概要
TVアニメシリーズ『バトルスピリッツ』の第二期『少年激覇ダン』と第三期『ブレイヴ』、そして十年の時を経た『サーガブレイヴ』にて主人公を務めた馬神弾が、2022年より始まる新シリーズ、『契約編』の背景世界に、まさかの主人公として登場した。
新たな世界『魂蹟契約世界レクリス』にて「放浪者ダン」として旅をしており、行く先々で出会った契約スピリット達を新しい相棒として『相棒契約』を結んだ。なお、この世界でもデッキを所持している。
また、契約スピリットたちに料理を振る舞うこともあるらしく、フレーバーテキストでは、相棒竜グロウに地球にいた頃からの好物であるカレーをご馳走していることが示されている。
この世界に赴いた経緯などの詳細はまだ不明だが、何者かと結んだ『世界救済契約』なるものに導かれ、『魂蹟契約世界レクリス』を救うために召喚されたとされる。
実際にスピリットたちの生きる世界に来たからか、バトルフィールドでなくともカードの力を引き出せる能力を身に着けている。マジックカードを使って炎を繰り出す、『契約煌臨』で契約スピリットたちを新たな姿に変化させる、などの事象を引き起こしている。
これは、カードから石板に封じられたスピリットの力を借りられる仕組み。特別なカードだと、契約スピリットの中に眠る可能性の力が呼び覚まされることもある。
時には創界神と契約スピリットたち、時には『世界崩壊契約』を結んだ『契約者Χ(カイ)』と激突を繰り返しながら、その謎を解き明かすべく、世界を救うべく、挑んでいく。
序章
原始の森や近未来都市、雲の上の王国や深海に眠る帝国。スピリットの楽園であるレクリスは、様々な国や地域があるスピリットの楽園である。
それらとごく同じように、『魂の石板』と呼ばれるものが、風景の一部としていたって普遍的に存在していた。誰かが作ったものなのか、それとも自然に発生したのかはわからないこれを、ある者は敬い、ある者は恐れた。
しかし、近年になって、その石板から力を奪われるという事件が起こり始める。その現象を調査するべくこの世界を訪れたとある放浪者が、とある契約スピリットと出会うところから、この物語は始まる。
「お前、何者だ? 俺はグロウ! 最強になる予定のドラゴンだ」
「俺はダン。カードバトラ……いや、ただの放浪者だ」
契約編 第1章「契約」
ファーストパートナー
ダンが様々な世界を渡り歩いていると知ったグロウは、彼に興味を持ち、流浪の旅に無理やりついていくことにした。ダンの方もグロウを邪険にすることはなく、むしろ前述のように料理を作ってあげるなど、好意的に接してあげていたようである。
「お? いいにおいが風に乗ってきたぞ。その茶色いのはなんだ?へ~、カレーっていうのかぁ、オレも食べていい? 」
レクルスの地理やスピリットたちを網羅しているグロウは、行く先々でその知識を披露し、ダンの道案内を務めたり、同じスピリットの仲間を紹介していた。
「あの赤い石板、ダンはあれが気になるのか? この世界に昔からあるんだけど、どうやっても壊せないんだぜ。すごいだろ。」
だが、とある赤い『魂の石板』をの前を通りかかったとき、背中に火山を背負ったスピリット、『噴火竜ボルカノドサウルス』が暴走し、襲いかかってきた。それは魂の石板に力を奪われて狂暴化していたのだ。
放浪者であるダンに戦う術はなく、立ち向かったグロウの攻撃も歯が立たない。絶体絶命かと思われたその時、ダンの持っていたデッキが光り輝く。
思わずドローしたカードを使って炎のマジックを繰り出す。これなら戦えるかもしれない、と悟ったダンは、さらなるカードをドローする。それは、ダンにも覚えがないカードだった。
すると、そのカードから溢れた光がグロウを包み込み、その姿を変えた。それは『マグナライガー』というスピリットで、グロウが放浪者ダンの力で契約煌臨した姿だった。
