海鹿
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うみしか
鹿児島県の屋久島に伝わる妖怪。
漁師たちから大変恐れられた南海の人食い怪物で、その昔、山の神たちの大事な集会と宴が開催される旧暦五月十六日に一湊集落のカツオ漁船が島の西北の沖にある屋久曽根という漁場を目指して出港した。
そこには数多くのカツオが海面に群がっており、その予想通りに面白いようにカツオが釣れた。
しかし突然大きな黒いものが波間を横切り、漁師たちは海鹿が現れた事を察知すると慌てて帆を上げ逃げる準備をした。
船は追いかけてくる海鹿から必死に逃げようとするが、逆風の為に船は一向に前に進まず、漁師たちは時間稼ぎの為に釣れたカツオを次々に海へ投げ込むが、とうとうカツオを喰い尽くした海鹿は船を飲み込もうと大きな口を開けて迫って来た。
その時とある1人の漁師が櫓(ろ)で力一杯に海鹿の口を突き、なんとか海鹿を追い祓う事ができ、漁師たちは命からがら港へと帰る事ができた。
それ以来、人々は五月十六日には山だけではなく海に出ていく事も固く禁じることにしたとされ、また正月、五月、九月の十六日にも漁師たちも山師たちと同じように山の神と海の神に赤飯を備えて酒盛りを行う様になったという。
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