応答するな!
応答するな!!
応答するな!!!
概要
『三体』(英:The Three-Body Problem)は、劉慈欣(Liu Cixin)のSF小説である。
「三体」本編に加え、続編の「黒暗森林」編、そして最終巻に当たる「死神永生」編から成るシリーズ「地球往事三部作(Remembrance of Earth’s Past)」の第1作目にあたるので、転じて、シリーズ全体を指す場合もある。英訳者はKen Liu。
1960~1970年代の中国、及び近未来の地球と宇宙を舞台として、三体文明と地球文明の戦争を描いている。
2021年には第52回星雲賞を「黒暗森林」が受賞した。
ストーリー
文化大革命の混乱の最中、自らの師であり実の父であった葉哲泰を惨殺された葉文潔。自身も父と同じ運命を辿るかと思われたが、天体物理学者としてのノウハウを買われ、地球外生命体探査を目的とした極秘施設「紅岸基地」にスカウトされる。
しかし文潔自身は父の死をきっかけに人類そのものに失望し切っており、「文明を立て直すには人類が滅びる他に道はない」という過激な思想に至る。そして彼女はそれを実行してくれる存在として宇宙人に望みを託し、宇宙に向けて地球に来るようメッセージを送信した。
それを受信したのは三体人という異星人であった。彼らの文明は過酷な環境故に滅亡の危機に瀕しており、文潔のメッセージに応じて地球へと侵略艦隊を送り出した。
地球と三体星系との距離はおよそ4光年。艦隊の到着までに400年はかかると見込まれ、その間に地球文明が三体側を上回る技術力を身に付ける事を懸念した三体人達は「智子(ソフォン)」計画を始動し、地球に対して周到な妨害工作を始めた。
一方、2007年の現代中国。ナノマテリアルの研究者である汪淼は、研究中に科学的に有り得ない奇妙な現象に遭遇し、そして基礎科学の最先端を行く学者達が次々と自殺していくという謎めいた事件に巻き込まれる。
偶然タッグを組む事となった警官の史強と共に事件を追う中、汪淼は『三体』という奇妙なVRゲームに出会う。ゲームを通じて謎を解き明かしていく内に、二人は一連の事件の裏で暗躍する「地球三体協会(ETO)」、ETOを取り仕切る「総帥」の正体、そしてその背後にいる三体人へと知らず知らずの内に近付いていく事になる。
地球と三体人――両者の400年に渡る壮絶な戦争は、まだ始まったばかりだった。
登場人物
「三体」初登場
葉文潔(Ye Wenjie)
地球三体協会(Earth Three-body Organization, ETO)の精神的リーダー。自分の目標を達成するには、夫を犠牲にすることも厭わず。
汪淼(Wang Miao)
三体編の主人公。ナノ・マテリアル「飛刃」の開発を行なっている学者。
世界中の基礎研究に関わる科学者達が、次々と、自殺その他の不可解な行動を取る中、応用分野の研究者である筈の彼の身にも「人類絶滅へのカウントダウンを思わせる数字が見えはじめる」と云うホラーめいた現象が起き……。
史強(Shi Qiang)
がさつだが、現実主義者であると同時に柔軟な発想が出来る有能な警察官。所属は、北京市警察のテロ対策部隊→地球防衛安全部。
軍隊にいた事があり、その時の上官は常偉思。
作中では大史(「史兄貴」と言った意味)と呼ばれる事が多い。
「三体」ではナノマテリアルの研究者である汪淼の、「黒暗森林」では4人目の「面壁者」である羅輯の護衛担当となる。
ちなみにヘビースモーカー。凄腕のガンマンでもある。
地球三体協会の中でも最過激派の「降臨派」(三体人による人類滅亡を望む者達)の首魁にして、地球三体協会の事実上の創設者。
多国籍石油企業CEOの息子だったが、子供の頃に父親の仕事の正当性に仕事に疑問を持ち、自然保護運動家となり、中国で絶滅危惧種であるツバメの一種の保護を行なっている際に葉文潔と知り合う。
その後、中国での活動は失敗し、失意の内に中国を去るが、皮肉にも袂を分った筈の父親に多額の遺産(兄弟姉妹の中で最も多い)を残される。とは言え、莫大な父親の遺産をもってしても、環境破壊とその背後に有る貧困その他の諸問題を解決するには程遠く、また「人類」そのものに失望していたせいもあって、葉文潔より聞いた「三体人」による地球侵略を支援する組織として地球三体協会を設立し、活動拠点であり「三体人」との通信施設でもある大型船「審判の日(ジャッジメント・デイ)」号を作る。
常偉思(Chang Weisi)
中国軍内での「三体」対応の責任者。階級は少将で、「三体」では陸軍所属だったが、「黒暗森林」では新たに創設された宇宙軍の政治部司令官(要は政治将校のトップ)となる。
「三体人」「地球三体協会」に関する軍・警察関係者による国際会議や複数国家が連携した作戦では中心的立場になる事が多い。
「黒暗森林」初登場
羅輯(Luo Ji)
黒暗森林編の主人公。大学教授ではあるが、大した学術的な業績も、それどころか学問への情熱すらなく、生活の為に学者をやっているような人物で、性格・私生活についてもかなりの駄目人間。
しかし、三体人に対抗する秘策を編みだす使命を受けた4人の「面壁者」最後の1人に選ばれてしまう。もちろん、他の3人の「面壁者」(アメリカの元国防長官、対米戦争に勝利した南米の小国の大統領、世界的な脳科学の権威)に比べると能力・業績ともに著しく見劣りがする。
果たして彼が、人類を救う使命を受けた「面壁者」に選ばれた理由とは……?