それまでとは比べ物にならないほどの熱量で、ボルカノドサウルスにもダメージを与えることができた。しかし、倒し切るには至らず、ダンは歯がゆく感じる。
(まだ足りないか…)
切り札を求めて、3回目のドローを行う。すると、今度のカードは、ひときわ赤く輝くカードだった。直感的に何かを悟ったダンは、それをグロウに掲げて叫ぶ。
「緋炎の炎よ、契約に従い、我が相棒の竜王の力を目覚めさせろッ! 緋炎龍皇グロウ・カイザー! 契約煌臨ッ!」
グロウは再び姿を変え、緋炎を纏った龍皇となった。拳に力を込めて炎を収束させ、青く燃える最大熱量の力『灼熱轟龍拳』を爆発させた。
その拳は、なんとボルカノドサウルスを一撃で吹き飛ばし、暴走を解除させることに成功した。そして、このバトルの中で、ダンとグロウの絆は確かなものとなっていた。
「ダン、さっき俺のこと相棒って言ったよな! 契約しようぜ、相棒契約だ! 今日から俺は、相棒竜グロウだ!」
こうしてダンは、グロウの申し出によって契約を結び、最初の相棒を手にしたのだった。
さらなる相棒たち
骸皇ドヴォルザックの治める、『紫骸城』周辺の地域で出会った契約スピリット。騎士としては少々臆病な性格。道の安全を確認するために、ダンたちの後を知られずに付いていこうとしたところを見つかった。
『魂の石板』は紫骸城にあると教え、彼の護衛を行うこととなる。しかし、同じ紫のスピリットにビビりまくったり、相性の悪い相手と遭遇してしまったりと、あまり頼りになる印象はない。だが流石に、自らの住まう地域の知見は豊富なようである。
遊び相手を求めてダンたちの前に飛び出してきたのが出会い。『雷鳴の森』という場所が出身地。普段はおっとりと間延びした口調で話す。子狼の姿に違わず、無邪気で好奇心旺盛。走るのが大好き。加えてフレンドリーでもあり、様々なスピリットと早期に協力を取り付けることで、ダンたちの調査に一役買っている。
『魂の石板』による現象に出くわしたことで、グロウのように契約煌臨の力に目覚めることとなる。これはランポにとっては少々お腹の疲れることのようであり、戦闘終了後にダンへお肉をいっぱい食べさせてほしい、とお願いしている(調達元は不明)。
『アルジェントシティー』という機械都市で作られた契約スピリット。『魂の石板』の調査をしていたところ、目的を同じくするダンたちと出会ったことで、協力という名目の下、仲間に加わることとなる。
空を飛ぶことに憧れがあるようで、思わず地面に埋まってしまうことも。そこから助けてもらったのがダンたちとの初対面となった。機械らしく理論立てて挑戦しているが、なかなかうまく行かない様子。
さり気なくシャレを言ったり、茶目っ気を見せることも。
雲の上の国、『クラウディア王国』に住む契約スピリット。ダンのことを言伝に聞いていたかのような発言をしており、「面白そうだから」という理由で自ら彼を探し出し、仲間に加わった。石板の秘密を探ることにかなりノリノリで、調査のためなら自分の腕を振るうことも厭わない。
育ちゆえか自信家で、なおかつそれに劣らない技量を持ち合わせる。サイコロやトランプの腕もかなりのもの。他の契約スピリットの例に漏れず、自分の王国のことを知り尽くしている。
7つの神海都市を擁する海の大帝国『帝国ムウ』の皇子。石版の周辺を彷徨いていたダンたちを怪しんで駆けつけたが、単に調査をしていただけだと知ると、すぐさま許可を下した。
その口調からは尊大な様子を受けるが、繁栄する帝国やそれを支えてくれる者たちを誇りとする皇族に相応しい人物であり、決して他者を見下したりすることはない。表裏の無く自信に溢れた人柄。
契約編 第2章「オラクルスピリットと創界神と契約スピリット」
前述した『世界救済契約』と、カードの力を行使できる原理がこの章で明かされている。
