概要
『この世界の片隅に』は、こうの史代による漫画。2011年にテレビスペシャルドラマ化、2016年にアニメ映画化、2018年には連続テレビドラマ化。登場人物は全員広島弁で話す。
戦争がストーリーに大きく関わってくるが、中盤まではのほほんとした主人公の視点で戦時下でも変わらず続く日常を描いている。しかし終盤に怒涛のように悲劇的な展開が押し寄せる。
原作
双葉社の漫画アクションにて2007年1月〜2009年1月に連載。
1話が1カ月ごとで進行していくスタイルで物語が進み、「昭和18年の暮れ」のエピソードが「平成18年の暮れ」に掲載されるというタイミングで連載が続いた。
単行本は同社より上・中・下巻が発売されている。
2009年、第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。
2010年、「THE BEST MANGA このマンガを読め!」第1位。「ダカーポ特別編集 最高の本! 」マンガ部門第1位。
劇場版アニメ
「マイマイ新子と千年の魔法」の片渕須直が監督・脚本・音響監督を務め、キャラクターデザインは松原秀典、主題歌及び劇伴はコトリンゴ、制作はMAPPAが担当。配給は東京テアトル。
片渕が本作の映像化を熱望し、原作者こうの史代にアプローチしたところ……
こうのは、片渕が監督した世界名作劇場「名犬ラッシー」(1996年)の大ファンであり、これを快諾した。
2012年8月にTwitterで制作発表、2015年3月9日にはクラウドファンディングにてスタッフ確保とパイロットフィルムに使われる2000万円を目標に資金調達を開始、僅か9日で目標金額に到達。調達予定までの5月29日までの延べ82日間で3622万4000円を調達し、支援者は3374人となった。
(日本国内におけるクラウドファウンディング最高支援者数、支援金額も国内映画部門では最高額となった。)
これらを受け、2015年6月3日に製作委員会が発足し映画制作が正式に決定した。
軍事や兵器に造詣の深い片渕監督により、爆弾の落下や炸裂するシーンなどはよりリアリティを持ってブラッシュアップされた。
作中の時系列の計算も綿密に行われ。小さくしか映らないモブキャラの動作にも手を抜かず詳細なロケハンが行われるなど細部まで練りこんだ作りとなっている。
絵柄は原作に近いほのぼのとしたデザインと演出ながら、戦時中が舞台であるために(「はだしのゲン」や「ピカドン」のような他の反戦作品に比べたらあっさりした描写ではあるが)若干ながら気の小さい人には厳しい映像もあるため注意。
公開後
2016年11月12日、上映62館と小規模ながら全国映画動員ランキングに初登場で10位を獲得。公開前に鑑賞していた著名人・批評家から絶賛され、昨今のSNSの普及によって評判が映画未鑑賞だった人へと伝播していき、公開7週目においても動員ランキングの上位10位圏内を維持している。
配給元の東京テアトル所有の映画館・テアトル新宿では連日売り切れ。立ち見が続出し、同館の過去10年間の週間興収を塗り替え、大阪・テアトル梅田でも過去10年間の興行成績でトップになるなど非常に反響の大きなタイトルとなった。
年末年始にかけて更に上映劇場数が増え、公開当時の約3倍となる約180館以上での上映が予定されている。
海外でも韓国、台湾、イタリアやフランスなど多数の国で公開された。
公開から1月足らずの2016年12月3日、第38回ヨコハマ映画祭で作品賞を受賞。「シン・ゴジラ」、「君の名は。」など日本映画の当たり年といわれる2016年の「日本映画ベスト10」第1位に選ばれた。
また主演ののんは審査員特別賞を受賞している。
明けて2017年1月10日、第90回キネマ旬報ベスト10にて「2016年日本映画部門」第1位に、そして片渕監督は監督賞を受賞した。
アニメーション作品が第1位に選ばれたのは「となりのトトロ」以来、実に28年ぶりで、アニメーション監督の監督賞受賞は歴代初の快挙である。
さらに第40回日本アカデミー賞では『君の名は。』を抑え、最優秀アニメーション作品賞に輝いた。
DVDおよびBlu-rayソフトは2017年9月15日にリリースされ、こちらも海外版が多数の国にリリースされている。
予算や尺の都合によりカットされていた原作のエピソードを盛り込んだ30分長いロングバージョン『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が制作中である。
当初は2018年末の公開予定であったが、当初の見込みより制作の手間がかかったということで2019年に公開がずれ込むこととなった。
2019年8月3日にNHK総合テレビで放送。翌週には視聴者から募集した「戦時中の日常」を片渕監督が映像化するスピンオフ作品「#あちこちのすずさん」を放送する。
物語
海苔の養殖業を営む優しい両親、いささか乱暴な兄、仲の良い妹のすみと一緒に、さほど裕福ではないものの……
大好きな絵を描きながら毎日を楽しく暮らしていた。
戦局の悪化が人々の生活にも影を落とす昭和18年(1943年)の暮れ、彼女に縁談が持ち込まれる。お相手は呉で海軍の文官として働く青年、北條周作。
あれよあれよと言う間にトントン拍子で話は進み……
翌年の2月、すずはかの世界最大の軍艦大和をも母港とする東洋一の軍港の街、呉へとお嫁にやって来た。
キャスト
- 北條すず(CV:のん/能年玲奈)
- 北條周作(CV:細谷佳正)
- 黒村径子 (CV:尾身美詞)
- 黒村晴美(CV:稲葉菜月)
- 北條円太郎(CV:牛山茂)
- 北條サン(CV:新谷真弓)※
- 水原哲(CV:小野大輔)
- 浦野すみ (CV:潘めぐみ)
- 白木リン(CV:岩井七世)
- ヨーコ
※サン役の新谷真弓氏は広島出身のため、方言指導も兼ねている。
TVドラマ
2011年8月5日、「終戦ドラマスペシャル」と銘打って、日本テレビ、広島テレビ他にて放送された単発ドラマ。
すず役に北川景子、周作役に小出恵介を置き、視聴率は12.7%を記録した。
2018年7月からは連続テレビドラマとして、TBS、中国放送ほかにて日曜劇場枠において放送された。
なお、秋田放送、四国放送および福井放送ではどちらも放送している(秋田放送と四国放送は日本テレビ系列かつ(ニッセイ)日曜劇場をTBSからの番販購入で放送しているため。福井放送は(ニッセイ)日曜劇場の番販購入を行っているほか、系列キー局のひとつである日本テレビから番組購入を行っており、その流れで単発ドラマ版を放送したため)。
関連イラスト
外部リンク
関連作品
夕凪の街 桜の国 - こうの史代が本作の前に手がけた広島と戦争に関わる漫画作品。
うしろの正面だあれ - 片渕監督が若き日に関わったアニメ作品。中盤までは戦時下の日常を丁寧に描き終盤で悲劇が押し寄せる展開が共通する。