載中に使われるようになったら、変更しなくてはならない、という理由から永久欠番の背番号を使ったものとされる。
ドカベンでは現実では存在しない「01」「02」などを使用(一時、阪神で02を使っていたが、現在は規定で使えない)。スーパ-スターズ編以降は現実の球団に遠慮がなくなったため、これらの架空球団に所属する選手の番号は普通の番号となっている。
野球狂の詩では東京メッツが架空の球団であることもあって野呂尋久須の背番号「03」以外は実在する球団と同様の普通の背番号をつけているが、阪神タイガースに入団したとされる王島大介は背番号「10」、沢村慶司郎は背番号「11」と実在する同球団の永久欠番をつけた設定となっている。
一方で、同じ水島作品のあぶさんにおいてホークス(南海・ダイエー・ソフトバンク)に所属していた景浦安武は背番号90で、こちらは現実のホークスでも同漫画の連載中は欠番となっていたが、これは「現実の球団があぶさんの功績を讃える意味で欠番にした」のであり、南海時代から20年以上続く伝統となっていた。あぶさんの連載が終了した後、2016年に使用が解禁された。
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