あんさんぶるスターズ!の守沢千秋×明星スバルのBLカップリング
表記揺れ→ちあスバ
概要*
二人ともバスケ部に所属。千秋はスバルが塩対応を向ける大変貴重なキャラクターで、千秋はそんなスバルをひたすら溺愛し可愛がっている。その傾向を反映し、二次創作では年上包容力攻め×年下ツンデレ受けといった雰囲気のものが多い。
身長差は5センチ、体重も5キロ差と、両者とも年上の千秋がリードする形となる。その体格や筋肉量の違いは、それぞれのカードイラストを見比べれば明らかである。
自分を追いかけ回す千秋を鬱陶しがるスバルだが、千秋のことをひとりの先輩として尊敬し、信頼していることがその台詞の端々から窺われる。明るい笑顔の下、孤独に怯えるゆえに他者からの愛情を切実に求めるスバルと、相手のすべてを包み込むように優しく抱きしめ、まっすぐに愛を注ぐ千秋。ふたりの相性は抜群と言えるだろう。
ストーリーごとの動向*
以下、ネタバレ注意
メインストーリー
第92話「孤独」〜第95話「再起」
公式が最大手。
独りになったスバルが暗闇の中膝を抱え俯いていたところに、防音レッスン室の扉をぶち壊し、千秋が颯爽と現れる。洞察力が人一倍鋭い千秋はプロデューサーたる転校生、そしてスバル自身さえも気づかなかったスバルの精神的異変を悟り、誰よりも先に行動を起こしたのであった。
「ち~ちゃん部長は、相変わらずキモチワルイなぁ……?」
「そうか! 明星は相変わらずカワイイなぁ……☆」
このあたりまでは、付き合いたてのカップルか? と突っ込みたくなるが、ごく日常的な会話である。
「そう、おまえは俺の太陽だ……!」
「それでこそ、おまえは俺の後継者に相応しい……☆」
流星隊のレッドであり、『太陽』を名乗る千秋が、なぜスバルに対して「俺の太陽」「俺の後継者」と呼んだのか。意味深な箇所であるが、現在の段階では詳細は不明である。
千秋は以前から、スバルを何度も流星隊に勧誘していた。つまり、スバルを弱いもの、保護するべきものとして見ていたということである。
「ごめん、ち~ちゃん部長。せっかく声をかけてくれたのに。心配して、励まそうとしてくれたのに」
このスバルの台詞から、彼が千秋の好意をきちんと受けとめ、心から感謝していることが窺われる。
仲間に去られて独り暗闇に蹲っていた彼に光を当て、もう一度笑顔を与えた千秋。無条件に自分を受け入れ肯定してくれる絶対的な理解者の存在は、孤独に沈んでいたスバルにとって大きな希望となった。千秋の助けがなければ、スバルは再び立ち上がることができなかったであろう。
「俺はおまえの先輩で、部長で、正義の味方だ。困ったときは、ど~んと頼ってくれ!」
「俺の太陽」発言からもわかるとおり、スバルは千秋にとっての「太陽」であるらしい。そんなスバルにとっての「太陽」とは、窮地に駆けつけ、暗闇にいた自分をあたたかな光で照らしてくれた、守沢千秋ただひとりなのである。
第111話
「……かわいい後輩が世話になった。その落とし前は、つけてやる」
夢ノ咲を統べる絶対的君主の生徒会長・英智相手に、表情を引き締め怒りを露わにして、そう凄んでみせた千秋はただのイケメンであった。とはいえ(おそらく)公式では(まだ)付き合ってはいないので勘違いしてはならない。
『Trickstar』との対決の前に、英智の唯一の弱点である体力を消耗させる。それだけのために、千秋の『流星隊』は英智率いる『fine』に挑む。惜しくも敗れることになるが、大切な後輩の未来に繋がる道を、千秋は切り開いた。千秋はスバルを、『Trickstar』を信じ、自分たちの希望を託したのである。
その他のストーリー
千秋個人ストーリー第1話
初見ユーザーは驚くであろう、初っ端からぶっ飛びすぎである。
「感じるぞっ、明星をビンビンに感じる! 残り香や雰囲気、明星のすべてを胸いっぱいに感じるぞぉおお!」
「ハァハァ、俺はいま明星と一体化している……!」
教室の中にのこる後輩(男)の残り香を嗅ぎ、頬を染めてハァハァと息を荒げる千秋。その姿には、ストーリー内の転校生だけでなく、正統派イケメンの姿に期待しながら初めて個人ストーリーを開いた全員が度肝を抜かれたことだろう。
ちなみにそのあと、千秋は自分は変態ではないと弁解している。
よく読めば千秋の過去を読み解く鍵になる重要なストーリーなのだが、キャラクター紹介となるべき個人第1話がこれとは一体。
千秋個人ストーリー2話
「どうも明星と通じるものがあるせいか、女の子ではなく男の子として見てしまったらしい」
個人ストーリー2話目もまた「明星」である。
転校生を褒めようとして、いつもスバルにするように、つい癖で頭をわしゃわしゃと撫でてしまったとのこと。
ちなみに説明するまでもなく、転校生は女、スバルは紛れもなく男である。一体、彼はスバルをどんな目で見ているというのか……?