そして、最終的には、初めて「黒暗森林理論」を発見した地球人となる。
章北海(Zhang Beihai)
宇宙戦艦「自然選択」の艦長。
元々は、21世紀の中国軍人(所属:海軍→宇宙軍)。中国軍内での役割は政治将校。
親友すらも「敗北主義者」として告発するほどの熱烈な「勝利主義者」であり、宇宙軍から「敗北主義者」「逃亡主義者」を徹底的に排除し続けてきた。
優秀な軍人であると同時に、自分の信念や「三体人」に対する勝利の為には軍人としての本分に外れた違法行為を自分の手で行なう事さえ厭わないある種の狂信者。
同時に父親からは「他人に真意を見抜かれるな」「深く複雑な思考が出来る人間になれ」と云う教育を受けてきた。
そのせいもあって、21世紀の時代の中国宇宙軍の政治部司令官である常偉思からは、信頼を寄せられる一方で、その強固で熱狂的な信念の源が全く見えない事を不審がられていた。
「三体人」との最終決戦に備え、人工冬眠につくが、人工冬眠より目覚めた後、ある意外な行動を起し、最終的には戦艦同士での壮絶な同士討ちの末に死亡する。
「死神永生」初登場
程心(Cheng Xin)
死神永生編の主人公。航空宇宙工学を専門としている。三体危機をきっかけとして設立されたPDC戦略情報局(通称PIA)に所属し、三体艦隊に探査機を送り込むというプロジェクトにおいて重要な役割を果たす。雲天明から贈られた星が物語で重要な鍵となる。
雲天明(Yun Tianming)
程心に星を贈った青年。危機紀元初期には既に肺がんを患っていた。PIAの作戦により脳だけが三体星人の艦隊に送られた。送信紀元後、肉体が復元された彼は三体艦隊から地球を救うための「童話」を程心に託す。
地球文明・三体文明の共同で開発された外交用ヒューマノイド・インターフェース。日本刀を愛用する。
重要用語
- 三体世界
太陽系から4光年離れた星系。そこに住む異星人は「三体人」と呼ばれ、名前は「三体問題(本作の根幹を成す設定であり、天体物理学における難問。現在でも完全には解明されていない)」と彼らの住む星系が3連星系である事から採られた。
3つの恒星が互いに重力を及ぼす影響で非常に複雑で不規則な軌道で動く為、惑星は常にそれらに翻弄される事になる。
三体星における暦は大きく「恒紀」と「乱紀」に別れ、恒紀の場合は1つの恒星の重力に捉えられるので比較的安定した気候と昼夜サイクルが保たれるが、2つまたは3つの恒星に翻弄される乱紀は非常に厳しく、昼夜のサイクルが高速で巡るだけでなく、昼または夜が延々と続き、時には絶対零度に晒され窒素も固体化するほど気温が低くなったり、あるいは3つの恒星に同時に焼かれて惑星表面全体がマグマ化するまで高温になったり、酷い場合には惑星の一部が恒星の重力により剥ぎ取られるという数え役満のクソゲーとしか言いようのない非常に過酷な環境に晒される事となる。よく生きてられるな三体人…
加えて恒星同士の動きの関係で恒紀・乱紀の期間も一定ではなく、どちらも1日も続かない場合もあれば数百年に渡って続く事もある。三体世界の歴史は恒星の運行に規則性を見出し、恒紀・乱紀の時期と期間を正確に予測する暦を算出する努力と切っても切れない関係にあり、作中VRゲーム『三体』の主要な目標ともなっている。
三体人はこの過酷な環境に適応する為、体から瞬時に水分を完全に抜き乾燥線維化する「脱水」機能を備えており、脱水する事で乱紀を乗り切り、恒紀になると水を吸収し元の姿に戻る「再水化」を行う事でどうにか対処してきた。しかしそれとて乱紀を無傷で乗り越える事はできず、三体世界は数百回に渡って文明の滅亡と再興を繰り返してきた。
