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概要編集

将軍地蔵ともいい、甲冑を着て武器を持つ武将の装いをした地蔵菩薩である。

図像学的表現の典拠となる儀軌は存在しない。『地蔵菩薩秘記』には「悪業煩悩の軍に勝つの剣を執る」尊格として記されている。

『大乗大集地蔵十輪経』には「諸の天魔を降すことは大龍象の如く、煩悩の賊を斬ることは猶し神剣の如く」という一節があり、これを剣を持つ姿として表現したもの、とも言える。


出典については『妙法運華三昧秘密三摩耶経』(『蓮華三昧経』又は『無障礙経』)とされることもある。天台宗の寺門派の祖・智證圓珍が招来したといわれる経典だが、島地大等の『天台教学史』等で翻訳元の原文を見出せない、中国か日本で撰述された「偽経」とされている。

このテキストには地蔵菩薩、六地蔵についての言及はあるが勝軍(将軍)地蔵については直接に言われていない。この点について、速水侑著『地蔵信仰』(塙書房刊)では、「続大蔵」に収録され、勝軍地蔵について確認できないテキストのほか、勝軍地蔵と六地蔵について言及、六地蔵のみに言及、という合計3バージョンの『蓮華三昧経』の存在の可能性について言われている。


愛宕山愛宕権現の本地仏としても信仰されている。


図像表現編集

に騎乗した姿、金剛夜叉明王のように二つの蓮台の上に立つ姿が知られている。剣のほか、通常モードの地蔵菩薩の持物である錫杖や宝珠を手にしていることもある。


作例編集

  • 来迎院(京都)蔵

右手に剣、左手に錫杖、二つの蓮台の上に立つ。


  • 徳雲寺(埼玉県秩父市)蔵

岩の上に座し、その同じ岩の上で、脇侍として左右に毘沙門天不動明王が立つ。右手に錫杖、左手に宝珠を持つ。片足は岩の下に垂れており、そこには蓮台がある。延命地蔵菩薩と呼ばれるタイプの地蔵像にも見られる特徴である。錫杖の底も別の蓮台の上におかれている。


  • 瑞岩山圓光院(山梨県・臨済宗)蔵

武田信玄の念持仏。刀八毘沙門天像とセットの陣中守本尊として携行された。白馬に騎乗し、右手に剣、左手に幡(はた、ばん)を持つ。


  • 福智院(奈良県奈良市福智院町)蔵

脇侍の不動明王、毘沙門天と共に刻まれた一体型のレリーフ、半肉彫式の像。馬に騎乗する形だが、馬は正面ではなく横向きになっている。鞍のかわりに蓮台があり、その上で半跏している。持物は右手に錫杖、左手に宝珠。


  • 談山神社(奈良県桜井市)蔵

神道における、官人形の神像のような造型。額には第三の目がある。貴族の服装をまとい、胴のところに更に上から甲冑を着込むという珍しい出で立ちである。


他の神仏との関係編集

『飯縄山略縁起』では大日如来の化身である飯綱大明神は武門の者達には勝軍地蔵として現れると記されている。


藤原鎌足は死後、談山大明神として神格化されたが、『紅葉拾遺編』中巻では勝軍地蔵が本地とされる。

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