概要
基本ルール
帝愛の地下帝国で行われる賭博。考案者はE班の班長である大槻。参加料は300ペリカ。
大まかな内容は通常のチンチロリンと同様で、お椀の中に三つのサイコロを振り、出た目の強弱で勝敗を決める簡単なゲーム。
もし出た目が2,2,4だったら、この場合4が目になる。
目の強弱
456(シゴロ)が2倍づけ、2~6のゾロ目が3倍づけ、1ゾロ(ピンゾロ)が5倍づけ。
負の役目は123(ヒフミ)が2倍払い。
ちなみに、通常はヒフミに対しシゴロ以上の目が出た場合は賭け倍率は累乗される(例えば2倍づけのシゴロを出されると倍の4倍払いになる)。現実ではローカルルールで累乗無しの場合があるが、この地下チンチロでは作中で実際のケースや言及が無いため不明。
特殊ルール
- 親の総取り、総払いなし。通常のチンチロは親がゾロ目・456・6の目の強い役、逆に123・目なし・1の目=弱い役とションベン(振ったサイコロが一つでもお椀から溢れる)を出した時点で、子はサイコロを振らずに勝負が確定する。この関係で、本来であれば出した時点で等倍払いの即負けになるションベンは目なし扱いとなる。
- 順番が回ってきても親は必ず受ける必要はなくスルーできる。
- 親は2回強制。ただし、1投目に1以下の目(123・目無し)またはションベンを出したらその時点で親は終わり。逆に言えば、それらが出なければ必ず親を2回続けねばならない。
- 賭け金の上限は20,000ペリカ(2,000円)。ただし親との同意があれば、青天井にすることができる。
これらは大槻曰く「みんなには地下でゆるゆる長く楽しむため」とのこと。
……が、実はとんでもない事が隠されていたのである。
地下チンチロリンの秘密
確かにゆるゆる楽しむのは間違いないのだが、とあるカラクリが仕込まれていた。
なんとあるタイミングになると班長一味の勝率が高くなるのである。
それもそのはず密かに特殊なサイコロこと「四五六賽」なるものを使っていたからである。
「四五六賽」とはかつて大槻がカイジが来る1年前に二度の一日外出券を使って地上に出た際にオーダーメイドで作らせた六面体に「四」「五」「六」しかない特殊なサイコロであり、通常の出目の最低数が「一」なのに対して「四五六賽」は出目の最低数が「四」。
しかも、ヒフミが出ないどころかションベンにならなければ目なしが一切出ないため必ず役が成立する上に、四五六・四ゾロ・五ゾロ・六ゾロが出る確率が異常に高いシロモノである。
また、勝率が大幅に高くなるものの100%ではなく、初戦のカイジの様に相手側が勝つ事もあり、これも後述の四五六賽隠蔽に一役買っている。この点はカイジ曰く「四五六賽の持つ性質(タチ)の悪さ」と評している。
大槻らはここぞという時に使用して、その際には石和・大槻が四五六賽を使い、最後の沼川が四五六賽を通常のサイコロにすり替える回収役となり、参加者達のなけなしのペリカをじわじわと掠めとっていたのである。また、親番のスルー制や賭け金の上限を設けたのも「そうしないと親がもたない」と一見はゆるゆる楽しむための納得の出来る理由であるが、これは回収役であるが故に四五六賽を使えない沼川の救済措置にもなっている。沼川だけが青天井を断っていたのと、それをカイジが事前に確認を取っていたのはそのためであった。
そして上のチンチロルールはそのほとんどが四五六賽を隠蔽するための隠れ蓑となっている。
総取り廃止は速やか且つ自然に賽を回収するため、親番の上限は四五六賽の使い過ぎを自制するため、1ゾロの5倍付けは他のゾロ目や四五六の価値を下げ、四五六賽で出した際のインパクトを誤魔化すためであった。(ただし最後のルールはカイジに逆手に取られるのだが)
