概要
フグの卵巣を使った石川県の郷土料理の一つで『河豚の子糠漬け』と呼ばれている。
本来フグの卵巣は致死性が高い毒素のテトロドトキシンが多く含まれている為、食用にはできないが二年以上糠漬けにする事でテトロドトキシンが中和されるのか食べる事ができる。
また、糠漬けの後にさらに酒粕に1ヶ月漬け込むと『河豚の子粕漬け』となる。
一般的な魚卵に比べて塩漬期間が長いため、塩気が強いのが特徴かつ味は濃厚で、米飯と共に食べたり、酒の肴として重され、強い塩気を活かしてお茶漬けやパスタなど料理の味付けに活用されることもある。
尚、この仕組みに関しては「卵巣を塩漬けにする際、塩析効果で脂質が分離し水分とともに外部に析出するが、このとき毒素が希釈される」などの説があるが下記画像の三コマ目のようにその原理は未だに解明されていない。
フグ自体特別な資格がないと生きた物を調理することができず、卵巣自体、食品衛生法により食用が基本的に禁止されているため資格を持ったものしか作る事が認められず、この加工法で食品として製造しているのは日本全国で石川県の白山市の美川地域、金沢市の金石、大野地区だけであり、石川県予防医学協会による厳しい毒性検査を通った物だけしか流通されない。
尚、漬け込む期間が二年以上でないと毒性が食用できるまで薄まらず、実際に無免許の加工業者の1年半しか漬け込みしていない糠漬けによる食中毒事件が起きている。
くれぐれも迂闊に食しないように。他の食品にも言えるが、信頼できる物を信頼できる相手から入手すべきなのは言うまでもない。
余談
実は原理が解明されていない(しようとされていない)には理由が存在する
例えば「厳密には2年ではなく2年と1ヶ月ほどでコレこれこういう作用で毒が抜ける」と判明したとして、その結果「たまたま毒性が低かったために2年経たないうちに毒性検査を通過出来たモノ」も全てアウトになってしまうのである。
また「毒抜きするための糠にはコレこれこういう条件が必要」となってしまえばそれ以外の糠で作ったモノは全て回収しなければならなくなる。
そのため「毒性検査はちゃんと通過しているし、事実として中毒者も出ていない」のに定義から外れていることを理由に没になってしまうのである。
そして当然「どれだけ漬けたか」「糠はどんな質か」という記録も正確かつ厳重にとらなければならなくなり生産者達の労力も爆増してしまう。
さらに糠漬けは当然糠の出来栄えも味に大いに影響する。
ちまちまちまちま触った結果糠の出来が悪化してしまえば元も子もないし
毒抜きだけに目を向けた画一的な基準を設けてしまうと、そういった差別化点が全て無くなったり、逆に味が落ちて需要が激減する可能性も存在する。
そしてなにより、研究者もそんな何の利益にもならない研究に金を投じたところで仕方ないため、研究する方も意欲的ではない。
キチンと毒性検査というセーフティが機能している以上は原理そのものは明確にする必要はない。
つまり正確には解明されていないというより解明しないほうがいいと判断されているというのが正しく、世の中には知らないほうがいいことも往々にしてあるのである。
関連タグ
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