スタークの独白により、1章から2章にかけてのダンの道筋の一端が明らかとなった。
アルジェントシティー(相棒機スタークと出会う)
↓
クラウディア王国(相棒鳥フェニルと出会う)
↓
神海帝国ムウ(相棒鮫シャックと出会う)
↓
溶岩海
↓
雷雲平原
↓
古大樹の森(相棒武者オボロ、相棒虫ガタルと対峙)
↓
仙人掌の荒野(創界神テスカトリポカと対峙)
テスカトリポカが何らかの目的を持って『魂の石板』を破壊しようとした描写がなされている。だが、創界神の力を以ってしても破壊できず、不発に終わった模様。
オラクルスピリット
旅を続ける中で、レクリスには『オラクルスピリット』という特別なスピリットがいることを知り、『灼熱の谷』という地で実際に邂逅することとなる。そこにいたのは、可能性、創造、チャンスを司るオラクル二十一柱の一柱、『オラクル二十一柱 I ザ・マジシャン』だった。
ザ・マジシャンが言うには、レクリスの創生には6体のオラクルスピリットが関わっており(ザ・マジシャン自身を含むかは不明)、『魂の石板』はそれを繋ぎ止める楔の役割を果たしていると教えられる。
そして、レクリスを救うためにその6体全てと会う必要性を説き、それを受けて世界を救うと宣言したグロウに力を貸すことを誓った。
さらなる契約スピリット
ザ・マジシャンとの邂逅からしばらく後、『古大樹の森』に足を踏み入れたダンたちは、そこで突如2体のスピリットの襲撃に遭う。それは相棒武者オボロと相棒虫ガタルで、ダンたちとは異なり、『世界崩壊契約』を結んだ契約スピリットなのだという。
名乗るなりいきなり飛びかかってきたオボロとガタル。それに対し、オボロにはバット、ガタルにはランポが対抗する形で、戦いの火蓋が切られた。オボロとバットの剣の腕は互角、だが心の強さが明暗を分けた。一方、ガタルはランポの無邪気さに手を焼かされていた。
ダンがランポに新たな契約煌臨を使ったこともあり、契約スピリット同士の戦いは一勝一敗となる。状況の打開を狙ったダンはデッキに手を伸ばしたが、彼の介入を察知したオボロにより、敵はあっさりと退却を選んだ。
敵となる契約スピリットの出現に混乱するダンだったが、さらなるオラクルスピリットを求めて、足を止めるわけには行かないのだった。
リベレーションオブゴッド
手掛りを求めて『仙人掌の荒野』へたどり着いたとき、一人の男が近づいてきた。その男は一方的に最後の審判を始めると宣うと、またしても突如として襲いかかってくる。その攻撃に真っ先に反応したグロウだったが、相性の良さにもかかわらず、敵の使役する鎧装を纏ったスピリットには手も足も出なかった。
それもそのはずで、男の正体は創界神テスカポリトカといい、世界の創世に関わるほど強大な力を待つ神々の一柱だからである。そして、その加護を受けた眷属たる鎧装獣のスピリットは、驚くほどに力が高められていたのだ。
いきなり窮地に立たされたダンは、デッキから光り輝くカードをドローする。それこそ、グロウに力を貸してくれると約束した、『オラクル二十一柱Ⅰザ・マジシャン』のカードだった。
「創造を司るオラクルスピリット ナンバー1 今ここに可能性を示せ! オラクル二十一柱 I ザ・マジシャン、召喚ッ!」
ダンが使ったオラクルの力により可能性を呼び覚まされたグロウは、『灼炎竜ライズ・グロウ』へと契約煌臨する。オラクルスピリットの力で、これまで通らなかった攻撃が有効になったことで、テスカトリポカも流石に異質な力を感じ取ったのか、自らの化神、ゴッドスピリットを呼び出して対抗する。
「それがオラクルスピリットの力か。なら、こっちも本気出さなきゃね。オレの化神、巨甲神獣テペヨロトル!」
ライズ・グロウとテスカトリポカが雌雄を決しようとしているところへ、グロウのように契約煌臨を果たし、『血斬鬼将オニ・オボロ』となった相棒武者オボロが姿を現す。
