概要
1959年に特別料金を徴収しない一般列車用として戦後初めて冷房装置を搭載した車両として登場。
この車両で得られたノウハウを元に7000系パノラマカーが誕生し、長きに渡って優等列車運用に用いられた他、時にはパノラマカーの代車を務める事もあった。
スペック
5500系は4両編成と2両編成合わせて30両が製造され、以下の2形式の全電動車編成となっていた。
- モ5500
運転台を持つ制御電動車
- モ5550
運転台を持たない中間電動車
車体
全長18m給、車体幅2.74mの全金属車体で、運転台フロントガラスが平面ガラスを組み合わせたパノラミックウィンドウであること、前面貫通路に引き込み式の貫通幌を設けるなど先に登場していた5200系に近いデザインとなっているが屋根の高さが冷房装置の搭載を前提にしてやや低くなっている。
この他側面ガラスが5200系の1段下降窓から2段窓に変更されている。
内装
戸袋窓部分がロングシートである他は全て転換クロスシートを配置。
主要機器
この時代としては標準の抵抗制御を採用。ただ冷房装置は大量の電力を消費するため、大容量の電源を必要とする。この電源ユニットを搭載するスペースを捻出するため、東芝とゼネラル・エレクトリックの技術提携によって開発された主制御装置・主抵抗器・送風機を1つの箱にまとめたパッケージ型制御装置を採用。
1基の主制御装置で8基のモーターを制御する1C8M方式で、パノラマカーも共通の機器を搭載している。
主電動機は出力75kwのTDK-825A形を搭載し、中空軸平行カルダン駆動を採用する。ブレーキは発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキを搭載。
台車はウイングバネ式コイルばね台車のFS326形。
冷房装置は満員状態を考慮して、冷房能力や換気に注意をはらい、東芝製の空冷式天井型ユニットクーラーのTAC-153形を搭載。1基あたり4,500kcal/hの能力を持つ。
冷房装置などに電力を供給する補助電源装置は出力60kVAのCLG-326-D形を装備する。
運用
1959年4月に第1次車16両が就役し、名古屋本線の特急列車を中心に運用を開始。12月には2次車14両が就役したことで特急列車全列車の冷房化を達成。従来特急運用に入っていた5000・5200系は急行運用へと回った。
特急運用は2両と4両を組み合わせた6両編成を基本とし、運転台同士が向き合う部分も貫通幌が接続されて走行中も車内から行き来することができた。
7000系パノラマカーの就役後は特急運用をパノラマカーへと譲り、特急運用は季節臨時列車程度になった。しかし当時は踏切事故が非常に多く、パノラマカーが踏切事故で被災し修理入りしている間の代車として5500系が使用されることも多かった。
この代車は基本的に5500系2両編成とパノラマカーを組み合わせていたが、時にはモ5500単独にパノラマカーを組み合わせることもあった。
1964年2月、名古屋本線須ヶ口駅隣接の新川工場で火災が発生。入場中だったモ5509が焼損したため新たに高運転台の車体を製造して修理復旧させた。
1979年ごろから正面貫通幌の撤去、前照灯のシールドビーム化が行われ、1980年より特別整備を開始。1983年までに完了させている。
5500系の特別整備完了と同時にパノラマカーの特別整備が始まり、パノラマカー先頭車が整備入場中はモ5519・5520を代わりに連結して運用させていた。
1990年代以降VVVF制御車の増備でローカル線運用がメインとなり、特別整備未施工の7000・7500系の廃車が優先された関係で大きな動きはなかったが、2000年の東海豪雨で5505編成が新川検車区で浸水。修理困難と判断されて廃車となったのを皮切りに淘汰が始まり、2002年までに5513・5515・5517の3編成を残して廃車が推し進められた。
残存した3編成は2003年夏に「甦る5500系」イベントの一環で5513編成はストロークリームに赤帯、5515編成はスカーレットに白帯、5517編成はライトピンクとダークマルーンのチョコツートンに復刻され、定期運用から団体列車まで広く使われたが2005年1月の空港線開業に伴うダイヤ改正で運用を離脱。2月で廃車となった。
廃車後、モ5517の前頭部のみが舞木検査場に保存された他はすべて小牧線間内駅隣接の解体場で解体処分された。
