ルパート2世が死んだ後、カンパニー監督のもと、皇帝の遺産である「セプター」システムは、すべて博識学会に継承された。人類知恵を超えた遺産は人々を興奮させ、学派間ですら噂が立つ。「セプター」の計算能力は、彼らに属する「完全な学者(天才)」を作り出せると。
こうして、その目標を実現させるため、そしてそれぞれの学派の利益のため、学派戦争は始まった。
概要
「崩壊:スターレイル」の本編より遥か前に起きた、「博識学会」内部の紛争。
かつてルバート2世は己の外部思考ユニットとして、「知恵」のヌースの思考法をモデルに、セプターシステムと呼ばれる惑星1つの規模を誇る無機生物模倣ニューロンクラスターを作り上げた。セプターは2世から伝えられた観察、演算、干渉を完成させるため、機械帝国に広く配備された。
第2次皇帝戦争終戦後、多数のセプターが研究のためにスターピースカンパニーから博識学会に引き渡された。
セプターは驚異的な計算能力を持ち、ほんの一部でもあれば研究を飛躍的に進歩させることができる。
セプターの配分を決めるため、学会はスポフィアで「未来学の集会」を開くことにした。結果として、最も価値のある研究を持ち、より大きな問題を解決できる者がセプターを所有することになった。しかし、依然として続いていた星間エネルギー戦争、そして各学派間の野望が高まり、セプターを奪い合う戦争が勃発した。
歴史
- 天才の脳と凡人のカトラリー
皇帝の没後、無機生命体に対する粛清と復讐が行われ、皇帝の遺産は深刻な被害を受けていた。博識学会はカンパニーから「セプター」を譲り受け、スポフィアにて議論と配分会議を行った。
星空生態学派のスタンド・カデルは全ての計算能力を1人に集中させ、完全な学者、つまり学会に帰属する「天才」を作り出すことを宣言する。その会議にはポルカ・カカムも出席していた。
スタンドは「セプター」の独占を企んでいたが、最終的に4つの派閥によって分割された。1つは「エネルギー」を管轄する「星間エネルギー学派」、2つ目は「命」を管轄する「完全進化学派」、3つ目は全ての法則の「統合」を管轄する「純粋造物学派」、最後は「未来」を管轄する「相対認知学派」である。
- 聡明な学士と腐敗した権威
博識学会のパティヴィアは若い頃はどの学派にも属さず無名の学者だった。彼女は研究アシスタントのカデルと共に、宇宙空間に漂うから発する謎の信号を解明するための研究に励んでいた。その成果が認められ、セプター1台の1万分の1の使用権を獲得する。一説では「セプター」は1%の力で戦艦に匹敵し、10%で惑星1つを滅ぼす。1台で認知を超越し、1000台で宇宙を支配できたという。
しかし学者達の醜い欲望と執念は暴力事件に発展し、分割協定は破綻。勝者がセプターを独占する戦争へと突入した。
パティヴィア達も巻き込まれ「純粋造物学派」のモリートにセプターの使用権を奪われ追放、実験環境と観測データを破壊されてしまう。モリートは万物の分解と再構築を達成しようと数十台のセプターを繋ぎ合わせるが、ユニットの回答は沈黙という無惨な結果となる。
その時カデルは偶然にも「セプター」の囁きを聞き、「コア」の存在を知る。しかしコアはルパート2世そのものであり、逝去した彼の声を聞くことはできなかった。
「完全進化学派」クローチ・オムノは有機(学者)と無機のを掛け合わせた、ハードウェアから異なる進化した学者の作製を試みたが、実験体の多くがセプターから通信ネットワークを通じた「反有機ウイルス」に感染し、自らの認知を機械帝国の尖兵「メニク」のものに書き換えられ暴走。博識学会に宣戦布告を行った。ポルカ・カカムも暗躍し、結果122台のセプターが破壊される。この事件により彼らの研究資格は剥奪され、完全進化学派は形骸化していった。
こうして生き残った「星間エネルギー学派」が勝者となった。
泥沼化する戦争の中、追放されたパティヴィア達は「銀河図書館」イスマイールでかつてない規模の学術交流を始めた。そこでパティヴィア達は「ソリトン波」を発見する。さらに彼女は学会の腐敗を糾弾するデモに参加するが、武装考古学者たちは多数の兵器で彼らを制圧した。この出来事の同時期に「凡人院」が設立される。
- 高天を覗き見る者
パティヴィアは波の調査のためたった1人で星間の旅へ出る。そして「目に見えない星」に辿り着いたとき、ルパート1世の遺体と2世の墓を発見する。さらに「ソリトン波」の発生源、セプターのコアがこの星であることも突き止める。
ルパート2世はかつて「知識の輪」から抜け出そうとセプターシステムの全てを活用し、自身を誰の頭脳にも拠らず己だけで思考を続けられる、完全な学者にするプロセス「自己戴冠」を行った。知識の特異点に至れば彼は「有機無機関係なく全ての生命を消滅させる」結末をもたらしただろうが、2世は戴冠をやり遂げることもなく、その星で自ら墓を作り一生を終える。
パティヴィアもまた意識をコアに接続し「自己戴冠」を試みるが、寸前に凡人である自分が戴冠を成しえるのか自信を喪失する。数秒の逡巡の後、彼女は全セプターの演算能力を以て「知恵」の星神の思考を拾おうと試みた。
滞りなく命令は実行されたが、星神の知識の前では凡人のそれは大海のうちの1水分子に過ぎない。負荷に耐えかね次々にセプターユニットが焼き切れていくなか、なんとか彼女は氾濫する知識から己が知り求めるところを拾い上げ、システムが沈黙し気を失う寸前までそれを玉座の床に書き殴った。
認知を超えたその方程式は「ソリトンアルゴリズムの難題」と呼ばれ100琥珀紀近く人々を困惑させ続け、宇宙全体を知識の輪に閉じ込めかけてしまうほど恐ろしいものだった。
───ヘルタという天才少女が現れるまで。
その後
学派戦争は「完全な学者」どころかセプターを全て破壊し、学会と学士の関係に大きな亀裂をもたらした。セプターは現在、観光スポットかスペースデブリと化している。
凡人達の空騒ぎは結果として価値あるものをほとんど残さなかったが、パティヴィアによってヌースより汲み上げられた「ソリトンアルゴリズム」はヘルタによって解明され、その知識は模擬宇宙の根幹理論として息づいている。
ヘルタは凡人である彼女を高く評価しており、もしパティヴィアがいなければヘルタは天才クラブにいなかったかもしれない。