概要
ろくろ首の中で、首と胴体が分離して頭部だけが自由に飛び回る事が出来るタイプ(或いは種族?)の名称。絵になるためか女性の姿で描かれることが多いが、男性の抜け首も存在し、一族をなしていると言う伝承が多い。
一説にはろくろ首の原型とされており、彼方がただ人を脅かすだけであるのに対し、こちらは夜中に人間を襲ってその血を吸ったり、食い殺したりする恐ろしい妖怪である。
普段は全く普通の人間と変わりなく見えるが、人の寝静まった夜半に首が胴から抜け、獲物(人を襲って食い殺したり、血を飲むという話もある)を探して飛び回る。
首が離れている間は体は動くことができず、無防備な状態にある。首はやがて戻り、元通り体に収まって休むのだが、夜明けまでに戻れなかった場合は体とのつながりを失って死ぬ。そこで、ぬけ首を退治するには首が抜け出るのを待ち、体を隠してしまうことが最も有効な手段となる。
当然、首は体を探して必死に飛び回り、状況が絶望的だとわかれば隠したものに恨みを抱いて襲い掛かってくる。もしこのような処置を行う場合は、夜明けまで見つからないような場所に隠れておく必要があるだろう。
小泉八雲の「ろくろ首」に登場するのは、この恐ろしい人食いの「抜け首」である。昼間は普通の人間と変わらず、「元は身分の高い一家だったが、失態から都落ちして山へ入り、今はきこりとして暮らしている」と偽り、宿を求めた旅人を襲っては餌食にしていた。
この物語では、夜中に体を抜け出し、森の中で一家5人の首が飛び回って虫を食べながら、僧侶を食い殺す相談をしているところを、当の僧侶に目撃され、体を隠されて退治される。
その際、一体が悔し紛れに衣のすそに噛み付いたまま絶命したため、僧侶は殺人の疑いをかけられてしまう。しかし、首のうなじにろくろ首の証とされる赤い文字があったこと、首に斬ったあとがなく、その端がなめらかであったことから疑いが晴れる。
吉野山の奥地にあるとされる“轆轤首村”の住人はみなこのタイプのろくろ首であり、首の周りにある印を隠す為、子供のころから首巻を身に付けているともいう。
抜け首の正体として、妖怪ではなく、首が体を抜け出す特異体質を持つ、唐人の一族が渡ってきたものという伝承もある。
その他、魂が夜中に体から抜け出して夜の街を徘徊する離魂病が原因とも言われ、特に下総国にはこの病にかかっている者たちが多かったらしい。
ゲゲゲの鬼太郎に登場する「ぬけ首」
CV/矢田耕司(3期)、川津泰彦(6期)、青木和代(異聞妖怪奇譚)
初出は原作及びアニメ第3期「高熱妖怪ぬけ首」。ちなみにこちらでは“抜け”ではなく、平仮名表記で“ぬけ”が正しい表記となっている
強面の丸顔の頭と炎の髪の毛に出っ歯と丸い目、そしてトンガリ帽子がトレードマークで頭と胴体を自由に分離させる能力を持つ。また、分離後の頭の口から炎を吐き出す事が出来るようだ。
なお、分離後の頭は数千度という超高温を放射し、一方で胴体は超低温の冷気を出してその熱を抑える冷却装置の役割も持つ。そのため一定時間以上首が胴体から離れていると際限なく熱が上がって膨張して行き、最終的には辺りを吹き飛ばす程の大爆発と共に自爆してしまう。故に長時間首だけでの活動には制限がある。
性格は粗暴、かつ高い自尊心の持ち主で、気に食わないことがあると有り余る力で見境なく周囲に当たり散らし、劇中ではもっぱらトラブルメーカーとして活躍(?)する。
ただし非常に単純で、妙に素直な一面や気の良い所もあり、何となく憎めないキャラでもあったりする。
・原作、アニメ3期
妖怪ブームが到来しているのにもかかわらず、誰も自分を知らない事に立腹して暴れた。
・ゲーム『異聞妖怪奇譚』
ギーガが流したデマ情報に踊らされて鬼太郎が自分を馬鹿にしていると思い込んだという理由で襲撃し、その圧倒的パワーで追い詰めた。
しかし無防備な状態に置かれていた胴体を見つけたねずみ男が、これを見せものにしようと持ち去った為、胴体の元へ戻る事が出来ず、自爆寸前まで追い込まれる。
最終的には鬼太郎たちの活躍により間一髪で無事に首を胴体に戻すことができ、文字通り頭を冷やして自分の行いを反省して鬼太郎たちに謝った(ちなみにゲームでは特定の条件を踏めば仲間に出来る)。
アニメ第6期
ウーチューバーに返り咲こうとするチャラトミと出会い、利害の一致から手を組む。遂にファンの女の子から握手を求められる身分となり、この立場にぬけ首は十分満足してご満悦。「しばらく休む」といって実家(山)へと帰る事にした。
しかし相方のチャラトミはウーチューバーとして広告料で生活できるレベルが望みであり、視聴回数を稼ぐために、ぬけ首の胴体を盗み出して隠し、視聴者に対して「宝探し」のサプライズゲームを宣言する。
体から長時間離れたぬけ首の頭は、高温を発し続けて第2の太陽と化し、日本を大混乱に陥れた。
挙句、自爆寸前まで追い詰められるが、最終的にはまなや鬼太郎たちの活躍で、無事に胴体と繋がり事なきを得た(チャラトミのその後の顛末や、物語の詳細はチャラトミの記事を参照)。