これに気付いたのは45組の一人、三好がメモしていたこれまでの地下チンチロリンの出目と班長一味の並び順を見たカイジである。最初はわからなかったが、サイコロの特徴から推測してイカサマ賽への疑惑を持っていたが確信にまでは至らなかった。そこで45組と結託し、資金の節約、大槻に露骨な反抗(ビールを顔にかける、給料を乱暴な態度で受け取る)、大槻らのいじめから辛酸を舐める雌伏の日々の中、ある物を作り大槻との決戦に備えていたのだった。
そして大槻とのチンチロ勝負で彼の猜疑心を煽り、いよいよ彼が「四五六賽」を椀に投入したその瞬間にカイジは椀ごと奪い取る。この光景は一大事となり大槻は秘密がバレる事に焦りカイジから四五六賽を奪い返そうとするも、カイジが沼川をぶっ飛ばしたり、指をかじって妨害し、手間取っているうちにC班の班長である小田切やD班を除いた他の班の班長が中立としてサイコロの確認を申し出たことで失敗。こうして大槻一味の悪事が白日の下に晒される事となった。それでも大槻は「使ったのは初めて」「イカサマするなら一回目だろ」と言い訳するも、カイジの立証と三好のメモで、今回だけでなく、過去にも故意にイカサマした事を暴かれる。
当然、チンチロリンでペリカを取られてきた者達からは非難轟々、暴動寸前にまで発展した。おまけに当の大槻は椀(どんぶり)をとったあの時はサイコロがまだ回っていたから目が出ていないからこの勝負は成立していないと言い出し、その場にいる全員にノーカウントコールをさせるためノーカウント(アニメ版ではノーカン)を連呼する始末。当然賛同するわけもなくさらに怒りを買った
…しかし、カイジは「一理ある」として続行を提案。ペナルティとして、
- 1回目の大槻側の出目を「四」で固定
- お互い前もって用意した特殊賽を使う
- 用意した特殊賽を仲間内でのみ回して使う
というルールでの勝負を要求する。
大槻はこのルールに対し苦渋の(フリをした)承諾をした。
この時大槻は特殊賽が散々使ってきた四五六賽であると思っていた。もしも他の地下住人達からも過去に遡っての返済をしろと言われれば自身の全財産以上を支払う事も考えられたが、とにかく続行ともなれば一先ず支払先はカイジ達のみに絞られ、仮にカイジ達全員が勝ったとしても張った額の2~3倍程度の支払いで済み、その後は口八丁手八丁で有耶無耶にしてしまえばいいと考えたからだった。
…が、カイジは再開第一投で四五六賽を使わず、ある特殊賽を使ってきたのである。
カイジ「食らえ……!因果応報っ……!天誅っ……!これがおまえのイカサマの報いだ……!」
大槻が椀を見ると、そこには3つのサイコロが六面全部ピン(1)の光景が。
そう、カイジが使ってきたのは絶対に目なしが出ない上に最低の「一」が無敵になるサイコロ・「ピンゾロ賽」である。
このピンゾロ賽は、大槻がカイジたちへの当て擦りの一環でこれ見よがしに食べていたTボーンステーキの骨をカイジがゴミ箱からこっそり回収してトイレで少しずつサイコロ状に削り加工したもので、この日のために作り上げた秘密兵器である。
ちなみに賽の目の一はカイジが自分の血を塗料代わりに塗り固めて色付けしている。
サイコロの面全てが「一」であるためピンゾロが必ず出る、すなわち(ションベンにならなければ)絶対に勝てる上に5倍づけ確定、稀に負ける上に最高でも3倍づけまでな四五六賽よりも恐ろしいサイコロである。この奇抜極まりない特殊賽に当然大槻は激怒するが、カイジは
- お互い前もって用意した特殊賽を使う(=どんな特殊賽を使うのかの確認を怠った)
- 用意した特殊賽を仲間内でのみ回して使う(=大槻達はピンゾロ賽を使えない)
