概要
内川幸太郎とは、日本のプロ雀士である。日本プロ麻雀連盟、KADOKAWAサクラナイツに所属している。愛称は「うっちー」。
プロフィール
名前 | 内川幸太郎 |
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読み方 | うちかわこうたろう |
キャッチフレーズ | 手順マエストロ |
所属団体 | 日本プロ麻雀連盟 |
所属チーム | KADOKAWAサクラナイツ |
出身 | 長野県 |
生年月日 | 1981年5月6日 |
経歴
初めて麻雀をしたのは6歳の頃。
小学1年生から高校3年までサッカーを続けていたが、高校時代はサッカー部の部室で麻雀を楽しんでいた。20歳ごろに雀荘の経営を引き継ぐ形で共同経営を始め、24歳(2005年)でプロ雀士デビュー。
2017年、所属する日本プロ麻雀連盟内のA1リーグに昇格。
2018年、自身初のメジャータイトル「十段位」を獲得。(第35期十段位)
2019年、Mリーグに新たに参画する「KADOKAWAサクラナイツ」よりドラフト1位指名を受け、Mリーガーとなる。
2022年、所属するKADOKAWAサクラナイツがMリーグ2021-22シーズン優勝を飾る。
2024年現在、鳳凰戦A1リーグ在籍。
雀風
雀風はバランス重視の対応型。その正確な打牌から「手順マエストロ」の異名を持つ。座右の銘は「泰然自若」。
Mリーグではオーラスに強く、窮地からのトップや2着順アップを決めた試合が多数ある。たぶんヒーロー属性持ち。
一方で負ける時はとことん負けてしまう節があり、2024年4月時点で唯一、Mリーグで30000点以上の箱下を2回マークした雀士となってしまっている。さらにそのうちの一方は現在のMリーグにおける最低得点記録(-54500点)である(もう一方については後述)。
人物
- Mリーグきってのイケメン枠。普段は穏やかだが、試合中や大事な局面ではとても表情豊かになり、その様子はもはや顔芸。
- 麻雀の講師をする機会が多いためか、トラッシュトークは苦手。サクラナイツ内の某企画で、岡田紗佳に「ずっとオヤジギャグ言ってた」と言われるくらいには苦手。
- 趣味はサッカー観戦とお酒、ポーカー。一時期、レモンサワーの飲み過ぎで太ってしまい節制していた。ポーカーはJOPTに参戦する程度には嗜んでおり、とある撮影では世界のヨコサワのポーズ(Make sense)で写っていたりする。
- 既婚。お相手とは学生時代から交際しており、プロ雀士になる前に入籍していた。
エピソード
西川幸太郎の四暗刻単騎放銃
内川プロ、ひいてはMリーグを象徴する名シーンのひとつ。
この出来事が勃発したのは、2020年2月25日、Mリーグ2019-20レギュラーシーズン83日目第2試合。
同試合で内川プロは苦戦を強いられ、南3局を終え次がオーラスとなる時点で3位・黒沢咲プロ(TEAM雷電)に約10000点差をつけられてのラスに沈んでいた。さらに、黒沢プロと2位・勝又健志プロ(EX風林火山)との点差も約20000点という状況で、優勝はもはや絶望的、3位浮上にも跳満以上が欲しいという過酷な状況となっていた。
切羽詰まった内川プロは次善策として、視点を佳境を迎えたセミファイナル進出争い(シーズン成績が6位以上に入ったチームのみで開催されるプレーオフ)に切り替え、現在6位争い(=セミファイナル当落線上)に絡んでおり、サクラナイツが特に難敵として警戒度を高めていた赤坂ドリブンズに属し、この試合でも首位に着けていた村上淳プロを蹴落とす方向性を試みる。
そのうえで、次の親が唯一村上プロを捲りやすい位置にいた勝又プロ、なおかつ勝又プロの所属チームであるEX風林火山は既にセミファイナル進出が絶望的(=仮にこの試合で優勝されてもサクラナイツのセミファイナル進出条件に与える影響がほぼない)であったことから、勝又プロを連荘をアシストして村上プロとの点差を拡大させ、あわよくば村上プロから高い役の直撃を決めて下位に落とす、というプランを立てた。
