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仮面の破壊者

かめんのはかいしゃ

ゲームブック「ファイティングファンタジー」シリーズの第23弾。著者はロビン・ウォーターフィールド。
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「仮面の破壊者」とは、イギリスの出版社「ペンギン・ブックス」から出版されていたゲームブック「ファイティングファンタジー」シリーズの第23弾「MASKS OF MAYHEM」の日本語版タイトルである。出版社は社会思想社。

作品解説編集

 クールの北東部、アリオン市。

 公正で立派な領主の統治で、領民たちの生活は安定し、領地は繁栄していた。

 その領主=君は、ある日、魔術師アイフォー・ティーニンに呼び出された。アイフォーは魔術を用い、君の統治に協力しているため、対等の立場に立っている。

 彼は、「魔女モルガーナが、邪悪な計画を立てている」と切り出した。

 モルガーナは、アリオンから北、北部山脈のクリル・ガーナッシュの五つの峰に住む。

 そしてモルガーナは、『12種類の魔法の印』に関する知識を手に入れたと語る。


 12の魔法の印。それはあらゆる存在を支配する力を呼び出す事ができる。

 この魔法は、正義を求める側の魔術師たちの間では、昔から知られていた。が、魔術師の長老会は禁止していたにもかかわらず、モルガーナはこの知識を入手。既に11種類の印をつけた仮面を製造し、作り出したゴーレムに被せたという。

 残りは一種類。それさえあれば、残る11種と互いに結びつき、印の魔力が生まれる。そして、万物を支配する力がモルガーナのものとなり、世界に解き放たれる。

 そうなるとゴーレムは全ての存在の本質となり、誰もゴーレムに、その主人足るモルガーナに逆らえない。


 アイフォーは言う、モルガーナは、君が倒さなければならないと。そして魔術と魔術がぶつかり合った時のエネルギーは、12体のゴーレムが揃った時と同じくらいの破壊力があるために、魔術師の長老会は手を出すわけにはいかないと言う。

 だが、君のような英雄ならば、魔術もほとんど効果はない。ゆえに、この件は君の双肩にかかっているというわけだ。

 君は準備を整え、代々伝わる兜を被り……冒険に出発した。


 シリーズ23弾。

 今回は、タイタンのクールが舞台の冒険譚である。

 主人公=君は責任ある立場の人間であり、その事が後に重大な要素として、事態の解決に関わってくる事になる。

 森林から丘陵、平原、雪山と、徒歩ではあるがそれらのフィールドを進んで行く。途中で廃坑や、他の領主の宴など、様々なイベントも挟んでいく。

 特徴としては、「なぜ、自分がこの冒険を行わねばならなかったのか」という点を、途中で主人公=君が少しずつ知っていく事である。冒険そのものに隠された一つの陰謀を、冒険の途中で少しずつ手がかりを得る事で明らかにしていき、最後に真の目的と全体の状況が露わになる。

「電脳破壊作戦」で、途中途中で手がかりを得て、最後にそれを合わせ、事態の解決の重要な鍵となる……というやり方を、タイタンを舞台にした作品で行っているのだ。


 また、ストーリーの展開のさせ方も、同作と似てメリハリのあるものとなっている。

 アリオンの北から出て、死の湖とその周辺、欺きの森とうねりの丘。領主へヴァーが治める枯葉の谷、矛槍草の大平原、瘴気の沼……といった場所を進んで行き、最終的にモルガーナが潜む、雪山であるクリル・ガーナッシュへと赴く。

 そのため、大きな流れとしては一本道であり、ルートを読者の選択で選ぶ、という事は出来なくなっている。

 が、その分「決まったストーリー」の上に乗って進めるので、読者自身が物語の主人公となって活躍できる……という感が、より強くなっているとも言える。

 一見すると「邪悪な魔術師を倒すため、冒険に出る」という、オーソドックスな理由と目的の冒険が、実は一ひねりしており「自身をも巻き込んだ陰謀をあばき、その黒幕をも打ち砕く」という内容になっているのだ。

(ただし、ある重要なアイテムを手に入れるためには、ある場所でかなりシビアなサイコロの目を出さねばならず、それが無いと解決もできない。そのため、少々厳しくはあるが)


