曖昧さ回避
- 土佐(高知県)の地誌『南路志』(1813年完成)で紹介された、海に棲むという獣妖怪。※この項で解説
- 紀州(和歌山県)の熊野で伝承される青い犬の怪。※この項で解説
- 中世ヨーロッパの博物誌に書かれる幻獣の名の和訳で、実は小型の鮫といった意味で用いられている。 →サーコス
- アザラシ(海豹)のことをこのように表記することもある。
土佐の海犬
内藤惣三郎という人物が浦役(港湾管理者)を務めていた年の、2月1日の記録にこのようなものがある。
漁師が夜に舟を沖に出して漁をしていると急に波が荒くなり、それと同時に舳先を何者かが囓るような音が聞こえだした。
漁師は必死に舟を漕いで陸にたどり着いて助かったが、朝になって舟を見てみると幅が五分(約1.5㎝)ほどの獣が噛んだような歯形がついており、古老に聞くと海犬の仕業であるということがわかったのだという。
同国の幡多郡では漁師が漁を終えて帰ろうとすると、舟がなかなか進まず難儀した。
様々な神仏に祈ってなんとか帰り着き、舟を調べてみると楫(かじ)の6、7カ所に獣の噛み跡が残っており、牙が二本ほど刺さっていたと瀬尾氏が記録している。
その牙は1本は1寸(約3㎝)~5分(約1.5㎝)の白いものであったという。
紀州の海犬
和歌山県の熊野地方の伝承に伝わる海に棲んでいるとされる妖怪。
全身真っ青な犬の姿をしており、その正体は海で死んだ子供たちの魂が集まった存在。
ようは犬の姿を取った亡霊の集合体で、人が2人以上だと出現しないが、幼い子供が一人で海辺にいると海から現れて海底に引きずり込んでしまうといわれている。
その為、昔から熊野灘の海辺で暮らしている子供たちは「暗くなったら決して海辺にいってはいけない」と強く誡められていたという。
また日没後に浜辺で貝殻を耳に当てると聞こえてくる「ルルル、ルル、ルル」という音は、海犬の泣き声だといわれている。