「しばらく、しばらく〜ぅ! その勝負〜ぅ、拙者も一枚噛ませて頂こうぞ〜ぉ!」
オラクルスピリットとゴッドスピリットと契約スピリットの三つ巴が入り乱れ、あたりに混沌とした空気が漂い始める。そのあまりの混沌が、さらなるオラクルスピリットを呼ぶ。
不安定、幻惑、欺瞞を司るオラクル二十一柱の一柱『オラクル二十一柱 XVIII ザ・ムーン』が呼び寄せられたのだ。ひとたび杖を降れば、まるでギャンブルかのように、誰彼構わず無差別に攻撃を加え始めた。
誰もが辟易しそうなこの状況で、フェニルがたった一人、その大胆さに興奮していた。そのおかげか、フェニルはザ・ムーンに認められ、力を授かることができた。
そのデタラメ加減に最初に音を上げたのは、襲撃してきたテスカトリポカだった。
「ああ、くそっ、なんだあのデタラメは! ……まぁいいや、次はこちら側の契約者に直接来てもらうことにするよ」
テスカトリポカが姿を消すと、オボロもバットとの勝負を切り上げてその場をあとにした。
「無念……バットよ〜ぉ、次に見えるときは、決着をつけようぞ〜ぉ」
フェニルがザ・ムーンの力を得たことで事なきを得たのだが、強大な敵の存在も明らかとなった。それに加え、『レクリス』の謎を握るオラクルスピリットも探求しなくてならない。驚愕の事実に困惑しながらも、ダンたちの旅は続く。
契約編 第3章「もう一人の契約者」
フレーバーテキストから『雷樹の街ミロスロア』にて、調和、平等、中庸を司るオラクル二十一柱の一柱『オラクル二十一柱 XIV ザ・テンパランス』から力を授かったことが示される。
ライスオブライバルズ
オラクルによって創られた『レクリス』を救う鍵となる6体のオラクルスピリットを求めて旅を続ける、ダンと契約スピリットたち。オラクル二十一柱の一柱『ザ・ハイプリエステス』の治める『氷結都市リースグラード』の情報を得た彼らは、それを頼りに向かう途中、とある一団が彼らの前に姿を現す。
「初にお目にかかる、『世界救済契約』を結びし者ダン! 私の名はΧ(カイ)。君とは別の契約ー『世界崩壊契約』を結んだ者だ」
それはなんと、ダンとは違う契約を結んだという謎の男だった。さらにはテスカトリポカとは異なる創界神ククルカン、新たな二体の契約スピリット相棒翼竜テラードと相棒獅子ラオンを引き連れている。だが、数で見れば6体の契約スピリットの仲間がいるうえに、オラクルの力を持っているダンたちが有利なはず。だが、創界神の力は無視できない。
相手がどういうつもりなのかは読めないが、こうなれば先手必勝だ。ダンはグロウを伴ってΧに戦いを挑む……が、そこへラオンが立ち塞がった。
「我はラオン。レオザード獅国、国王である! いい判断だ。しかし、そうはさせぬ。我がパートナー殿にはまだやってもらわねばならぬことがあるだからなッ! 我が覇道の前に露と消えよ」
そう啖呵を切り、ラオンとグロウの戦いの火蓋が切られる。ラオンはグロウの攻撃を難なく受けきり、直属の近衛師団で守りを固めている。一筋縄ではいかない。
一方、テラードの方へと向かったスタークたちも劣勢に立たされていた。その理由は、テラードの持ち出してきたとある巨大兵器であった。
「吾輩は、グラムバルト空挺隊のテラードだ。天空の紳士と覚えていただこう。スタークだったか、吾輩と戦いたいのなら、まずはその殲滅竜装オメガ・ドラゴニスを倒すのだな。空で待っているぞ!」
そして、ククルカンは、呼び出した蛇たちで他の契約スピリットの攻撃を軽くあしらい、直接ダンのもとに向かってくる。
「ボクはククルんだよ! そう、テスカ君と同じ創界神。この世界ってボクたちが望んだ世界じゃないんだよねぇ。だからさ、さっさとボクたちにこの世界を作り直させてよ、ね?」
このままでは直接グロウの戦いを支援できない。蛇たちの攻撃を掻い潜り、ダンはなんとかグロウの元へと辿り着く。
(間に合った…!)