この為、自然と三体文明は種としての存続そのものに全振りした全体主義的な社会体制が形成され、文化や芸術といった物は「軟弱」として徹底的に抑圧された。当然、地球人のそれとは全く異なる道徳観が醸成される事となった。
このような環境に絶えず晒される為、いずれ惑星自体が恒星に飲み込まれ文明・種族諸共滅亡してしまう事は目に見えており、三体人にとっての唯一の生存の道は宇宙に移住する事であった。
- 智子
三体世界が地球の科学発展を妨害すべく開発した、陽子を2次元展開して集積回路を刻み込んだ人工知能を持つスーパーコンピューター。
「智恵のある粒子」の略で、文脈によって「ソフォン(Sophon)」「ちし(音読み)」「ヂーヅー(中国語読み)」と様々な呼び名があるが、概ねコンピューターとしての智子は「ソフォン」と呼ばれる。「ともこ」という日本人風の名前も智子のダジャレである(それを反映してか、「死神永生」編の登場人物である智子は日本人風の出で立ちとなっている)。
主な目的は地球文明における基礎科学実験の妨害である。つまり実験結果を意図的に操作して狂わせ、正確な結果を得られないようにする事で新たな科学ブレイクスルーを防ぐという物だった。加えて極めて高度な監視・即時通信機能も備えており、地球側の情報を全て三体側に筒抜けにする事も可能となった。
地球の科学技術を21世紀初頭の段階のまま停滞させ、加えてスパイとしての役割も担わせる事で三体側は優位に立てると思われたが、唯一人間の思考だけは読めないという弱点を抱えており、「黒暗森林」編の最重要計画「面壁計画」もこの弱点を突いた物だった。また基礎科学は抑えられても応用科学はそのままだった為、人類は後に既にある技術を極限まで高める事でこの状況に対処しようとした。
なお即時通信機能を応用して、低次元展開する事で遠隔モニターとして用いる事も可能というちょっと便利な機能も備えている。
- 地球三体協会(ETO)
人類文明に失望し、人類でありながら人類の絶滅を企む者どもから成る組織。地球防衛を妨害する傍ら、三体人を「主」と仰ぎ、三体人の地球侵略を幇助する活動を行っている。「三体」本編時点では三体人と直接コンタクトを取れる唯一の組織でもある為、ある意味貴重な情報源でもある。
が、その実態はカルト宗教とテロ組織の悪魔合体でしかなく、過激派組織あるあるの苛烈な内部抗争を繰り返した挙句、史強の奇策により組織としては壊滅してしまう。
- 『三体』
作中に登場する、本作と同じタイトルの架空のVRMMORPG。プレイヤーはゲーム内の演出を五感で感じる事ができる「Vスーツ」を着用する事でより没入感がアップしている。
上述の三体星を舞台として、惑星・恒星の運行を正確に予測する事が主な目標となる。三体星を舞台としてはいるがそこに地球の歴史を投影した設定となっており、プレイヤーは始皇帝、アリストテレス、ジョン・フォン・ノイマンなど歴史上の様々な人物に扮して参加する。ただし時代考証は考慮されていないのでニュートンとノイマンが同じ場面で登場する事もよくある。
その正体は会員のオルグを目的としてETOが大量の資金をかけて開発した物で、プレイヤーに三体世界についての基礎知識を教え込む事がその役割だった。
ちなみにブラウザゲーである。
関連項目
84話に登場した星姉ぇのプリチャンアイドル時代の名前「三体星智子」は、本作を元ネタとしていると思われる。