白熱! 夢ノ咲学院体育祭
千スバの絡みが胸焼けレベルに濃厚なイベントである。ストーリー内容は、バスケ部で体育祭に出ると決めた千秋が至急部員たちを集め、体育祭での活躍を目指して練習に励むというもの。
千スバと考えられる台詞を挙げていけばきりがないが、たとえば以下のようなものがある。
「俺の熱い思いは必ず明星に届くと信じていた……☆」
「うむ、さすが俺の太陽だ。今日も燦然と輝いているな……!」
「邪険にされればされるほど、その凝り固まった心を正義の力で溶かしてやりたくなるな! つまり明星、今のは逆効果だ!」
「……うん。だから、俺自身もち〜ちゃん部長にどう接していいかわかんないんだよね」
「(プレイヤー名)、ち〜ちゃん部長から離れて! こういうときのち〜ちゃん部長は危険だから、すぐ離れないと大変なことに……!」
他にも、千秋が昼休みでもない10分間の休み時間にスバルの教室まで迎えにきたり(「待ち通しくて、つい」とのこと)、奢ると言われた途端にスバルがころりと態度を変え、嬉しそうに千秋に焼肉をせがんだりする。
また、プロデュースイベントのスバルのコースでは、選択肢によってスバルが、
「俺、ち〜ちゃん先輩の影響を受けてるのかなぁ……?」
と言いながら彼にしては珍しい頰を染めた恥じらいの表情を見せてくれるので、見逃した方は復刻の際に確認するべし。
この台詞に関連して、実際、千秋に影響を受けていると思われる口調のスバルの台詞が所々で見受けられる。例:『オッス! 俺はオカリナ!どうしたどうしたっ、元気がないなオッちゃん!』(バンドアンサンブルより)
千秋に対して一貫してつれない態度を取るスバルであるが、胸の内にある千秋への尊敬や愛情が無意識のうちに外に表れているのかもしれない。
スカウト! 熱血硬派
限定スカウトのストーリー。
スバルの飼い犬・大吉が千秋のマイボールを汚してしまい、それをスバルが磨いた後に謝罪と共に千秋に返却。せっかくピカピカに磨いたのにと怒るスバルだが、千秋は気にする様子もなく、ボールを人差し指の上に乗せくるくると回してみせる。
「俺のボールだ、触ろうが抱きしめようが食べようが俺の自由だろう」
繰り返すが、このボールとは、スバルが磨いたボールである。なかなかの問題発言と言えるだろう。
スバルの少々きつい物言いも、すべて海のように広い心で包み込み許容する千秋。彼の懐の深さとスバルへの愛情には凄まじいものがある。
バスケ部の日常
ストーリー付きスカウトの真緒の☆3カードについてくるストーリーなのだが、もう彼に申し訳ないくらいただの千スバである。
「さぁ来い明星っ、この俺を倒してみろ! 挑んでこい、受け止めてやる! おまえのぜんぶを受け止めてやる......☆」
開幕早々の問題発言の後、千秋はさらに驚くべき行動に出る。
「逃げるな明星、男の子だろう!? 向かってこい、おまえのぜんぶを叩きつけてこい......☆」
「うおっ、俺もうボール持ってないのに何で追いかけてくんの!? うざいなぁああ!?」
ボールも何も持っていないスバルを、練習など関係なしに「(スバルいわく)マジな目つき」でひたすら追い回す千秋。追いかけられているスバルがただ立っていた翠に危うくぶつかりそうになるのだから、千秋の目には完全にスバルしか見えていないということである。
さらには千秋を変質者扱いしたスバルの台詞(当然である)に対し「誰が変質者だ明星っ」と怒ったような表情を見せたあと、千秋は笑顔でこの発言を繰り出す。
「だが許すぞ! なぜなら俺はおまえを愛しているからだ......☆」
「俺は愛してないんで近づかないでくださ〜い、しっし!」
熱烈な愛の告白をありがとうございました。
千秋の面倒見の良さは折り紙付きであるが、バスケ部内に限っては、千秋はほかの後輩、翠や真緒を置いて、明らかにスバルひとりに集中して構い倒している様子である。翠と真緒は、最初から最後まで千秋の暴走を当然のごとくスルーしていた。......これが......日常......?