ラオンと一進一退の攻防を続けていたグロウ。Χと瞳を交差させ、二人は同時に契約煌臨を行う。グロウ・カイザーとキング・ラオンは激しく激突し、必殺の拳を打ち出し合う。
オメガ・ドラゴニスと戦ううちに、スタークはある異変に気づく。オメガ・ドラゴニスは敵味方関係なく、無差別な攻撃を加え始めたのだ。攻撃は激しくなる一方で、近づくことすらもままならない。オメガ・ドラゴニスの向かう先には、目的地の『氷結都市リースグラード』があり、このままでは街が破壊されてしまう。スタークはこの危機を伝えに、戦いを他の仲間に任せて街へと急いだ。
「エマージェンシーです! リースグラードの皆さん、この街に危機が迫っています!」
破片を撒き散らしながら迫りくるオメガ・ドラゴニス。ボロボロになりながらも、這々の体でリースグラードに向かう。それを街の中枢で眺めていたのは、この街を治める直感、期待、知性を司るオラクル二十一柱の一柱『オラクル二十一柱 II ザ・ハイプリエステス』。スタークの献身に心打たれ、力を貸すことを決めてくれた。
「スターク、貴方をずっと見ていました。貴方の行動に報いましょう。わたくしの力を授けます。期待していますよ」
『ザ・ハイプリエステス』の力を受け、スーパー・スタークへと姿を変えたスタークの力。「これならオメガ・ドラゴニスを止められるかもしれない、いや、止めてみせよう!」体に満ちたオラクルを収束させて、ライフルのトリガーを引き絞る。
極光にも似た虹色の光がオメガ・ドラゴニスを貫き、活動を停止させた。かくして『氷結都市リースグラード』は守られ、形勢の不利を悟った敵は撤退を選んだ。
「どうだったかな? 私の仲間たちは。楽しい奴らだったろう? オラクルの力、集まるといいな。君がどこまで力をつけるか、楽しみにしておくよ……結末は変わらないだろうけど、ね」
不穏な言葉を呟きながら、別れの挨拶とばかりに恭しくお辞儀をするΧ。頭上には虚空が広がり、悠々と戦線離脱しようとしている。
(まだ動ける相棒はいるか?)
シャックと合図を交わし、懐のデッキに手を伸ばそうとするも、そのすぐそばを銃弾が掠めた。
「そいつぁ無粋ってもんだぜ、ダンさん…」
それは虚空から現れた、大きな三角帽子を被った黒猫が放ったものだった。虚空へ姿を消すΧたち一行。結果だけを見れば両者引き分けなのだろうが、ダンたちは疲弊しきっていた。
「おっと、君たちの活躍の場はちゃんと考えてあるんだ。私の顔を潰さないでおくれよ。それでは、また会おう、ダン」
契約者Χ。
彼は『レクリス』を救うためには倒さねばならない相手だ。だが、強力なライバルを相手に、ダンは自然と笑みをこぼすのであった。
契約編 第4章「最終決戦」
旅から一時的に離脱したバットが『オラクル二十一柱 XV ザ・デビル』の力を、シャックが『オラクル二十一柱 XII ザ・ハングドマン』の力を手にしたことが示される。
ビヨンドエボリューション
レクリスを巡り、ついに6体のオラクルスピリットの力を授かったダンたちは、この世界の中心である『ミッドバレー』にて、すべてのオラクルを呼び出し、その力を具現化させていた。レクリスを創世したオラクルスピリットたちが壊れかけた世界を繋ぎ直してくれれば、この世界は救われる。ダンたちはそう信じていた。
しかし、告げられたのは、世界崩壊の真実。レクリスを崩壊へと導いていたのは、復活、改善、発展を司るオラクル二十一柱の一柱『オラクル二十一柱 XX ザ・ジャッジメント』という、7体目のオラクルスピリットだったのだ。
確かに、ザ・マジシャンは6体のオラクルの力を集める必要があるとは言ったが、それをどのように使えばいいのかは教えてくれなかった。それは、ザ・ジャッジメントの強大な力に抗うためのものだったからだ。
空が赤く染まり、大地に降り立った無数のザ・ジャッジメントの尖兵の手で、これまでは傷一つつけることができなかった『魂の石板』が、いとも容易く破壊されていく。
ザ・ムーンによれば、尖兵は世界各地に現れているという。このままでは、元凶であるザ・ジャッジメントと対峙するまでもなく、世界の崩壊が完了してしまう。
