概要
名古屋鉄道が保有・運用していた、全金属製車体・カルダン駆動・発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキを備えた車両群のこと。「SR」はスーパーロマンスカーの略称である。
1955年に登場した5000系(初代)からパノラマカーこと7000系、初の3扉通勤車6000系、地下鉄乗り入れ車両100系、パノラマsuperこと1000系などが該当する。3500系(2代目)以降はVVVF制御車となりカルダン駆動のSR車の新造はされなくなったが、1380系など機器流用車の製造は続いた。最後のSR車となったのは1000系の機器を流用した2008年登場の5000系(2代目)であり、5000系で始まり5000系で終わるグループとなった。
定義
SR車の定義は時代とともに揺れ動いており、初めて言及されたのはAL車(吊り掛け駆動車)の3850系であった。当時は単に新型特急車の意味合いで付けられており、現在の「SR車=高性能電車」という定義になってからはAL車の3850系や3900系についてはOR車(オールドロマンスカー)と呼ばれている。またVVVF制御車が対象外となったのも同制御方式の車両形式が増えてからで、初のVVVF車両である3500系(2代目)登場当時は同形式もSR車のグループとして扱われていた。
SR車の原義では6000系列などの3扉通勤車両やパノラマsuperなどの特急車両も該当するが、鉄道ファンの間では「転換クロスシート、片側2ドア車の一般車両」を狭義のSR車(2扉SR車)とし、それ以外と区別する向きもある。鉄道ファンの会話で「SR車」という言葉が出た時に指す車両はだいたい以下に解説する5000番台、7000番台の車両であり、6000系列は6000の「6」とSR車の「R」を組み合わせた「6R」と呼ぶことが多い(これに倣いSR車でない3000系列のVVVF車にも「3R」という通称が付けられている)。
以下、この記事では狭義のSR車について解説する。
5000系(初代)
1955年登場。名鉄では初となるカルダン駆動を本格採用した車両で、4両編成で登場し後年中間車2両を組み込んで6両化されるも、5200系に中間車を譲ってすぐに4両に戻された。車体はセミモノコック構造を採用した軽量構造で、先頭部は当時流行の国鉄80系に似た非貫通2枚窓である。このデザインは長野電鉄の2000系にも採用された。
冷房装置はなく、後年冷房化をしようにも軽量構造が災いして車体が冷房装置の設置に耐えられない上、雨漏りするほど車体の腐食が進んでいたことから機器類を5300系に譲って全車両が廃車された。
5200系
1957年登場。5000系をベースに先頭部に貫通路を設置した車両。2両編成で登場したが、後年5000系から中間車2両を転用して4両化。側面窓は下降式1段窓だが、防水がしっかりしていなかったため腐食が酷く、特別整備時に2段式ユニット窓に改造されたが、車体の軽量構造が災いし名鉄では冷房化が出来ないと判断され、機器類を5300系に譲って廃車。
が、車体については豊橋鉄道のほうで再利用されることになり、国鉄101系・111系用の機器類(廃車発生品)を架線電圧600V用に調整、さらには軽量な路面電車用冷房装置を搭載することで冷房化して「豊橋鉄道1900系」として竣工。1986年7月より運行を開始し、渥美線の架線電圧が1500Vに昇圧される1997年7月まで使われた。
5500系
1959年登場。5200系の車体をベースに側面窓を2段式窓に変更。特別料金を徴収しない列車に使用される列車としては初めて冷房装置を装備した車両である。冷房装置用電源を搭載するスペースを確保するため、主制御器・主抵抗器・送風機を一つの箱に収めたパッケージコントローラーを採用している。
冷房装置を搭載していることから、7000系パノラマカーの登場後も優等列車に長きにわたって使用された。また7000系の先頭車が使用不能になった際には代替車として連結されたこともある。
2000年9月に発生した東海豪雨で新川検車区に留置されていた5505編成が浸水によって致命的なダメージを負い廃車。以後竹鼻線の一部廃止、小牧線への300系投入により余剰車が発生し、3編成を残して廃車。残った3編成も2005年に廃車となった。
なお東海豪雨発生前の名鉄の車両置き換え計画ではパノラマカーを全廃してから5500系を全廃する計画だったという逸話が存在する。
7000系
おなじみ「パノラマカー」。1961年に登場し名鉄を代表する車両となった。増備期間が1961年から1975年に渡り、数多くのバリエーションと派生系列を生んだ。
M式自動解結装置の設置、特急運用向け改造(座席指定車としての整備、通称白帯車)などが行われ、特急から普通列車まで幅広く運用されたが老朽化には勝てず2008年に定期列車運用から引退。2009年に最後まで残った7011編成が廃車となって形式消滅した。
7500系
7000系の改良型「パノラマカー」。回生ブレーキ、定速度制御の採用、低床化などの改良が施された。基本6両固定編成だが、一時付随車1両を組み込んだ7両編成や、付随車電装のうえでさらに電動車1両を追加した8両編成も組まれた。
制御シークエンスが他のSR車と大きく異なるために連結運用ができず、低床化も当時プラットホーム高さが低い駅が多かった頃は良かったものの、近年のバリアフリー基準に合わせて嵩上げを行う際の障害となったことから2005年までに残存していた全車両が廃車となった。一部の編成は機器流用で1030系となったが、こちらも2019年までに全廃。
7700系
7000系をベースに支線直通列車への運用をしやすくするため平屋車体を採用した車両。4両編成と2両編成が存在したが、特急運用向け改造の際2両固定編成に揃えられ、4両編成の中間車は全て7000系に組み込まれた。
この2両固定編成は三河線でのワンマン運転開始の際、専用車としてワンマン化改造が行われ、ほぼ三河線に封じ込められた形で運用されていた。7000系パノラマカーよりも1年長く生き延び2010年に引退。
7100系
7000系の最終増備車「モ7050形7100番台」に由来する系列。7000系の編成組み換えの際、余った中間車のうち7101・7104号車に6000系に準じた貫通式運転台を取り付け、7101~7104号車の4両で1984年に組成された。
中間車7102・7103号車は再度の編成組み換えで7000系の編成に戻され2両編成となり、三河線でのワンマン運転開始の際7700系と同様にワンマン化改造が行われた(7700系と共通運用)。2009年廃車。
5700系・5300系
1986年登場。当時の本線急行列車のサービス向上を目的にしており、この車両群は特に「NSR車(ニュー・スーパーロマンスカー)」と呼ばれていた。パノラマカーのような2階運転台ではない平屋車体だが前面展望に配慮し、助士席側の正面窓を拡大、乗務員室後部の窓も大きくとっている。
「SR車」として最後のグループであったが、一般車をすべて3ドアに統一する方向性となり2019年までに5700系・5300系が全車退役。こうして名鉄の2扉クロスシート一般車の歴史は終焉を迎えた。
関連項目
広義のSR車に該当する車両
1000系、1200系、1030系、1230系、1800系、1850系、1380系
過去の定義でSR車に含まれていた車両
現在はAL車に分類されOR車と呼ばれる車両
現在はVVVF制御車のグループに属する車両
3500系(2代目)