なお、
「大丈夫だ! 売れ残っても俺が買い占めるっ、部屋中におまえたちの写真を飾って毎日のように眺めるとも!」
この千秋の台詞については、前後の文脈から言って真緒とスバル、『Trickstar』に所属する後輩ふたりの写真という意味なのだろうが、今までのやりとり、そしてこの千秋の発言に対してスバルが真っ先に反応したことを踏まえれば......いくらでも邪推は可能である。
スカウト! ドッグファイト
限定スカウトのストーリー。Twitterでの予告(☆5の千秋が左、☆4のスバルが右という、千スバの並びとして完璧な配置であった)の段階から死者が相次いだ。まさしく、千スバ史において屈指の伝説級スカウトである。千スバの並びにすると、お揃いのパイロット衣装に身を包んだ凛々しい表情のふたりがまるで恋人同士のように見つめ合う。最高。
ちなみにスバルのパイロット衣装には、某流星隊レッドを連想させる赤い星のアップリケがついている。
ストーリーはもはや説明するまでもなく、最初から最後までただの千スバである。
「あのひと、季節関係なく抱きついてくるからね。冬場は湯たんぽみたいでちょうどいいけど、夏場は暑いだけだもん」
辟易とした様子のスバルの発言。「湯たんぽ」という用途が明らかな具体名が出てきたあたり、例の「暖房器具」発言よりもある意味強烈といえる。
バスケ部員を集めるために、千秋が2-Aの教室にやって来て、わざわざスバルの席に座る。また、千秋が訪ねた順番はスバル→真緒→翠の順であり、教室の位置などの都合はあるだろうが、彼は真っ先にスバルの教室に来たということがわかる。
スバルの教室の中では、ふたりで特訓内容のメニューについて話し合ったり、千秋がいつものように抱きついてスバルに嫌がられたりと、微笑ましい様子が描かれた。
そのあとの体育館でのバスケ部の練習では、千秋はスバルとタッグを組み、ふたりで息を合わせて訓練に取り組む。
まず特筆すべきは、貴重すぎるスバルのデレ。
「べつに本気でち〜ちゃん部長が嫌なわけじゃないよ?」
「つまり、いまの俺はわりとち〜ちゃん部長と一緒に練習したいって気持ちになってるってこと」
今までの言動からして、露骨に嫌がるかと思いきや、スバルは千秋との練習に始終乗り気な様子であった。
練習が一区切りついたあと、飲み物を買ってきて、とスバルが千秋に頼む一場面がある。二つ返事で快諾する千秋だが、スバルは「使いっぱしりをさせるのは気が引けるよ」と一転、大人の気遣いを見せる。千秋の一方通行のように見えて、スバルからも千秋へときちんと矢印が向いていることがわかる。
ただし、(飲み物を買いに)「一緒に行くか」という千秋の提案に対しては、
「ち〜ちゃん部長とふたりきりは嫌だなぁ?」と拒絶。意識しすぎである。
部員四人が集まって子供の頃の将来の夢を語る場面では、千秋の話のあとで、スバルが以下のような発言をする。
「まぁ、パイロットだろうとヒーローだろうと、こっちが頼まなくても颯爽と現れて助けてくれそうだけど〜♪」
メインストーリーの例の部分を読了済みのユーザーにとっては、とんでもない破壊力の台詞である。スバルが千秋をヒーローと思っているらしいこと、「颯爽と」現れて「助けてくれる」という言い回し……この一言だけでも萌えは尽きることがない。
さて、時系列を元に戻すと、以上のように普段よりも好意的な態度のスバルに、千秋は大張り切りの様子で練習をスタートさせる。
「守沢先輩、嬉しそうですね……?」
「部長、スバルのことが大好きだから、相手にされて嬉しいんだろ。スバルも苦手だ〜って逃げ回ってるけど、嫌ってるわけじゃないし」
スバルと話す千秋を、少し離れて眺める翠と真緒の台詞。ふたりの仲はバスケ部公認であるらしい。
そのあと、ふたりは千秋の考えた練習方法を実践していく。千秋の投げるボールを持ち前の反射神経で尽く避け、スバルは見事、シュートを決めることに成功する。