ダン一人ではどうすることもできない。しかし、6体の契約スピリットたちは諦めなかった。オラクル達の力を借り、世界各地に飛んで、ザ・ジャッジメントの尖兵と戦うことに決めたのだった。
契約スピリットたちがすべて出払ったダンの元へ、契約者Χが現れる。混乱する状況にこれ幸いと乗じ、決着をつけるためにザ・ジャッジメントの眷属である『審判龍エクソダスク』を操り、最後の戦いを仕掛けてきたのだった。
「審判の札は1枚じゃない。切り札は何枚持っていてもいいのさ。今、君と戦う者はいない。いっそカードで勝負でもするかい?」
しかし、ダンにも最後の切り札があった。それは彼の7体目の契約スピリット。ダンは『ブレイドラ』を呼び出す。召喚された2体のスピリットは、世界が崩壊を続ける真っ只中で、二人の契約者の最後の戦いを繰り広げる。
ブレイドラこそ、ダンの最初の契約スピリットだった。ダンと共に戦ってきた経験が、ブレイドラを『刃龍皇ブレイドラゴン』へと進化させる。カイはザ・ジャッジメントの眷属である審判龍で勝負を挑んできた。互角の戦いを繰り広げるダンと。そして、ザ・ジャッジメントの審判が始まる。
カイと戦うダンとブレイドラゴンをよそに、審判の雷が世界に轟く。そのとき、ブレイドラゴンが太陽の輝きに包まれた。
それから繰り広げられた更なる激闘の末、ダンは『太陽刃龍ライジング・ブレイドラゴン』の契約煌臨で、Χを退けた。
「策士策に溺れるとはこのことか…ダン、君のほうが一枚上手だったようだ。完敗だよ」
「いや、コイツが、ブレイドラがいてくれたから勝てたんだ。それに、Χも契約スピリットを連れてきていれば勝負は分からなかった。いい勝負だったよ」
「ぐうの音も出ないな…行くがいい、ダン。どんな結果になろうとも、私は受け入れるよ」
Χは自らの敗北を潔く受け止め、ダンに道を譲る。だが、まだ終わりではない。ザ・ジャッジメントに勝つことができるのか、そして、レクリスの真実に耐えきれるのか…
Χは、そんな不吉な呟きを漏らしたのだった。
ザ・ジャッジメントの元へ急行するダンだったが、その前にテスカトリポカとククルカンが現れる。新たな妖蛇を召喚するククルカンに、連戦になるかと覚悟を決め、身構えたダンだったが、意外にも、テスカトリポカが二人の間に割って入る。
テスカトリポカは、ザ・ジャッジメントが現れた今になってまでも、ダンと敵対する意味はないと言う。訝しむダンに、レクリス創世の真実を言い放つ。
それは、3層に分かたれた世界構造と、2層目の『異界』と3層目の『神世界』が、レクリスの存在によって侵食され、消滅しつつあるという。さらには、ダンがいることによっても、世界の侵食が加速していると。
交わってはならない2つの世界層。ダンは、『神世界』に召喚されるべきではなかった。その事実に、ダンは打ちのめされる。
一方、ダンが不在のまま、ザ・ジャッジメントと対峙する契約スピリットたち。オラクルの力で超契約煌臨を果たした彼らに、創界神ククルカンは加勢する。敵だったはずの相手からの思わぬ提案にも、彼らは応える。
しかし、ザ・ジャッジメントとの力は圧倒的だった。超契約煌臨しているからこそ戦いの形にはなっているものの、そうでなければ、一方的に蹂躙されるばかりだったかもしれない。しかし、このままでは戦線を維持できなくなる。敗北も時間の問題かと思われた、その時。
「待たせたな、みんな! オレは決めた…! レクリスも、すべての世界層も元に戻す!」
レクリスの真実に衝撃を受けながらも、そこにあるすべてのものを守るために、再び決意を決めたダン。その覚悟に呼応するかのように、ザ・ジャッジメントの中から、小さなザ・ジャッジメントが生まれ出で来る。
「フラグジャッジメントッ! 審判の欠片よ! オレに力を貸してくれ! すべての世界層はオレがーー」
激しい轟音と共に、辺りが光に包まれていく。ククルカンも、契約スピリットも。何もかも。
光が収まると、レクリスの空からは、ザ・ジャッジメントも、世界を覆っていたその尖兵たちも消え去っていた。何事もなかったかのように、レクリスは存在している。
しかし、そこにダンや、契約スピリットの姿はなかった。
「…君はまた、同じことを繰り返すのか? こんなことでは終わらないだろう、我がライバルなら、な」
一人残されたΧの言葉が、寂しく響いたのだった。