概要
アメリカ海軍が制式採用したストレートカム式ボルトアクションライフル。
ジェームズ・パリス・リーがデザインしウィンチェスターが生産した事からウィンチェスター・リーとも呼ばれる。
米西戦争とその後の米比戦争、そして義和団の乱を戦い抜いた。
採用当時、アメリカ海軍ではクラッグ・ヨルゲンセンのライセンス生産で満足していたアメリカ陸軍に比べて踏ん切りがつかず、自国製の最新式フォーマットのライフルを欲していた。
必要な弾薬は紆余曲折の会議の結果、6mmのセミリムレス弾にすることになり、ライフル自体は海軍試験委員会を招集してコンペを行うことになった。
そしてそのコンペを勝ち抜き選ばれたのがこのジェームズ・パリス・リーのライフルだった。
その時のコンペの要項は海軍側で用意した6mm新型弾薬とライフル銃身を使い、チャンバー圧力が60,000 psi(410 MPa)の5つの過圧カートリッジの発射に耐える事構造になっている事だった。
海軍の報告書にてこのライフルは「頑丈で、単純で、部品が少なく、操作者に十分な経験や適性がなくても非常に素早く操作できる」との太鼓判を貰い、晴れて生産が行われることになる。
しかし、製造上の問題による遅延と海軍による契約変更のため最初の契約が遅延し、更に弾の構造が変更になるということでテスト射撃の必要に迫られるトラブルが発生。
1万丁が調達されるはずが、1,800丁しか届かず、当時の士官たちは黒色火薬からの乗り換えで大幅な使用感の違いが起きる懸念から訓練が可能な数になるまで使用を拒否。
はてはニューヨークの海軍兵廠で火災が発生し2,500丁が失われるという不幸に見舞われる。
二回目の調達計画ではなんとか届いたが、ここに来て撃針ロックとボルトロックアクチュエーターの破損のしやすさと装弾システムが給弾不良しやすいとの問題点が浮上した。
弾薬の方も技術不足からロットごとに濃度が異なり、これによって銃本体に悪影響を及ぼした。
結果として兵士からの信用を得れず、スプリングフィールドM1903が開発されたのを期にその弾薬と共に一線を退き、1920年代まで訓練用の装備として存在した後に完全に退役した。
仕様
全長 | 1213mm |
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銃身長 | 710mm |
重量 | 3.770g |
弾薬 | .6mm×60 USN弾 (6mm×60mm) |
装弾数 | 5発(エンブロッククリップ、箱型マガジン) |
構造としてはストレートプルの派生型であるストレートカムという斜め後ろにボルトを引く独特なアクションを採用しており、更に銃口付近を意図的に重めにすることで動作を補助することで引きやすく高い連射性能を有していた。テストでは3秒間に5発、2分間に71発を撃てる事が確認されている。
給弾方法もオーストリアのマンリッヒャー式を参考にしたエンブロック・チャージャー装填式弾倉という珍しい形式を導入していた。余談だが、この給弾方法に対してエンブロッククリップの開発者マンリッヒャー氏は特許を侵害で訴訟したが敗訴した経緯がある。