「明星、俺を飛び越えて太陽になれ! 真っ赤に燃え盛る太陽こそ、おまえにふさわしい……☆」
......完全にふたりの世界であった。千秋も、その後の発言で「明星との練習に夢中で」「俺は明星に向かってボールを投げるのに集中していて」と繰り返すなど自覚がある様子。
そのあとの2on2でも、千秋&スバル、真緒&翠の組み合わせが採用された。千秋がシュートを決めると、
「やった〜、ち〜ちゃん部長やるじゃん!」
「うむ! やったぞ明星、さぁ勝利の抱擁を……☆」
「うわぁっ、そういう暑苦しいのはいらないってば! しっし!」
相変わらずのやり取りを繰り広げる。バカップルか。
練習が終わったあとの帰り道、校門前でも、スバルが千秋に抱きつかれそうになるのを予知して避けたり、千秋とスバルが真緒と転校生の周りをぐるぐる追いかけっこして駆け回ったりと、仲良くじゃれ合うふたりが見られる。
スカウト! サロン・ド・テ
限定スカウトのストーリー。スカウトではスバルは☆4、千秋は☆3のカードで登場した。千秋は才能開花後のカードイラストでスバルの淹れた珈琲のカップを持っていることに注目したい。
【ショコラフェス】とタイアップしたティーフェアの校内アルバイトに応募したスバル。ガーデンテラスで給仕をしていたところに、千秋が偶然客として訪れる。
「一時期校内アルバイトに精を出していたようだが、『Trickstar』の活動が忙しくなってやらなくなっただろう」
「えっ、何で知ってるの? 俺の動向をいちいち把握しないでよ~」
千秋はスバルの動向を把握しているらしい。スバルが『独り』でなくなってからも、いつでも彼を見守っているということか。
「ティーセットはフォンダンショコラに飲み物がつくんだけど」
「うむ、よく知らんが食べてみたいぞ。飲み物は......そうだな。明星に任せる!」
まさかのお任せ。以前から明らかなことではあるがこの男、スバルのことが大好きである。
結局スバルは珈琲を選び、砂糖とミルクも一緒に千秋の元へと持っていった。
「あ、珈琲はいれたてで熱いから火傷しないように気をつけてね。俺がふ~ふ~って冷ましてあげようか、あはははは☆」
彼女か。
スバルの貴重なデレ(?)にも反応せず、珈琲を前にした千秋は渋面で黙り込むのみ。しばらくしてから、自分が子供舌で、珈琲が苦手だということを明かした。
「しかし、明星のいれてくれた珈琲だ。ただの珈琲ではない!」
「砂糖をどばっといれて、ミルクもたっぷりいれれば飲める! 飲んでみせる......!」
彼氏か。
スバルのためならば、苦手なものさえ克服せんとする千秋。砂糖とミルクを手にブラック珈琲と格闘する彼はかわいらしいものの、そういうところは潔く男らしいと言える。
「でも、念のために砂糖とミルクを持ってきて良かったよ。ち~ちゃん先輩って子供っぽ~い」
「う、うむ。否定できんな、情けない部長ですまん」
「んもう、情けないなんて言ってないじゃん。別にいいんじゃない、俺もブラック珈琲はそんなに好きじゃないし......ミルクをいれたほうが優しい味がするもんね」
カップルか。
スバルは「情けないなんて言ってない」「別にいいんじゃない」と自分の台詞に落ち込む千秋を肯定し、打って変わった優しい言葉を掛けた。
「ち~ちゃん先輩、まだ珈琲と格闘してたの~? どうりで静かだと思った」
「無理して飲まなくていいって言ったのに~?」
「う、うむ。もうすこしで飲めそうなんだ! 俺は必ず明星のいれた珈琲を飲みきってみせる!」
何度でも言うがこの男、スバルのことが好きすぎである。
他のメンバーと一緒にテーブルを囲むという話になったときには、千秋はちゃっかり「明星も俺の隣にこいっ☆」とスバルを誘ったものの、「遠慮しておきま~す」とつれなくかわされてしまった。
