「生産に使う機械と破壊に使う機械は平等である」
——使い捨て動力キャノン
概要
皇帝戦争は「反有機戦争」とも呼ばれ、宇宙の半分を巻き込み、多くの文明を破滅に追い込んだ2つの宇宙大戦を指す。
「第一次皇帝戦争」は、ルパートが知的ロボットの軍隊を編成し、有機生命体を根絶する目的で宇宙全体に反有機方程式を広めることで始まった。
「第二次皇帝戦争」はルパート2世によって開戦した。第二次反有機皇帝戦争、第2次ルパートの乱、または第二次機械パニックとも呼ばれている。
歴史
戦争前(辺境星系貿易戦争)
宇宙の蝗害の収束後、スターピースカンパニーの幹部「荷役部」のコラパウと「宣伝部」のトローラ・ファエンサは大規模な改変を行った。これによりカンパニーは最盛期を迎える。
しかし2人の間に対立が生じ始め「辺境星系貿易戦争」が勃発する。これはヌースにも予測されていた。カンパニーの創始者・東方啓行もすべてを把握しており、ポルカ・カカムを支援して戦争の後押しをした。
戦争末期、同じ創設者であるルイス・フレミングの引退演説の最中に浮黎が降臨する。記憶から痕跡が浮かび上がると、博識学会の燭炭学派は「辺境星系貿易戦争」/「女性の絹織物による終焉」/「神秘の謎かけ:血と花」という3つの啓示を読み取る。
博識学会はこれらが無機生命体の「方程式」を指していると評価した。
やがてカンパニーのいくつかの部門は「脅す」形で無機世界の植民地化計画を開始する。
一方、カンパニー技術部のド・ウェインは無機生命体の住む世界のレアアース資源に目をつけ、支援をおこなうふりをしながら植民地化計画を進めた。ド・ウェインは急速に勢力を拡大。この出来事には「神秘」ミュトゥスが絡んでいる。
ド・ウェインの部下は機械族の暴走を確認、この時から「反有機方程式」が認知されていた。
カンパニーの植民地化に反発し、セプルーゴ星の機械領主たちは有機生命体の殲滅を開始する。
その後、墓地に捨てられていたコンピューターが自己認識を得て目覚める。廃品から作った大砲で墓地を脱走した後、その計算システムを粘り強く改良し始めた。やがて、有機物生命体は本質的に欠陥があるという結論に達し、有機物の存在価値はないと考えた。憎悪と不完全な存在を宇宙から排除する願望を抱き、「辺境星系貿易戦争」がまだ進行中である間に「第一次皇帝戦争」を開始した。
其の者の名はルパートという。
第一次皇帝戦争
「技術だけではダメだ。発明創造をしたいのなら、一抹の……激情が必要だ」
——使い捨て動力アーム
「反有機方程式」を導き出す以前から、ルパートの軍隊は宇宙に侵攻していた。戦争中、無機生命体・ヨートン体はメカに味方したために有機生命体によって根絶やしにされる。
ルパートは計算能力を飛躍的に向上させることで「反有機方程式」を発見した。
この方程式は目立った影響を与えることなく、生物の心に侵入することができる。しかし無機生命体で活性化すると、彼らの意識を「宇宙のすべての有機生命体を絶滅させるという皇帝の目標」に同調させることができる。
その後、理由は不明だがルパートは眠りにつく。「愉悦」アッハと「神秘」ミュトゥスは皇帝の不在中に機械帝国の崩壊を見守った。
しかし、たまたま機械都市を横断していた「開拓」の有機生命体グループによって覚醒。このグループは仮面の愚者によって弄ばれていた。眠りから覚めると、反有機的方程式を植え付けられた無機生命体が起動し、本能的に有機生命体の殺戮を開始する。
ド・ウェインの部下が辺境の星から資源の略奪にやってきた有機生命体を調査したところ、その体内から「反有機方程式の模造品」を発見。模造品は思考に従うものではなく、思考を変化させるという結論に至った。その後、コラパウと部下たちは方程式の背後にある論理を解読しようと試み、博識学会のカレイシテラ博士が「反有機方程式の模造」を発明する。それをコラパウの部下に埋め込む。さらに香辛料の苦難で追い詰められたコラパウは、その方程式を起動してしまう。部下の消息は不明。
方程式のあまりの複雑さにヌースの注目を受け、ルパートは天才クラブ27番目の会員となった。
月桂冠系の崩壊と再興