 一見ありがち、しかしひとひねりしたストーリーが楽しめる、奥深い一作である。


主な登場人物編集

主人公=君編集

 アリオン市の領主。公平かつ平和に統治をおこなってきた。

 英雄、ブレンダン・ブラッドアックスを先祖に持つ。愛用の兜には、六角形の模様が額の部分にあり、失われるとアリオンに災いがもたらされると言われている。

アイフォー・ティーニン編集

 アリオンの領主と同等の立場にいる魔術師。魔法を用いて、主人公のアリオンの統治を手伝ってきた。今回の、モルガーナの事件の事を知り、主人公にその討伐を依頼する。

ケヴィン・トゥルーハンド編集

 アリオン領主に仕える武具職人。年老いているが職人としての腕前は高く、主人公=君の信頼している人物の一人。

 枯葉の谷のへヴァーが持つ、角笛の事を主人公に知らせ、手に入れるようにと進言する。

モルガーナ編集

 クリル・ガーナッシュの山中、洞窟内部の自らのアジトに潜む魔女。身体つきは弱々しい中年女性、もしくは老婆に見えるが、魔力に満ち満ちており、体力の無さを補い余りある。特殊なフォースフィールドを纏っているため、剣で攻撃しても威力が半減してしまう。

 12の印の魔法のうち、11の印を手に入れて仮面と化し、ゴーレムに被せた。

ガーリン編集

 冒険序盤。死の湖にてクラーケンの襲撃を受けた主人公が、交戦し倒したのち、湖に現れた幽霊たちのリーダー。

 かつてクラーケンに襲われ殺された者たちで、クラーケンを倒してくれた主人公に恩義を感じ、一度だけその名を呼ぶ事で助力する事を誓う。

へヴァー編集

 枯葉の谷と、その周辺地域の村や町を統治する領主。

 自身の城の宴では、バードマンやドワーフ、丘巨人を呼び、ともに杯を交わし肉を食らい、それを楽しむ豪放磊落な男。

 旅の途中の主人公を友好的に迎え入れ、所有する角笛を譲るかわりに巨大な剣歯虎の討伐を依頼する。

 所有している『へヴァーの角笛』は、一見すると水牛の角から作った角笛に見えるが、実は悪魔ヤッチャーの角から作ったもの。吹くと勇猛な音が響き渡り、邪悪な存在ならばなんであれ恐怖を感じる。そのため、悪魔やアンデッド、モルガーナのような邪悪な魔女などに対しては効果的(技術点を一点引く)。しかし猛獣や動物など、獰猛だが邪悪とは言えない相手に対しては効果がない。

ヴァシティ編集

 時間経過する事のない国『乙女の谷』に住む、永遠の乙女。

 長い時間を過ごし、様々な事を見聞きしてきた。モルガーナの企みと、その真なる目的とを知り、主人公にその事を伝える。

 ただし、彼女に会うためには、乙女の谷への入り方と出方を知り、そのためのアイテムを揃えなければならない。ジュジャとは知人。

ジュジャ編集

瘴気の沼に住む、年老いた魔術師。本名は誰も知らず、伝説にも伝わっていない。世界に邪悪が満ちた時に、この沼に隠居したらしい。冒険の目的を知っており、ヴァシティと出会う必要があり、乙女の谷から出る方法を教えてくれる。

キャンチェス編集

 錬金術師兼貿易省。がっしりした身体つきの老人。水牛に引かせた派手な幌馬車で旅をしている。

 手綱を引かずに、水牛に好き勝手に引かせている。幌馬車には周囲に鍋やフライパンを吊り下げており、内部には商品を積み込んでいる。

 不用心に見えるが、幌馬車を襲い商品を奪おうとする者に対しては、一瞬で記憶を奪う魔術を使い自衛する。

 売り物は幸運や回復の水薬、寒さに耐える薬や、透明になるマントや魔力を有するブーツなどである。

 

舞台となる地域編集

アリオン編集

 本作のスタート地点。クール大陸の北東部に位置する。

 アリオナ海に面しており、クールのこの周辺地域では最も繁栄している。南側はアリオナ海、北側には北の髑髏門を隔てて、死の湖に続く平原と面している。

死の湖(ネクロス湖)編集

 アリオンの北に位置する湖で、西に欺きの森、東にうねりの丘がある。

 その湖水は酸を多く含み、水筒に水を入れると腐食してしまう。また、湖には巨大な蛸または烏賊のモンスター、クラーケンが生息しており、過去に何人もの犠牲者を出していた(ガーリンが率いる幽霊たちはその一部)。