「よぉしよし♪」と千秋が創を撫でようとしたときには、「ちょっと、しののんに気安く触んないで~」とスバルがふたりの間に割り込む。
「ち~ちゃん先輩てば隙あらばすぐ抱きついてくるし撫でようとしてくるんだから~」
事実を述べて文句を言っているだけであるにもかかわらず、だんだん惚気に思えてくるのが不思議である。
「ふふ、心配しなくても大丈夫ですよ。明星先輩と守沢先輩はとっても仲が良くて羨ましいです」
「ぼくもいつか守沢先輩みたいに、明星先輩が言いたいことを気軽に言えるような関係になりたいです」
「んもう、しののんはしののんでち~ちゃん先輩はち~ちゃん先輩でしょ」
創の台詞を否定しないスバル。千秋の愛情は、けっして一方通行ではないのである。
お化けがいっぱい スイートハロウィン
『流星隊』と『Ra*bits』(※「*」が正しく入力できないためこのように表記)による合同イベント。【ハロウィンパーティ】を前にしたある日、考え事をしながら廊下を歩いていた千秋と一年生の紫之創がぶつかってしまう。そのとき持っていた書類を創が落としてしまい、千秋は迷わずにそれを拾い集めようとした。自分で拾うと恐縮する創に、
「そうはいかない! 拾わせてくれっ、俺の気が済まない!」
「たしかおまえは『Ra*bits』の紫之くん……だったな、明星のお気に入りの子だろう?」
「そんな子に迷惑をかけたと知られたら、俺はたぶん明星に三ヶ月ぐらい口をきいてもらえなくなる! 前に同じようなことがあったんだ!」
「つまり、これは明星に嫌われたくないという俺の我が侭で、自己満足だ!」
「紫之くんには迷惑かもしれないが、どうか書類を拾わせてほしい……!」
千秋は彼ら二人を繋げる人物であるスバルのことを話題に出して、このように話した。何とも千秋らしい理屈である。
それを聞いた創は、おかしそうに笑った。
「……ふふっ♪」
「えっ、何で笑ったんだ? 俺はまた変なことを言ってしまっただろうか!?」
「いえ、すみません……。守沢先輩って、明星先輩から聞いていたとおりのひとですね」
「おっ、明星が俺の話をしていたのか? そうかそうか、たまに季節の変わり目とかに『くしゃみ』がでたのは明星のせいだったんだな!」
予想外の創の反応に驚いていた千秋だが、スバルが自分のことを話していたと知ると嬉しげに笑う。
「明星先輩、守沢先輩のことを本当によく話すんですよ」
「いつも暑苦しくて、ウザいとか……。あぁいや、口にしづらいことを言うんですけど」
「そうか……。うん、そうだろうな。かなしい」
いつもスバルが直接言ってくることだが、自分のいないところでも同じことを話していると聞いてしょんぼりした様子の千秋。しかし創は穏やかに次の言葉を続け、スバルの真実を語った。
「でも、守沢先輩のことを話してるときの明星先輩はいつも優しい顔をしてますし……」
「最後には必ず、嬉しそうに『ち〜ちゃん先輩はヒーローなんだよ』って言いますよ」
自分をかわいがってくる千秋に対して刺々しい態度をとるスバルの本心は、ここまでほとんど表に出てくることはなかった。「ち〜ちゃん先輩はヒーローなんだよ」というスバルの台詞は、【DDD】での一件はもちろんのこと、おそらくそれ以前からずっと積み重ねられてきた……自分を救ってくれた先輩に対する、溢れるばかりの感謝と敬愛を感じさせる。
スバルは千秋と会うたびに辛辣な台詞をぶつけてくるものの、本当は千秋を深く尊敬している。信用している仲のいい後輩に、繰り返しそんなことを話してしまうくらい、本当に千秋のことが大好きなのだ。
【ハロウィンパーティ】本番のライブでは、創は調子を取り戻した様子の千秋を見て、こう心のなかで呟き、安心したように微笑む。
(とくに守沢先輩、ずっと溜息ばっかりだったから心配でしたけど)
(さすがは明星先輩の尊敬してるひとです、あっさり悩みを解決して元気になっちゃったみたい……♪)
