我が奴隷ユミル お前はよく働いた
道を開き 荒れ地を耕し 峠に橋を架けた
我が部族エルディアは随分と大きくなった
褒美だ 我の子種をくれてやる
CV:津田英三
概要
3000年前、当時他の民族や国を襲撃、侵略する略奪民族であったエルディア人達を治め引き連れていた支配者。
後にエルディア帝国を支配するフリッツ王家、そして現在パラディ島内に隠遁するレイス家のルーツたる人物であり、本作における全ての元凶とも言うべき存在である。
本誌掲載時の本名は「カール・フリッツ」とされていたが、単行本ではフリッツ王と書かれており不明。
人物像
表情や感情の変化を見せることなく己の種族の為淡々と侵略、支配を行う一方で、豚を逃した犯人探しの尋問において「名乗り出ないのなら全員から片目をくり抜く」「奴隷に目玉は2つもいらぬ」と平然と言い放ったり、名乗り出たユミルに対して処刑同然の追放を宣告したりと、支配の為ならば冷酷な言動をとる。
その後娶った始祖ユミルに対しても(少なくとも表向きには)愛情らしきものを見せず、あくまで勢力拡大の道具として扱うなど、人間らしさを感じさせない、良くも悪くも王に徹する人物である。
本編での行動
始祖ユミルの住む村を襲撃・占領し、始祖ユミル含む住民達を奴隷として支配していた。
そんなある日、何者かが家畜小屋の柵を開けたまま放置し豚を逃がすという事件が起きると、全ての奴隷を集め、「犯人が名乗り出なければ全員から片目をくり抜く」と宣告し、結果村人達に突き出される形で自供した始祖ユミルに自由という名の追放、そして刺客を差し向けるという実質的な処刑を言い渡す。
その逃亡先で始祖ユミルが「始祖の巨人」として覚醒するという事態が起こるが、王はその力をエルディアの繁栄のために利用することを決める。
その後奴隷として巨人の力をエルディアの為に捧げ発展をもたらした始祖ユミルを冒頭の台詞と共に妃(或いは妾)として迎え入れ、彼女との間にマリア、ローゼ、シーナという3人の娘を設ける。
そうして妻としたあとも始祖ユミルの力を巨大な労働力として、そして兵器として利用し続け、数々の敵国を討ち滅ぼし、エルディアは巨大な帝国として発展した。
しかし、始祖ユミルが始祖の巨人として覚醒してから13年の月日が経ったある日、投降し謁見していた敵から奇襲をかけられ、庇った始祖ユミルが致命傷を負ってしまう。
そんな始祖ユミルに対しても、驚きの顔を見せながらもその身を案じる様子は見せず、ただ淡々と奴隷として蘇生を命じるばかりであったが、その言葉に絶望したか、その程度の傷ならば巨人の力で治癒できる筈の始祖ユミルは蘇生を拒んで命を落としてしまい、王は始祖ユミルの持っていた巨人の力をも失う危機に陥る。
しかし王は始祖ユミルの血と巨人の力が絶えることを拒み、三人の娘たちに始祖ユミルを全身を食わせるなど妄執を見せる。
元々寿命が近かったのか、あるいは始祖ユミルの死が影響を与えたのかは定かではないが、その後娘たちがまだ幼い状態で王は死に瀕し、最期は娘たちに子を産み増やし続け、死後はその背骨を子に食わせる事で始祖ユミルの血と力を継承させつづけるよう遺言を残してこの世を去った。
娘たちよ 子を産み増やし続けよ
ユミルの血を絶やしてはならぬ
娘が死ねば背骨を孫に食わせよ
孫が死ねば その背骨は子から子へ
我が後生においても 我がエルディアはこの世の大地を巨体で支配し
我が巨人は永久に君臨し続ける
我が世が尽きぬ限り永遠に
そして、王の死後始祖ユミルの力は「九つの巨人」として分化しながら始祖ユミルの子孫たちに継承されていった。
王の遺言とは異なる形であるが、後世のエルディアは巨人化能力者の死後に産まれた赤子へのランダム継承、あるいは巨人化能力者を生きたまま食い殺すことでの継承、
そして巨人化した人間の脊髄液をユミルの民に注入することでの無垢の巨人の精製方法を確立し、巨人の力を始祖ユミルの生前を超えて振るうようになる。
エルディアは帝国へと発展。数多の殺戮と侵略を以て、実に1700年もの長きに渡って大陸を支配し続けるのであった。
※物語における重要なネタバレ有り
王の視点からの描写がない為、彼が始祖ユミルに対して持っていた感情は不明だが、始祖ユミルからは愛されており、その愛が2000年に渡って彼女を苦しめ続け、死さえ存在しない世界で巨人を生み出し続ける原因となっていた。
単行本では彼の新たな登場シーンとして天と地の戦いでミカサ・アッカーマンが愛するエレン・イェーガーを討ち取ったのを見た始祖ユミルが謁見した敵の攻撃から王を庇わない選択を取り、王が敵の槍を受けて玉座で死んでいるところを娘たちと共に悲しむ描写が追加された。
また、アニメではマーレとの戦争で巨人化したユミルの前方を走るエルディアの騎兵隊の先頭で自ら槍を手にして馬を駆り、マーレの陣に向かい進む姿が追加されている(原作では勝利後の凱旋シーンでのみ王の姿が確認できる)。
余談
冒頭の「褒美だ、我の子種をくれてやる」というセリフが印象的だったのか、ファンからは「子種王」「子種おじさん」というとんでもない渾名で呼ばれている。