概要
三体(The Three-Body Problem)は、劉慈欣(Liu Cixin)のSF小説である。地球往事三部作(Remembrance of Earth’s Past)の第1作目にあたるので、転じて、シリーズ全体を指す場合もある。英訳者はKen Liu。
1960~1970年代の中国、及び近未来の地球と宇宙を舞台とする。
2021年には第52回星雲賞を「黒暗森林」が受賞した。
ストーリー
三体
文革から危機紀元の始めまでを描く。
黒暗森林
危機紀元を始めから終わりまで描く。
死神永生
コンスタンティノープルの陥落(西暦1453年)から、危機紀元初期、抑止紀元(2208年~2270年)、送信紀元(2272年~2332年)、掩体紀元(2333年~2400年)、宇宙の熱的死間近(西暦10018906416年ごろ)を描く。
登場人物
「三体」初登場
葉文潔(Ye Wenjie)
地球三体協会(Earth Three-body Organization, ETO)の精神的リーダー。自分の目標を達成するには、夫を犠牲にすることも厭わず。
汪淼(Wang Miao)
ナノ・マテリアル「飛刃」の開発を行なっている学者。
世界中の基礎研究に関わる科学者達が、次々と、自殺その他の不可解な行動を取る中、応用分野の研究者である筈の彼の身にも「人類絶滅へのカウントダウンを思わせる数字が見えはじめる」と云うホラーめいた現象が起き……。
史強(Shi Qiang)
がさつだが、現実主義者であると同時に柔軟な発想が出来る有能な警察官。所属は、北京市警察のテロ対策部隊→地球防衛安全部。
軍隊にいた事があり、その時の上官は常偉思。
作中では大史(「史兄貴」と言った意味)と呼ばれる事が多い。
「三体」ではナノマテリアルの研究者である汪淼の、「黒暗森林」では4人目の「面壁者」である羅輯の護衛担当となる。
ちなみにヘビースモーカー。
マイク・エヴァンス
地球三体協会の中でも最過激派の「降臨派」(三体人による人類滅亡を望む者達)の首魁にして、地球三体協会の事実上の創設者。
多国籍石油企業CEOの息子だったが、子供の頃に父親の仕事の正当性に仕事に疑問を持ち、自然保護運動家となり、中国で絶滅危惧種であるツバメの一種の保護を行なっている際に葉文潔と知り合う。
その後、中国での活動は失敗し、失意の内に中国を去るが、皮肉にも袂を分った筈の父親に多額の遺産(兄弟姉妹の中で最も多い)を残される。とは言え、莫大な父親の遺産をもってしても、環境破壊とその背後に有る貧困その他の諸問題を解決するには程遠く、また「人類」そのものに失望していたせいもあって、葉文潔より聞いた「三体人」による地球侵略を支援する組織として地球三体協会を設立し、活動拠点であり「三体人」との通信施設でもある大型船「審判の日(ジャッジメント・デイ)」号を作る。
常偉思(Chang Weisi)
中国軍内での「三体」対応の責任者。階級は少将で、「三体」では陸軍所属だったが、「黒暗森林」では新たに創設された宇宙軍の政治部司令官(要は政治将校のトップ)となる。
「三体人」「地球三体協会」に関する軍・警察関係者による国際会議や複数国家が連携した作戦では中心的立場になる事が多い。
「黒暗森林」初登場
羅輯(Luo Ji)
大学教授ではあるが、大した学術的な業績も、それどころか学問への情熱すらなく、生活の為に学者をやっているような人物で、性格・私生活についてもかなりの駄目人間。
しかし、三体人に対抗する秘策を編みだす使命を受けた4人の「面壁者」最後の1人に選ばれてしまう。もちろん、他の3人の「面壁者」(アメリカの元国防長官、対米戦争に勝利した南米の小国の大統領、世界的な脳科学の権威)に比べると能力・業績ともに著しく見劣りがする。
果たして彼が、人類を救う使命を受けた「面壁者」に選ばれた理由とは……?
そして、最終的には、初めて「黒暗森林理論」を発見した地球人となる。
章北海(Zhang Beihai)
宇宙戦艦「自然選択」の艦長。
元々は、21世紀の中国軍人(所属:海軍→宇宙軍)。中国軍内での役割は政治将校。
親友すらも「敗北主義者」として告発するほどの熱烈な「勝利主義者」であり、宇宙軍から「敗北主義者」「逃亡主義者」を徹底的に排除し続けてきた。
優秀な軍人であると同時に、自分の信念や「三体人」に対する勝利の為には軍人としての本分に外れた違法行為を自分の手で行なう事さえ厭わないある種の狂信者。
同時に父親からは「他人に真意を見抜かれるな」「深く複雑な思考が出来る人間になれ」と云う教育を受けてきた。
そのせいもあって、21世紀の時代の中国宇宙軍の政治部司令官である常偉思からは、信頼を寄せられる一方で、その強固で熱狂的な信念の源が全く見えない事を不審がられていた。
「三体人」との最終決戦に備え、人工冬眠につくが、人工冬眠より目覚めた後、ある意外な行動を起し、最終的には戦艦同士での「暗き内ゲバ」で死ぬ。
「死神永生」初登場
程心(Cheng Xin)
航空宇宙工学を専門としている。三体危機をきっかけとして設立されたPDC戦略情報局(通称PIA)に所属し、三体艦隊に探査機を送り込むというプロジェクトにおいて重要な役割を果たす。雲天明から贈られた星が物語で重要な鍵となる。
雲天明(Yun Tianming)
程心に星を贈った青年。危機紀元初期には既に肺がんを患っていた。PIAの作戦により脳だけが三体星人の艦隊に送られた。送信紀元後、肉体が復元された彼は三体艦隊から地球を救うための「童話」を程心に託す。
地球文明・三体文明の共同で開発された外交用ヒューマノイド・インターフェース。日本刀を愛用する。
関連項目
84話に登場した星姉ぇのプリチャンアイドル時代の名前「三体星智子」は、本作から取っていると思われる。