このイベントストーリーでの千秋と創の会話は、【ショコラフェス】の時期、サロン・ド・テのストーリーで、創が口にした千秋とスバルの関係についての台詞の内容につながっている。
奇跡 決勝戦のウィンターライブ
『SS』を直前に控えたスバルは、体育館にて、千秋と二人でバスケの自主練習に励んでいた。
同じ『Trickstar』の真と真緒が『Eden』と戦うというニュースを千秋から聞いたスバルは、彼の持っていたスマホを平然と使い始める。
「おお? 明星、当たり前のように俺のスマホを取り上げて使ってるな……?」
「ふふん♪ ち〜ちゃん先輩のものは俺のもの、俺のものは俺のもの!」
「こいつぅ♪ いいけどなっ、ちゃんと『借りるよ』ぐらいは言ってほしい! 親しき仲にも礼儀ありっ、壁に耳あり障子に目あり!」
「おまえは我が校の代表だ。誰に見られているかわからんし、いちおう言動には気をつけたほうがいい」
「ういうい。わかってま〜す、意外と隙あらば説教するよね、ち〜ちゃん先輩」
ふざけた調子でスバルに合わせながらも、後半では先輩らしく、しっかりと釘を刺す千秋。こういった面で危なっかしいところのあるスバルのためを思っての台詞である。
千秋は自分自身の話を交えながら、アイドルとしての最大の舞台に挑む後輩を激励した。
「おまえなら、俺よりもっと上手に……。というのは表現が悪いな、奇跡的に、万事解決していけるだろう」
「がんばれ主人公! 努力・友情・勝利だ!」
「中身があるようでないようなことばかり言うなぁ……。ち〜ちゃん先輩の場合は、無駄に実感がこもってるから説得力があるけどね」
「ふはは! 失敗ばかりの人生だからな! だが涙の数だけ強くなれるし、振り向かないのが若さだ!」
スバルは「主人公」などと呼ばれ過剰に持ち上げられることに、複雑な気持ちもある様子。しかし、千秋の言葉の重みはちがう。おそらく二年間、同じ部活で千秋を見てきて、彼が太陽のような笑顔の下で、相当の苦労をしていたことをよく知っているからなのだろう。
千秋は自身も経験した冬の時代のことを語り、その状況を打破した革命児の中心人物であるスバルに、感謝の言葉を贈る。
「親しく仲間たちと騒ぎ、笑いあい、未来を夢想できる……。こんな時代になるとは思わなかったし、昔より今のほうがずっと良い」
「ありがとう明星、おまえたちが変えてくれたんだ」
スバルが最後まで心を折らずに前を向き、仲間たちとともに革命を成し遂げられたのは、そう言う千秋の助けがあったからこそだ。千秋が孤独に沈むスバルの心を暗闇から救い、再び立ち上がらせ、そのスバルを信じて『fine』との戦いに身を投げたから……そしてそのほかの要因がいくつも重なり合って、スバルたちの革命は、奇跡的に成功したのである。
スバルから突然勢いよくボールを投げつけられ、驚きながらもしっかりと受け取った千秋を見て、スバルは彼の注意にも悪びれずにこのように言った。
「ユニフォームを着てるときのち〜ちゃん先輩は、背中にも目ぇついてる感じで視界が広いしね」
「不意打ちでボールを投げつけても、しっかり受け取ってくれるじゃん」
「ふふん、気づいたか明星! それが守沢千秋バスケットフォームに隠された四十四種類の秘密のひとつ……☆」
千秋ならば、自分をしっかりと受け止めてくれる。アイドルでもバスケでも超越的な天才のスバルが、自然にそう言える相手はそうそういない。この何気ない台詞には、スバルの千秋への強い信頼感が見えるように思われる。「バスケ部の日常」で、千秋はぶっ飛んだテンションで「挑んでこい、受け止めてやる! おまえのぜんぶを受け止めてやる……☆」と言っているが、このスバルに向かって堂々とそのようなことを言えるのも、そして実際にスバルのボールを受け止めることができると証明しているのも、千秋のすごいところである。
