概要
夜の山道を行く者に背後から付いて来て、転んだりしたところを襲うとされる。
ただし、対処の仕方によっては周囲の危険から護衛してくれるという、意外と友好的な側面もある。
転じて、好意を装って女性を狙うような者のことを「送り狼」と呼ぶことがある。
(これの派生として、誘い受け行為に対して「送られ狼」という表現が使われることもある。)
一般に妖怪の方は「送り犬」と呼ばれる事が多いらしく、「送り狼」と呼んだ場合は慣用的な意味の方である事が多い。
ちなみに、妖怪と慣用句の双方に、今は絶滅したニホンオオカミの習性が関わっているとされている。
というのも、ニホンオオカミは「縄張りに侵入してきた人間を監視する」行動を取る習性があり、走って逃げたり転ぶなど急な動作をすると本能的に襲いかかる反面、ただ歩いている分には襲うことなく縄張りの際まで付いてくるだけである。
しかも、近くに狼がいる間は他の獣が恐れて寄り付かないと言う、大昔の旅人には有難い効果もあったとか。
上記の妖怪・送り狼も古くは人を襲う逸話はあまり無く、主に人を守る妖怪と見做されていた。
また、子育て狼と呼ばれる狼または妖怪も認知され、人間の子供を育ててくれるという(『日本の民話〈10〉残酷の悲劇』より)。
ただ、明治に入って狂犬病が流入しニホンオオカミが狂暴化したことや、「オオカミは邪悪な動物である」という西洋の考え方が流入したことから、妖怪や慣用句にも悪い意味が付与され、現在では悪い意味のみになってしまったと言う見方もされている。
もっとも、各地に伝わる昔ばなしなどを見ると、日本でもやはり狼を危険な存在とみなす考えも少なくなかった可能性がある。同時に、海外でも狼の尊厳を敬うような話もあるのだ。