概要
逆転裁判シリーズに登場する法制度である。
「世紀が変わっても、あいかわらず犯罪は増加の一途をたどり……、時間のかかる法廷のシステムでは処理しきれなくなってしまった。そのため、数年前から設置された序審法廷の期間は、最長でも3日。たいていは1日で終了してしまう。もちろん、有罪判決で、だ。」
(逆転裁判 第2話より引用)
「事件発生から3日」なのか「起訴から3日」なのか、はたまた別の意味なのかははっきりしないが、どの意味にしても短過ぎる点は否めない。仮に「事件発生から3日」だとすると、警察の捜査も迅速化しなければならないため捜査がかなり雑になってしまう。
短い捜査期間のせいか警察は誤認逮捕を連発し、本作に登場する糸鋸圭介刑事は健康で文化的な最低限の生活ができないくらいの憲法違反レベルまで給料を減らされている。
サイバンチョ「被告人はこれより、その身柄を司直に預けるものとし、1ヶ月以内に、高等裁判所において通常裁判を受けることとします。」
(逆転裁判シリーズ ゲームオーバー時セリフより引用)
また、ゲームオーバー時のセリフから、序審法廷で有罪が確定した場合は1か月以内に量刑を決める裁判が行われると考えられる(被告人が全面的に罪を認めた場合はもちろん、殆どの話でそうなるように裁判中に被告人が無実かつ真犯人が特定された場合は、その真犯人に同様の処置が行われると思われる)。
この法制度が導入されたのは、作中の描写を見る限り「DL6号事件発生」から「逆転検事第4話」の間(逆転裁判開始15年前~4年前、西暦2001~2012年の間)であると推測される。
この法制度により最大3日以内に被告人の有罪・無罪が決まり、裁判のスピードは飛躍的に向上したものの、冤罪と疑われるような案件も増えている。
おまけに本作の検察には不起訴の発想が何故かないため、無理に仮説を立ててでも起訴してしまう。検察は「被疑者を有罪に追い込む=『勝利』」と捉えていて、勝利を得るために証拠の隠蔽や捏造に加え、弁護人の質問の邪魔をするなど悪質な検事もいる。悪質な手を使ってでも有罪を得た検事が、この世界では「有能」と捉えられている。
要するに「最重要容疑者の有罪・無罪」だけを論点に裁判し、量刑は後に判断する仕組みなのだが、現代日本の法制度の原則である推定無罪はほぼないに等しく、容疑者として逮捕される=有罪と考えられているため、真犯人が別にいる点を基本的に弁護側が立証しなければならない。
ゲームのシステム上仕方ないかも知れないが、裁判長の心証を悪くすると、たとえ「被告人が事件の犯人ではないと立証」できたとしても、どれだけ真実を明らかにしようとも被告人の有罪が確定してしまう弁護士側にとって不利な条件である。
当然、実際の裁判では弁護人に真犯人の特定を行う役割はない。
裁判の高速化と共に捜査権を持たない弁護側(劇中での弁護側の捜査には担当刑事・検事の許可が必要)は、一から捜査や最悪裁判にて初めて事件の概要を知ったりと、捜査などの情報は警察や検事側に独占や秘匿、捏造され易い状況もあいまって弁護側はまともな捜査情報も得にくい、検察側にとても有利な法制度であり、作中では直接的な証拠・証言がなければいくら状況証拠がそろっていようと、被告人と別の人物を真犯人と断定できない問題も発生していた。
また、序審法廷制度では被告人が裁判に一切関わることができず発言権も与えられていない。
一部の話では被告人質問があるが、ほとんどの場合は被告人が一切登場することなく裁判が終わってしまう。
本作の世界では司法の権力がとても強く、逮捕状もないのに逮捕したり勝手に家宅捜索したりといった行為が行われている。これらの行為は現実世界では特殊な場合を除いて事前に手続きが必要となる。警察や検察が個人の独断で行うことはできない。
ゲームの初期ではある人物によって、この世界の司法が牛耳られていたため更に酷い事態に陥っている。証拠も動機もないのにその人物の電話1本だけで、成歩堂龍一が被疑者にされてしまった。
ゲームとして成立させるために考案された設定と考えられるがその結果、本作は司法が徹底的に簡略化されたディストピアを描いている。芸人にして現役弁護士のこたけ正義感は「違憲やろこんなん!そんな被告人の人権がこんな蔑ろにされる法律誰が作ったん!」と称している。
一応、流石に偽物の弁護士が適当な弁護を行い被告人が有罪になったケースでは、弁護士不在(およびボール紙で作ったバッヂを見抜けなかった法曹関係者)での判決ということもあって審理がやり直しになったこともある(『3』:逆転のレシピ)。
シリーズが進むうちに、成歩堂自身、これを問題視するようになり、現実の裁判に導入されている制度の1つの導入を関わる事になる。後に出世した御剣も不正を働く悪質な検事たちを一掃すべく動いている。
逆転裁判1~3および逆転検事2までに法曹界の上部に君臨していた暗部たちが次々と成歩堂、御剣の働きで罪を暴かれ失脚。その後の逆転裁判4~5にて別要因で法の暗黒時代とも称される期間があったが、これも成歩堂たちの働きにより解消。6以降は上記の通り悪質検事らが消えたことで日本の法曹界はかなりまともになってきている様子(ただし6の主な舞台は日本が生ぬるいくらいの『弁護罪』がはびこるクライン王国である)。
また「見ず知らずの相手を殺害する動機が無いから」という理由だけで、どれだけ怪しい人物が居ても動機を含めた犯行を弁護側が証明できなければ被疑者が有罪となってしまっていたが、シリーズを重ねるうちに動機の証明は弁護士がする必要性は薄れていき、ブレイク後に動機を犯人が自白するという表現に変わっていった。
その一方で殺人罪以外にはとても甘い。作中で死体遺棄や死体損壊をした人物が裁判にかけられている気配すらなく、何事もなかったかのように社会復帰している。
ちなみに、本作内の法律用語は実際の法律用語と意味が全く異なることが多いため、実際の司法制度に沿って考えるとおかしなことになる場合がある。
留置場が留置所、家宅捜索が家宅捜査、一事不再理が一事不再審になっているなど、作中での呼称が現実世界と若干異なっている用語も存在する。