君の王子様も、きっと、同じ気持ちなんじゃないかな――――
概要
少女革命ウテナ19話のサブタイトル『今は亡き王国の歌』
第2部『黒薔薇編』のハイライトの前日章である。
ストーリー
いいことがあったと嬉しそうに話す若葉とウテナの昼休みの時間。突然ウテナにラブレターを渡そうとした男子学生が現れる。手紙の差出人、若葉の記憶に残った名前――――風見達也は若葉の幼馴染でかつての王子様だった。
幼い頃、髪形を玉ねぎとからかわれた若葉は友達に強がり
『私には、玉ねぎ王子様がいるんだから!!!!』
『・・・・・・・・え?』
『私には、玉ねぎ王子様がいるんだから!!!!』
『・・・・・・・・え?』
『私には、玉ねぎ王子様がいるんだから!!!!』
『・・・・・・・・え?』
髪形が玉ねぎに似たお姫様に対し、玉ねぎに似た髪形の王子様の誕生である。
その後もラブレターを渡したい達也と邪魔したい若葉の葛藤、除け者にされるウテナと三角関係でもなく微妙な時間が過ぎ、ウテナは達也がウテナを好きでラブレターを書いたのではなく若葉のそばにいたいけれど素直に言えないために書いたことに気づく。若葉がウテナと達也の邪魔をしたのは素直になれず焼きもちを焼いているのだと思い、ラブレターを突き返して素直に話してみるよう達也を説得する。
…まではよかったのかもしれない。若葉が大事な思い出だと話し、達也が自分は今も若葉の王子様であると思っていたら…
懺悔室に事のいきさつを話し、気持ちの整理をつけようとする達也。このままでは若葉は知らない男に傷つけられてしまうかもしれない。もしかしたら何か過ちを犯してしまうかもしれない。でもいいんだ、最後にはきっと若葉は自分の愛に気づいて帰ってくるはず…
どうして僕じゃダメなんだ!!!
泣きながら窓をたたきつける達也は一途に若葉を想う一人の人間である。若葉に対して、あるいは顔の見えない相手に対して恨みはなく、ただ失恋に涙するばかり。
…君は本当にいい人ですね。だが、君の行くべき道は用意していない。さっさとここから去りたまえ。
足早に学生寮に帰っていく若葉。その先には――――
『…おかえり。遅かったね』
『…ただいま』
…若葉の王子様は若葉のラブレターをぞんざいに扱い、学園を退学になり行くあてのなくなった西園寺莢一だった。気持ちを踏みにじられても、若葉はまだ彼のことが好きだったのだ…
【解説】
途中までは視聴者もウテナ同様若葉が達也を好きで素直になれないだけ、かと思いきやのちに明らかになるが冒頭の「いいことがあった」=西園寺をかくまって幸せな生活をしているので最初から若葉の王子様は西園寺で揺るがないものであった。大切な思い出というのは間違いではないものの今の思い人ではなく「美しい思い出」であり、過去の出来事と割り切っている。ウテナの邪魔をしたのはあとで明らかになるが達也が女の子に対してだらしない半端なプレイボーイ気取りという一面から心配しておりくっつきそうにもなかったが友達を守ろうとした行動である。
他人の心の中の王子様はどんな人かその人にしかわからないという暁生の助言もあるがウテナはこの時に若葉の気持ちを踏みにじり、翌日失恋から立ち直ろうと明るくふるまう彼女がまだ同じ相手を好きだとは考えられなかったようだ。
タイトルの「今は亡き王国の歌」とあるように既にない国であったことに達也も気づけなかったようだ。
達也も若葉の思い出の中にあり、今も美しい思い出のまま自分を見ていると疑わず自分がさも王子様であるかのようにふるまったために起きた悲劇である。
御影草時のカウンセリングにきて唯一「誰か(何か)をどうしても許せない」「〇〇さえいなければ自分は幸せになれる」「何かになりたい」などとは言っておらず黒薔薇のデュエリストにはならなかった。達也は心の中に人には言えない闇を抱えない、普通のいい人である。
なお、声優が変わらず演じているが顔や肌が影絵のような真っ黒の演出でもわかる通り二人とも髪型が幼少期からほぼ変わっていない。