留意事項
この記事では、あくまで記事編集者の調べた範囲の事柄を記述している。「淫紋」は作者並びに作品ごとにさまざまな設定づけがなされており、また発展も著しい用語であるため、鑑賞の際にはここに記した項目を云々するよりも、作品における設定や解釈を理解・尊重するように心がけ願いたい。
淫紋の概要
冒頭に書いた通り「性的な意図をもって体表に描かれた紋様」である。
最もポピュラーなものは、女性の下腹部、ちょうど子宮の上あたりに描かれているものだろう。この位置にある紋様というだけで内性器を暴く意図を持ち、淫紋だとされることも多い。
同様に性的な部位である臀部や乳房に施されるケースも見られる。また、そこだけに留まらず手足など他部位にまで紋様が及んでいる大規模なものもある。ただし、他の条件を満たすことで、性的な要素の薄い部位に施されていても淫紋と見なされるものもある。
形状もさまざまであるが、ハートマークないしはそれに近似した意匠が描かれるケースが多い。下腹部に描かれるものは特に子宮のメタファーととれるため、膣、子宮、卵管や卵巣などを意匠化したものが付属しているものもポピュラーである。
ただし、あまりカラフルな図柄の場合はファッションとしての刺青やタトゥーと捉えられやすくなる。また、メッセージを伝えるような文字もただのタトゥー、もしくは身体に落書きの要素が強くなる。
一枚絵で表現される場合は、どこかしら性的な部位を強調しているか、もしくは性を思わせるデザインのものを淫紋とし、そうでなければただの刺青やボディペイントなどに区別される場合が多い。
一方でストーリー性を伴う作品においては、洗脳や発情など性的な効果を伴うことで淫紋と扱われるものもある。この場合、顔や首などのあまり性的でない部位や、幾何学模様や魔法陣などの性を思わせない図柄で施されていても、効果が淫らであるために淫紋と受け取られる。
対魔忍ユキカゼで用いられた、洗脳ナノマシンの作用として舌に浮かんだ幾何学模様は、部位・図柄とも性に直結しておらずとも淫紋と見なされる好例といえるだろう。
単に禍々しいデザインの紋様が体に描かれているなら何でも淫紋と扱っているケースもあるが、淫紋ジャンルのファンからは異論が上がる。明確な定義がされている語ではないが検索妨害と感じられかねないため、タグ付けにあたっては紋様に淫らな要素が含まれるかを考慮すべきだろう。
淫紋の施し方
肌に筆などで描かれるもの、刺青として彫られるもの、呪術などの影響で肌に浮かび上がるもの、焼印やレーザー刻印で刻むもの、何らかの人体改造の一環で生じるもの、あるいは淫魔など異種族の身体的特徴であるものなど、その施し方は多岐にわたる。この手段で施されたものが淫紋である、といった形の定義づけはされていない。
淫紋の用途
淫紋は呪いや人体改造など何らかの効果や作用を持っているか、もしくはそれら効果の象徴として存在することが多い。
抵抗を無力化したり、発情や感度上昇させるなど、身体や精神へ干渉して性的屈服を促す効果をもっているものパターンか、もしくは受精したり敗北を認めたり、別の手段による洗脳や人体改造などが完了した際に、心身の屈服の証拠として発現したり、図柄が変化するパターンが代表的である。
現実における刺青や焼き印は、施すにあたっての苦痛や容易には消えない性質から、犯罪者への刑罰、虜囚・奴隷・家畜の個体識別および所有証明、暴力団が彫っているもののような組織への帰属・忠誠の証として用いられることがある。
淫紋も同様に、性的な効果を伴って対象を苛む術として、あるいは施術した者との所有・支配・性的屈服・婚姻・受胎といった関係性や、施術者の仲間となったことの証明としての意味を付して描かれることが多い。
また、下腹部にあえて女性器の図表を描くことで、本来隠すべき秘部をあばき、対象者の羞恥心や被虐心を煽る目的もある。
魔法や超科学のような効果はなくとも、単に性的興奮をそそるためのファッションの一つとして用いられることもある。実際の例としては、海外では黒人への性的隷属の意思表明として、スペードのクイーンのタトゥーを用いている例がある。
関連する英語表記
股間から下腹にかけての刺青を「crotch tattoo」と呼び、淫紋を扱った作品にもこの語がつかわれているようだ。
ただし、あくまでその位置への刺青を指す呼び名である。
昨今は海外のアニメファンでも「淫紋」について取り上げられるようになり、「Womb tatoo」(「『子宮を象った』入れ墨」)や「Lewd crest」(「いやらしい紋章」)と呼称されるようになった。
その他
・「臍下の刺青」を意味する「under stomach tattoo」
・「子宮をかたどった刺青」を意味する「uterus tattoo」
などの表し方がある。
商業メディアでの扱い
- 複数の官能小説やアダルトゲームで淫紋の語が用いられ、タイトルなどにも採用されている。
- 一部の非アダルト作品のキャラクターにも淫紋ジャンルで多用されるデザインが使われており、消費者から淫紋っぽいと扱われるケースがある。作中で直接淫らな要素はない(多分)が、お腹に紋様のあるクロエ・フォン・アインツベルンやレウィシア・アクアブルー、悪堕ちした際に禍々しいハート型の紋様が浮かんだ加賀美ティナ(マジンフォーム)などが該当する。
- 模型界隈では、ホビージャパンから『INMONデカールセット』なる水転写式デカールシールが販売された。ハート形をベースにした紋様が複数パターンあり、中には卵巣や膣道を意匠化したような紋様もあって、お手元のフィギュアなどをいやらしくドレスアップできる。
発祥
淫紋という名称は、pixivユーザーでもあるさこ氏の作品が初出であるとされている。
参考:https://togetter.com/li/1391950
ただし、性的支配や洗脳の証で入れ墨状のものが浮かぶ表現自体は、それ以前にも用いられていたようだ。
商業作品において(現代において一般的なそれと同じ)淫紋の登場が確認できる最古の例は2005年の小説『淫堕の姫騎士ジャンヌ』であり、淫紋という名称こそないもののこの作品が初出という説が有力。
参考イラスト
肩のものはタトゥー、腹部のものは淫紋と解釈されやすいだろう。