概要
1969年9月に実施された奈良線・橿原線・京都線の架線電圧昇圧工事により、従来保線工事などに使用していた電動貨車のモト50・60・70形が使用できなくなった。
しかし昇圧後も電動貨車が必要な場面は多く、それらに代わる車両として後にモト75形となるモト51形が製造された。
モト51形は架線電圧昇圧に伴って廃車となったモ430形の電装品・台車・車籍を流用し、機器類を直流1500Vに対応させる改造を施した上で新造車体と組み合わせた。
編成を組む際は奇数番号の車両と偶数番号の車両でペアを組んでいた。
運用
新造当初はレール運搬などに用いられ、1971年に形式をモト75形へ改番。モ430から流用した機器類の老朽化により、70年代中盤頃に台車とモーターを初代600系の廃車部品であるKS-33LとMB-213AFに交換した。
更に1985年には廃車となったモ1470形の機器を流用し、台車をKD-36へ、モーターをWNドライブ対応のMB-3028-A2に交換した。
モト75・76は名古屋線に転出後の1991年に廃車。残った77・78は西大寺検車区配置のレール運搬車となった。
1998年に東大阪線の7000系を東生駒車庫から五位堂検修車庫へ回送する際の牽引車として使用していた2代目モワ11形が廃車となったことに伴い、モト77・78を改造してこれの代替に充てる事とした。
主な改造内容は以下の通り
- 台枠の強化による積載荷重引き上げと荷台側面あおり戸の撤去
- 制御装置を2400系の廃車部品である多段電動カム軸式のABFM-21-15MDHへ交換。これにより、従来の1C8Mから1C4Mとなる。
- 両側運転台への改造とモト78へのPT-42パンタグラフ新設
- ブレーキシステムを自動空気ブレーキからHSC-D発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキへ交換
- 台車をシュリーレン式KD-60へ交換
- 7000系と連結する側の連結器を大阪市交通局形密着連結器へ交換し、先頭に出る側の連結器は電気連結器付密着連結器へ交換。識別用に大阪市交通局形密着連結器を装備する妻面は水色の帯を追加。
7000系の回送時はモト77と78の間に7000系3両を挟み込み、牽引力確保のため荷台に死重を搭載する。
奈良電気鉄道の「デハボ」由来の車籍を有する(現存唯一)が、上記の改造を繰返した結果、原形を全く留めていないどころか全とっかえ状態であり、電動貨車版テセウスの船ともいえる。