欺きの森編集

 死の湖の西側にある森。内部には魔女やそれを襲うスプリガン、そして森エルフとその集落が存在する。森エルフと接触した主人公は、そこで重要な手掛かりを得る事が可能。

うねりの丘編集

 死の湖の東側にある丘陵地帯。夜になるとひどい靄が発生し、視界を遮ってしまう。

 丘陵の一つには墓地があり、墓鬼がそこに陣取っている。また、北側には廃坑が存在する。

枯葉の谷編集

 死の湖の北側一帯に広がる、居住地。

 広く豊かな畑と田園地帯が広がり、統治者である領主・へヴァーが住む城を臨む。

矛槍草の大平原(パイクスタッフ平原)編集

 枯葉の谷の北側に広がる、矛槍草が生える大平原。その中心部には東西に続く深い谷があり、これを越えない事には更なる北へ進めない。

瘴気の沼編集

 矛槍草の平原、その北西に存在する沼地。

 瘴気に満ちており、人間が歩ける足場はほとんどない。

クリル・ガーナッシュ編集

 矛槍草の大平原の北に位置する山岳地帯。寒冷地であり、雪が積もっている。

 この地の山岳部族は、モルガーナを恐れており、嫌々ながらも従っている。また、寒冷地に生息するモンスターと出会う確率も高く、非常に危険な地域でもある。


登場モンスター編集

ブラックハート編集

 オークと闇エルフの交配種族。一見すると逞しい身体つきの闇エルフに見えるが、その顔はオークと同じくらいに醜い。

 かつてはアリオンを含むクールの北東部に多く存在していたが、邪悪と混沌の側の勢力として、妖術師や混沌側の軍勢に参加していた。

 そのため、ブレンダン・ブラッドアックスによりそのほとんどを滅ぼされた。しかし少数が生き残り、小さな隔絶した地域の居住地に隠れ住んでいる。闇エルフと同じく、弓を得意とする。

ドラガー編集

 オークとトロールの交配種である、重量級の種族。かつては鉱山などで働かされ、現在は廃校になった鉱山に住み付いている事が多い。鋲を打った鎧を着て、長く豊かな、しかし薄汚れたたてがみのような頭髪を三つ編みにしたりして誇らしげに飾っている。

 やはりオークやトロールなどと同じく、狂暴かつ暴力をこのみ、人間などに対しては問答無用で襲い掛かり、食い殺す。装飾品を溜め込む事で有名で、その住処を探ると、安ぴか物を含んだ、様々なアイテムを発見する事が多い。

ヘルファイア・スピリット(地獄火の霊魂、業火の精)編集

 死にかけた不運な者に取りつく、奈落におけるデーモンや精霊などの一種。

 ある召喚士などは、このヘルファイア・スピリットを召喚し、敵対する相手の仲間を痛めつけて瀕死の状態にしたうえで憑依させる。

 そのまま敵の元へと送り込み、そのまま死ぬと同時にその身体を完全に乗っ取らせ、敵を攻撃させるのだ。その際には先端が九つに別れた燃えるムチを手にして、いくつかある呪文を一日に一度、使用する事が出来る。

 この状態になったヘルファイア・スピリットと戦い、倒した場合。この精霊は地上との絆を断たれ、奈落へと去ってしまう。そして後には、傷つけられた死体が残る。

チオン編集

 雪山に住む、巨大なミミズもしくは長虫の一種。砂漠に住むジャイアント・サンドウォームの親戚と思われている。

 雪の中を素早く動き回り、獲物を見つけるとすり鉢状に周囲を回り込み、逃げられないようにしていきなり雪の中から襲い掛かる。その口には牙が並び、人間程度ならひと飲みにしてしまえる。

氷巨人(アイス・ハルク)編集

 雪山に住む、巨大な熊と猿をかけ合わせたような外観の怪物。悪名高き雪男(イエティ)の近隣種。イエティ同様の巨体と鉤爪を持ち、イエティよりも灰色が濃いめの毛皮を持つ。

 また、イエティでは小さくなっている脳が、アイス・ハルクでは完全に消失してしまっている。そのため、ダメージを与えても鈍感故に、痛みを感じず反撃してくる。

ナンディ・ベア編集

 廃坑の洞窟に住む、肉食のモンスター。やはり巨大な熊と類人猿を合わせたような姿をしている。その足裏には肉球を有し、そのために巨体でありながら足音を立てずに歩く事が可能。

 獲物の後ろからこっそりと忍び寄り、襲撃する。人間の肉、特に脳みそを好む。

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