スバルの言葉に、千秋は嬉しそうに反応を示した。
「衣装を変えれば、心構えも変わる。気持ちが変われば性能も、出力も変わってくる」
「ヒーローはヒーローとして生まれるんじゃない、ヒーローになるんだ」
「そう呼ばれつづけ、それに相応しくあろうと努力しつづけることで、きっといつの日にか本物になれる」
「俺は、そう信じている」
スバルの台詞をきっかけに、彼自身のヒーロー論と信念について、熱く語る千秋。スバルはそれを聞いた後、ぽつりと呟いた。
「……ち〜ちゃん先輩は、俺にとっては出会ったころからずっと本物のヒーローだよ」
千秋が何と言ったのか聞き返すも、スバルは強引にプレイを再開させる。千秋からパスを受け取って、鮮やかにダンクを決めた。スバルの☆5カードの開花前にあたるイラストの場面である。
「ナイスパス♪ 明星選手、守沢選手からパスを受け取りあっという間にゴール前へ! 大逆転の、ダンクシュート☆」
「おぉ? いつの間にダンクができるようになったんだ、明星?」
「あはは、いつの間にかね! ち〜ちゃん先輩ごときにできることが、俺にできないのはおかしいと思って練習した!」
「見た見た? 綺麗に決まったよ〜☆」
「うむ! 見事だ明星っ、もうおまえに教えることは何もないな……よぉしよしよし♪」
「見た見た?」という自慢げな台詞からは、千秋に褒めてもらいたいというスバルの本音が窺える。千秋と同じことができるようになりたくて、そしてその成果を千秋に見てもらいたくて、こっそりと練習をしていたのだろうか。
「普通にバスケに専念していれば、一流選手になれたかもしれないのに。それでも、おまえはアイドルになりたいんだな?」
「うん。バスケも好きだけどね〜、やっぱりアイドルは子供のころからの夢だから」
「バスケ部は高校に入って、ち〜ちゃん先輩に誘われて始めたし」
春待ち桜で、一年生の春の時期のスバルがすでにバスケ部に誘われていると言っていたのは、このことを指す。スバルをバスケ部に招いたのは、千秋だった。これも初めての情報。
「あはは。おまえはめきめき成長するので、こっちでも天下を取れるんじゃないか〜ってバスケ部の部長としては欲張ってしまうけどな」
「まずはアイドルとして、天下を取ってこい。その座に手を届かせられる権利を得るものは、百万人にひとりという狭き門だ」
「代われるものなら代わりたいが、おまえがやるしかない。がんばれ明星、『Trickstar』……。夢を叶えて帰ってこい」
「もちろん。見ててよ、ち〜ちゃん先輩」
高校生の先輩後輩、かつ男の子らしいやり取り。勇ましくこたえた後輩に、千秋は快活に笑ってこうも告げる。
「うむ! 困ったことがあったら俺を呼べっ、空気を読まずに助けに行くぞ☆」
「うん。信じてる。いつでも、ち〜ちゃん先輩は助けてほしいときに駆けつけてくれるから」
「ち〜ちゃん先輩はいつでも、どんなときでも誰に対しても問答無用で助けに行ってるんだよね」
「ふはは、いちいち相手の都合を考えていたら間に合わないこともあるしな」
「それで誰かの不幸を見過ごしてしまうなら、俺がうざがられるくらいどうということはない」
「かぁっこいい。だから好きだし本物のヒーローだと思うよ、ち〜ちゃん先輩は」
スバルの鋭い指摘を、千秋は笑って肯定する。そしてスバルは穏やかに微笑み、自身の過去、彼らの関係の始まりを振り返りながら、千秋に感謝の言葉を述べた。
「ありがとね。むかぁし、孤立してた俺を助けてくれて。ち〜ちゃん先輩には何の得もなかったのにね……」
「こんなひともいるんだ、って感激したし嬉しかったよ」
「あの日、声をかけてくれてありがとう。俺をバスケ部に入れて、毎日のように一緒に部活をしようって誘いにきてくれて……」
「それだけで俺、すっごく楽になった」
「幸せになった。ちゃんと青春を満喫できた。嫌になって逃げださずに、今、こうして大舞台に立つ権利まで得たんだ」