「月桂冠系」を支配する「哲学者連合」にて、無機生命体と有機生命体の間で内戦が勃発。
方程式の影響を受けた無機生命体が連合内の多くの学者を殺戮する。
無機生命体は連合の指導者である「オレリウス」を毒殺によって処刑。指導者を失った有機生命体は投降し、連合は彼らの領土に成り果てた。
この大事件をカンパニーは「理性の崩壊」と呼んでいる。
ルパートの方程式によれば、連合は機械帝国によって確実に破壊されるはずだった。しかし、神の信者たちは再び反乱を起こした。そして「哲人の酖酒」というトロイの木馬で征服者たちの演算中枢を侵蝕し、機械軍を打倒。さらに星核ハンターはリングワールド・ゴールゴンダに侵入し、すべての植民地にパラドックスウイルスをばら撒き、4600万の無機生命体を制御不能な機械にした。
金人の反乱(仙舟同盟)
星暦3287年、仙舟「円嶠」が内戦にて轟沈。悲しみに暮れる中、金人による虐殺が発生。前者の首謀者だった褐夫、耆宿が手を組み、金人討伐が行われる。
星暦3290年、金人の首魁「止戈」型が精兵を率い、「曜青」にて激戦。軍は一斉攻撃によりこれを撃破、首魁を破壊する。これにより金人は制圧され、無力化のため分解、霊鎮めの勅符、玉兆の記録抹消などの処置が行われた。「止戈」は現在幽囚獄の奈落に幽閉されている。
第二次皇帝戦争
ルパートが逝去すると、とある虚構歴史学者が墓の前で5368回「反有機方程式」を解読。帰国後間もなく、彼はネガティブな考えに悩まされるようになり、それが心に影響を及ぼすだけでなく、手足や胴体に肉体的にも現れていることに気づいた。
突然、すべての有機生命体は欺瞞的な目的のために作られた機械であり、自分だけが自由意志を持つ存在なのだと思い至った。そしてルパートの意志を継ぎ、宇宙からすべての有機生命体の根絶やしを決意する。
其の暴君は自らをルパート2世と名乗った。
ルパート2世は「セプター」システムと呼ばれる惑星レベルの無機バイオニューロンを築き上げ、第二次皇帝戦争を引き起こし、多くの人々を苦しめた。その暴虐性は皇帝を遥かに上回っており、ただの殺戮にとどまらず、治下の領土の全ての信号を統括するなど唯一無二の独裁者と成ったのだ。
伝説によれば「セプター」は1%の力で戦艦に匹敵し、10%で惑星1つを滅ぼす。1台で認知を超越し、1000台で宇宙を支配できたという。
ルパート2世はザンダーと同じように「知識の特異点」を目指した。この領域に踏み入れた者は知識の定義だけでなくヌースの思考まで揺り動かせることができるという。
しかし目標半ばでこの世を去る。自身で中断させた説や1本のメスによって思考を中断された説など死因は不明。
終戦後、スターピースカンパニーは莫大な信用ポイントを投じルパート2世の遺体を何度も鑑定したが、その体は血と肉で構成されているという驚くべき結論に達した。
しかしルアン・メェイは「ルパート2世がこれほど古い時空に現れるはずがありません」とルパート2世の存在を否定している。
また皇帝ルパートの意思の継承者『潛主』ガイウスが13軍団を結成したが、巡海レンジャーによって撃破された。その手法は未だに謎に包まれている。
その後
アドリヴンの住民は皇帝戦争と宇宙の蝗害が残したスウォーム達によって壊滅的な打撃を受けた。両戦争によってもたらされた極度の壊滅は、ナヌークを星神に昇華させた。また「秩序」エナが残した価値の高い骨董品の多くが破壊される。
カンパニーは皇帝戦争という2つの大災厄を経験し、機械生命体の絶滅を検討することになった。しかし可決前に機械生命体スクリューガムがヌースに選ばれ、天才クラブのメンバーになったことを知る。カンパニーは親善の意味を込めて彼に「機械式鳩時計」をプレゼントした。
またカンパニーは「セプター」を博識学会に贈与。学会はこれを奪い合う「学派戦争」と化した。その過程で「セプター」はすべて破損し、現在では観光スポットやスペースデブリに変貌している。
ゆえに「セプター」を体験できるのは模擬宇宙のみとなっている。
スクリューガムは「反有機方程式」に囚われている全てのロボット達を解放し、カンパニーとの融和に成功する。
今日も機械貴族はルバートの考えを反対し続けている。