概要
薩摩に広く伝わっている、大石兵六という若侍が活躍する『大石兵六物語』を原典として、江戸時代に毛利正直が執筆した戯曲『大石兵六夢物語』に登場する妖怪の一体。
人を驚かせたり化かして髪を剃ってしまうという化け狐を退治しようと、大石兵六という人物が吉野の原に向かったところ、予想だにしなかった様々な姿の化け物（茨城童子の幽霊、重富一眼坊、抜け首/ろくろ首、闇間小坊主、ぬっぺっ坊、牛わく丸、山辺赤蟹、山姥等）が次々と現れたので、あまりの恐ろしさに逃げだすこととなった。
兵六は葛掛原の二軒茶屋で一息つくも、そうは問屋が卸さずに茶屋女が抜け首・ろくろ首であったことに怯えて泣きわめきながら苙の元まで逃げてくると、持留山の木陰から飛び出してきたのは一尺（直径約30㎝）もある目玉が三つもある化け猿「三つ眼の旧猿坊」であった。
「三つ眼の旧猿坊」は、立身して「猿阿弥」に名を改めたこと、美術工芸全般の目利きや様々な習い事が得意であることなど、長々と自身がいかに優れているかの自慢話を始め、さらに兵六についての悪態をつきながら、長い腕で襟首をつかむと引き寄せてきた。
その恐ろしさに、兵六は神仏に祈りながら逃げ惑うしかなかったのである。
なおこの戯曲は当時の時事ネタなどの風刺や古典のパロディが多く含まれており、この妖怪の長々とした自慢話は、当時知られていた実在の人物を揶揄したものであるといわれる。
また原典の『大石兵六物語』には、似た姿の三目猴猿という妖怪が登場している。