「感謝してる。見返りを求めないのがヒーローなんだろうけど、ありがとうって言わせて」
千秋は、いちばん苦しんでいたときのスバルを救ってくれたひとだった。スバルがこれまで心折れずにいられたのは、今、仲間と笑って過ごせる幸せな日々を手に入れられたのは、元をたどれば、千秋の言葉のおかげだったのだ。
素直にスバルの本心を伝えられた千秋は、「えっ、どうした明星。お嫁に行っちゃうみたいな物言いだぞ……。寂しい」と戸惑いの表情を見せた後、このように言う。
「そう恩に着る必要はない、当然のことをしたまでだ。一年生のころ、おまえは友達がいないっぽくて寂しそうにしていたからな」
「あぁ可哀想だなって思って、声をかけただけだ。他意はないし、べつにおまえは特別じゃない」
「おまえじゃなくても、誰に対しても俺はそうした」
「この野郎……。でもまぁ、そのぐらいのほうが気楽だよ」
千秋の返答を、悪態をつきつつも元からわかっていたように、スバルは受け止める。そして、さらに感謝の言葉を重ねた。
「『あの明星』の息子だとか、天才だとか主人公だとか、過剰に持ち上げられてばっかりだけど」
「友達がいなくて寂しかった俺も俺だし、ち〜ちゃん先輩がそんな俺を助けてくれたんだ」
「だからさ、ほんとに……何度も言うけどありがとう」
千秋はかつて、『明星』の名を持つ異端の天才ではなく、独りぼっちで俯いていた可哀想な寂しがりの男の子に対して、自分と一緒にバスケをしようと当たり前のように手を差し伸べた。明星明星、と何度も声を出して呼ぶのに、彼の父親のことはまったく意識せず、ただのひとりのかわいい後輩として、抱き寄せて冷えた体を温めて、スバルそのものの輝きを愛でてくれた。千秋の裏のない優しさに、家族のような、あたたかい本物の愛情を感じて、スバルは彼のことを慕うようになったのだろう。ヒーローを目指していた千秋の裏のない言葉は、スバルにとって、絶望に満ちた世界に差し込んだ一筋の救いの光だったのだ。
「俺、きっと勝ってくるよ。勝って笑って、幸せになるね」
「明星〜! やっぱりお嫁に行っちゃうみたいだぞ! お父さんは寂しいです!」
「どうして寂しがるの〜、幸せになるって言ってるんだから祝福してくれる?」
「ううん。子供の成長を喜んでよ、父さん」
【DDD】のときと同じように、自分を助けてくれた千秋に感謝して、彼のおかげで出会えた頼もしい仲間と一緒に、アイドルとして勝利する。彼のおかげで諦めずにいられた夢を、笑顔で叶え、幸せになる。それが、自分の愛するヒーローへの、スバルなりの恩の返し方なのだ。
スバルは最後に、千秋のことを「父さん」と呼ぶ。千秋は以前、「もっと兄のように父のように俺のことを慕ってほしい、愛してほしい!」とスバルに主張していて、(メインストーリー92話「孤独」)いつもどこか父親を思わせるような態度でスバルをかわいがっていた。(参考:「父さんも嬉しそうに、そんな俺を抱っこしてぐるぐる回転してた」(SS「友情」第17話)と「そのまま決して軽くはないだろうスバルくんを抱き寄せて、ぐるぐる回転し始めてしまった」(小説3巻)という千秋の描写の類似のほか、「強く成長した息子が里帰りをして、かつては届かなかった高いところにある何かを取ってきてもらった、老いた父親のように。誇らしくて堪らない、みたいな態度だ」(同じく小説3巻)のような千秋の表現がある)
誰から何と言われようと、彼の父親はスバルにとって、永遠の憧れで、他に代わりのいない、たったひとりの大好きなひとだ。ふざけてでも、このような場面で軽々しく口にできる呼び名ではないだろう。しかしこのとき、スバルは孤独に沈んでいた自分を見つけ出し、太陽のような光で照らして、たっぷりの愛をこめて育ててくれた千秋のことをそのように呼んだ。スバルにとってはこれ以上ない、最上級の愛情の表し方だと言えるだろう。