そして迎えたオーラス、内川プロは勝又プロが鳴ける牌を絶妙に差し込んで聴牌をアシストし、勝又プロの一人聴牌で流局させることに成功。さらに続く一本場では勝又プロが村上プロから直撃を取ることに成功し、内川プロの思惑通り首位が逆転する。
そうして二本場を迎えるのだが、ここで内川プロにとって想定外の事態が発生する。
3位・黒沢プロが中盤となる11・12巡目に無筋、つまり他家の待ち牌の可能性がある牌を2連打してきたのだ。倍満以上を和了しない限り着順アップが見込めず、逆に下手に放銃すれば最下位もあり得る得点状況の黒沢プロによる、かなり強気な攻め。何か強烈な役を持っている可能性を感じさせる打牌であった。さらに続く13巡目では八筒を暗カンし、ドラに隣接しておりやはり危険度の高い八萬を打牌。この動きを取りうる最も高い手は…
八萬が打牌された直後、まさかの大物手の到来の予感に顔をしかめる内川プロ。その苦悩の深さは察するに余りあるものであった。
黒沢プロから尋常ではない攻めた打牌が続く中、今度は内川プロ自身が跳満を聴牌。黒沢プロを直撃すれば3位浮上が見込める状況となる。直後に勝又プロが待ち牌を掴んで放銃してしまうものの、これを和了しても内川プロは最下位のまま、かつ村上プロが逆転優勝してしまい当初のプランに反するため、内川プロはこれを見逃し。その後は特に表立ったピンチやチャンスもなく山が残り1枚となり、内川プロが海底に手を伸ばす。
掴んだその牌は、序盤に村上プロが1枚切ったのみの「西」。勝又・黒沢両プロの河には存在せず、打牌によって放銃となる可能性が高い、危険牌であった。
最後の最後で掴まされた危険牌に、思わずのけぞる内川プロ。
勝又プロへの放銃であれば当初の次善策は達成できる算段が高まるため、そこまで問題ではない。問題は四暗刻を聴牌している可能性が高い黒沢プロである。
現在掴まされている「西」は、東局と南局しかない半荘の試合では役牌にできないため比較的役割が軽く、それ故に相手の裏をかいて単騎放銃を誘いやすいため、「単騎は西で待て」なんて格言まで存在する牌である。加えて既に1枚切れているため、0枚切れよりも安全性が高いと思わせることもでき、待ち牌にされている可能性は高かった。したがって、西を打つことで黒沢プロに放銃してしまう可能性は高いと言えた。
一方で、内川プロ自身は現在聴牌中で、なおかつこの打牌で誰かが和了しなければ流局という場面。ここで別の牌を捨てて西打ちを回避してしまうと、ノーテン罰符が発生して黒沢プロと点差がついてしまう。親の勝又プロが11巡目に立直をかけているため、仮に流局した場合は三本場となるが、着順アップ条件が倍満直撃以上になるため、それもまた厳しい。
どうするのが正解なのか…?
苦悶の表情で考えを巡らせる内川プロ。その長考は一分以上にわたって続いた。
最終的に内川プロは、①村上プロに放銃する可能性はなく、②仮に黒沢プロに放銃でも三倍満以下ならば勝又プロがトップで試合終了となり、③万が一黒沢プロの待ちが四暗刻だったとしても西待ちであると断定できる根拠はない …という3点から西を打牌する。
しかし無情にも、黒沢プロの待ちは四暗刻の西単騎であり、ロンが成立。想定されたパターンの中で最も最悪な結末を迎えてしまうこととなり、内川プロの得点は-32500点まで暴落した。
もちろん放送映像では黒沢プロの待ちが西であることは見えており、西を掴んだ瞬間にチャットは阿鼻叫喚と化していた。
最終的に放銃してしまった内川プロだが、その反響はきわめて大きく、
- 関連グッズができる。
- Mリーグ公式CMに最後の長考シーンが使われる。
- 打ち込んだ「西」が展示される。
- 内川プロの愛称に「西川」が追加される。
…などなど、相当こすられることとなった。
内川プロ曰く、この放銃後、外仕事で黒沢プロと同席する機会が急増したとのこと。
ちなみに、この局で完全包囲網を敷かれていた村上プロだが、実は内川プロが海底で西を掴まされる直前に同じく西を掴まされていた。
結局村上プロは手牌から東を捨てて放銃を回避しているが、ここでもし村上プロが放銃していたら、内川プロは次善の作戦を完遂させた立役者として、逆に伝説になっていたかもしれない…