という2つ条件を大槻が承諾した事を追求。それを場にいた小田切や周囲の労働者も確認していた事で周りを味方につけ、大槻の反論を一蹴した。(というかそれ以前に大槻は散々イカサマサイコロを使ってきたので人のことを言える立場ではない)
あと一歩で目標金額の2000万ペリカに到達寸前で5倍づけの多額の払いを行うことになった大槻は憔悴したまま「今日はもう休ませてもらう」とその場を離れようとするが……
カイジは更にここで
- 1回目の大槻側の出目を「四」で固定(=ションベンや目無しではないため大槻は2回親をやらなければならない)
という条件を大槻が飲んでいる事を突き付け、当然1回目と全く同じ条件で2回目の勝負をする事を大槻に迫った。挙句の果てに視察に来ていた帝愛のNo.2である黒崎義裕が立ち合ったためにカイジの主張が全面的に認められるのと同時に大槻は完全に逃げ道を失い、黒崎の助言を頼りに最後のあがきとして普通の賽を使い引き分けの目となる奇跡のピンゾロを出そうとするが今まで散々人を騙した奴にそんな都合のいい奇跡は起こるわけがなく、出目は3で敗北。こうしてカイジら45組は大槻が貯めに貯めた金庫のペリカを吹っ飛ばすほどの大勝利を得たのだった。
1日外出録ハンチョウ
バレていないため当然資金源として登場するが、本編とは違い成功率は高くなく、普通の労働者が大槻でも出せなかった奇跡のピンゾロによる5倍づけや小田切が開いた地下映画館、さらに大槻たちが勝ち過ぎて労働者の勝負心と射幸心が縮こまんだことが原因で10月の中期決算会議でチンチロの収益が非常に芳しくなっている。そこで大槻らは沼川が気分転換にBUMP OF CHICKENの「天体観測」を歌ったのをヒントにTENTAI1号を開発。木箱の中に懐中電灯を収納し、無数の小さい穴に空けたヘルメットを乗せるだけの簡単な作り。
地下チンチロを始める前に余興として石和が用意し、沼川が消灯、天井から放つ無数の小さい光で星空を再現させる。労働者たちを仰向けに寝させ、大槻のエモいナレーションで彼らの涙を誘い、彼らの勝負心と射幸心を沸かせ、昨年と比べて45組の人数が1.3倍に増えた。
余談
大槻の敗因の根本的な原因としては、カイジにイカサマのからくりを気付かれるきっかけとなった三好のメモを沼川の忠告を聞かず見逃していた事である。
しかし、それ以外でも特殊ルールを逆手に取られた事もあるが、致命的であったのが使用した四五六賽を回収するために制定した「親の総取り、総払いなし=親がどんな目でも子もサイコロを振れる」点。
このため、概要に記したように本来なら出した時点で即負けかつ親を降りれるションベンをわざと出して多少の損失だけで乗り切るという手段を失ってしまったのである。(第三者から見ても、「通常ならあり得ない金額を張られて動揺し手元が狂った」という言い訳もまだ通用する状況である)
ちなみに、大槻は一回目の親の際に二投続けて目なしであったが、これは単純に運が悪かったと言える。ここで何らかの目が出ていればあわよくば勝ち逃げ、負けても二回目の親の際に比べれば遥かに軽い損失で済むはずであった。しかし同時に、現行犯で四五六賽を取り押さえたかったカイジにとっても文字通り命懸けの局面であったため、彼にとってはまさに幸運であった。
更に二回目の親の際に通常のサイコロを振っていたが、ここで負けの役であるヒフミが出た場合、同じく概要に記した通りもしも倍率の累乗が適用されていれば、大槻は10倍払いという更なる地獄へと落ちる可能性もあった。
また、先述の「ピンゾロ賽」はTボーンステーキの骨でカイジは作っていたが、実は作中に登場したものはほぼ作れなかったりする。というのもTボーンの部位の骨は削っても骨髄部分が出てしまい、黒っぽくなってしまう。実際に作ってみた者によると削るにしても結構固かったという。