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概要

江戸川乱歩が1933年に〈新青年〉昭和8年11月号から昭和9年1月号まで連載した探偵小説。


あらすじ

小説家の「私」はとある失業者の男から無理矢理二件の犯罪記録を売りつけられた。

目を通してみると、その犯罪記録は祖父江進一という人物が岩井坦という人物に送った手紙の束であった。

祖父江が顔見知りの未亡人の家を訪ねたところ、鍵のかかった密室で全裸の遺体で発見された。警察の調査によると遺留品として謎のマークが書かれた紙が発見された。

その後の調査で事件当日に、奇妙な紳士と和服の女性が未亡人の家を訪ねていたことが発覚したがそれ以上の情報は得られなかった。捜査が難航する中、祖父江は霊媒師に犯人を透視する事を提案。

祖父江の前で降霊術を行った霊媒師は、この後もう一つ殺人事件が起こると語る。さらに犯人は祖父江を含めた5人の中にいると口にした。一体犯人は何者なのか……



以上が、本作のエピソードの全てである。


未完

実はこの小説、完成していない。大衆向けの小説を長らく書いていた乱歩が2年ぶりの本格推理小説を書くとして注目されていたが、乱歩は途中から執筆意欲を失ってしまい、2号続けて休載した後に、「種々の事情の為に、全体の筋立ての未熟のまま、執筆を始めた点にもあったと思いますが、抜け殻同然の文章を羅列するに堪えませんので、ここに作者としての無力を告白して、『悪霊』の執筆をひとまず中絶することに致しました」という謝罪文を掲載して執筆を中断。1965年に亡くなるまで連載は再開されず、未完に終わってしまった。乱歩は非常に義理堅い性格だった故、デビュー作『二銭銅貨』を掲載してくれた〈新青年〉からの依頼を断ることができず、見切り発車的に執筆してしまったともいわれている(乱歩に何とか本格作品を書かせようと本人承諾なしに執拗な事前予告を繰り返し、外堀から埋めるようにじわじわ書かざるを得ない状況に追い込んでいった〈新青年〉側にも非がある、という意見もあるにはあった)。


関連タグ

トリビアの泉:「乱歩は推理小説の結末が思いつかず、読者に謝ったことがある」と紹介されたことがある。ちなみに64へぇ。


関連リンク

青空文庫『悪霊』


※これ以下の記事は作品読了後に読まれることをお勧めします。
























‥‥一応のネタバレ

乱歩の死後約十年経った昭和50年、横溝正史が『悪霊』について都筑道夫との対談の席で以下の発言をしている。


「僕が乱歩に聞いたら、いや『スミルノ博士』だよと言った。そのひと言でわかるのよ、記述者が犯人だということが」


『スミルノ博士』とはスウェーデンの作家S・A・ドゥーゼ作『スミルノ博士の日記』のことで(日本には小酒井不木が大正12年に翻訳紹介)、横溝説によれば乱歩はこの作品と同じく記述者=手紙の送り主である祖父江が真犯人、というトリックを考えていたということになる。‥‥勿論『悪霊』は構想未熟が主要因の未完成作品であり、仮にこのまま乱歩が完成させていたとしても本当にこの通りの結末になったかどうかはわからないが。


ちなみに横溝はこの『悪霊』中絶時に「何をやっているんだ!」と乱歩へ最も辛辣に嚙みついた人物であり、これが原因で一時二人の仲は険悪な関係になった程であった(直接本人に言うのではなく誌面上で間接的・一方的に非難したことに、乱歩が不快感を抱いたため)。

その横溝は晩年になって自分でこの作品を書き継ぎ完成させようとしていたが、その死によって結局果たすことはできなかった。

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