解説
『夕凪の街 桜の国』:夕凪の街桜の国
とは、漫画家:こうの史代の作品の一つである。
「第8回 文化庁メディア芸術祭賞」と「第9回 手塚治虫文化賞 新生賞」を受賞しているなど、その代表作ともなっている。
本作品は『夕凪の街』と『桜の国』の二編から成っている。
『桜の国』は、更に二編に分かれており、それぞれ昭和六十二年:1987年の東京都中野区と、「平成十六年:2004年の夏」が舞台である。
「広島の原爆」に遭ってしまった、とある「家族」の物語であり、「被爆者」、「原爆症」、「被爆二世」などの問題に遭いながら、強く、しなやかに生きようとする人々を描く。
『夕凪の街』
:夕凪の街
昭和三十年の広島県広島市。
主人公:平野皆実は、そこで働く「普通の女性」である。
しかし、十年前に「広島の原爆」に遭っており、その惨状の記憶を色濃く残し、ことあるごとに「何故、自分は生き延びてしまったのか」という思いに苛まれていた。
そんな中、ためらいながらも、とある男性の想いを受け入れる。
しかし………。
『夕凪の街』とは、皆実が住んでいた、当時の広島市に存在していた「原爆スラム」の事を指す。
『桜の国』
:桜の国
その一
昭和六十二年の東京都中野区。
主人公:石川七波は、少年野球に勤しむ小学校5年生の女の子。
ある日、練習をサボった七波は、クラスメートの利根東子を誘って、喘息で入院している弟:凪夫のお見舞いに行く。
その二
平成十六年の夏のある日。
28歳になった七波は、家をふらっと出た父:旭が気になり、その後を追う。
そこで、小学校の頃のクラスメートの東子と「たまたま」再会し、そして東子に促されるがまま、深夜バスに乗った父を更に追った。
果たしてその行き先は「広島市」であった。
『桜の国』とは、七波が生まれ育った東京都中野区の「桜の風景」、転じて「現代の日本」のこと。