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概要

 原作小説版に沿って記述する。映像化作品では異なる設定も取り入れられている。

 生まれながらにして他者の心を読むことのできる、テレパシー能力を持つ女性。

 三部作中は、『家族八景』では住み込みの家政婦、『七瀬ふたたび』前半ではバーのホステス、『エディプスの恋人』では高校の事務職員として働いていた。それぞれ18-19歳、20歳からの約2年、23歳のときの物語である。


 両親をすでに亡くしており、母の実家とのつながりは残しているものの、ほとんど天涯孤独の身。彼女が高校2年の時に死去した父親の精一郎は超心理学の被験者として高いスコアを挙げたことがおり、ある程度の超能力があったらしい。彼女の能力には何らかの遺伝的要因もある模様。


 生まれ持ったテレパシー能力だが、その力に「恵まれた」とは自らは受け止めていない。当初は視覚や聴覚と並ぶ自然な感覚の一部とも思っていた。彼女が「掛け金をはずす/おろす」と名付けた内心の作業によって能力を制御しているが、他者の思念が余りに強い場合は遮断しきれないこともあった。表面からは隠された人の心の暗部を見せつけられたり、なまじ人の心が読めるためにトラブルに巻き込まれたりすることもしばしばである。他者の思惑を知っていても、能力がバレてはならないため手を打てずにいることも多い。

 というのも超能力者であることが人に知られるのを何よりも恐れている。異質な存在として世間から爪弾きにされ、中世の「魔女狩り」のような迫害を受けるかもしれないという懸念からである。『家族八景』で家政婦としてさまざまな家庭を渡り歩く生活を送っていたのも、一所にとどまればそれだけ自分の能力が知られる危険が高くなると考えてのことであった。

 超能力者としての正体を隠すことはかなり優先度の高い行動原理になっている。今にも火葬されようとする死者が、実は棺の中でまだ意識があることをテレパシーで感受したことがある。だがそれを告げても到底信じてもらえないか 、そのために自身が超能力者であることがバレてしまうのを恐れ、呵責に苛まれながら見殺しにしてしまった経験もあった。

 こうした事情からテレパシー能力は自分の身を守る以上の目的には役立てず、基本的に私欲を満たすために力を利用することはない。ただし超能力者仲間たちとの共同生活の資金稼ぎとしてマカオのカジノでこの力を用いて大金を得たことがあり、これが結果的に能力露見のきっかけを作ってしまう。


 類稀な美貌の持ち主。肉体的に未成熟だった家政婦時代には可愛らしくはあっても「小娘」扱いされることも度々だったが、20歳の誕生日を迎える頃にはすっかり女性としての成熟を遂げていた。異性の自分に向けられた意識を読むことで、自らが相当な美女であることをいやでも自覚せざるを得なくなっている。控えめに言っても「どんな美人コンテストに出てもまず3位以内には入る」程度だという。そのせいで男性のエロティックな視線にさらされることがあまりに多く、その生々しい欲情の中身までテレパシーを通して見せつけられてきたため、彼女は自らの美しさを必ずしも肯定的には受け止めていない。


 その能力上、他者の内心に隠された欺瞞や暗い情念を知る機会を持ちすぎてきたため、人間全般を冷めた目で見がちである。ある種の潔癖さからか、欺瞞の上で平穏と均衡が成り立っているような人間関係に見ているだけでも耐えられず、テレパシーで知った情報をもとに、その欺瞞が明るみに出てトラブルが表面化するように画策したこともあった。

 こうした経緯から孤独感は避けられず、心許せる同胞は同じ超能力者しかいないものと感じている。『七瀬ふたたび』では他の種類の能力をもった超能力者たちとの出会いがメインテーマとなった(ただし中には超能力を悪用して私欲を満たす、彼女とは相容れないタイプの人間も登場する)。

 気質ゆえか境遇ゆえか、「超能力者は何のために存在するのか?」と哲学的に問うこともある内省的な性格。学歴は高卒ながら、知的能力はかなり高い。おおむね状況は論理的に分析する。自分の能力について知るため、高校時代に超心理学方面の英文の学術書を取り寄せ、読み漁ったこともある。その頃にハイデガーなどの哲学書も読んでいた。


 『七瀬ふたたび』後半では彼女自身や仲間たちが超能力者であることを、「超能力者は人類にとってあるまじき存在であり、淘汰されなければならない」という思想を持った秘密組織に知られてしまい、命を狙われる身となる。

 その果てに仲間たちも皆殺しにされ、自らも命を落とすことになったかに見えた彼女が、次作『エディプスの恋人』で再登場し、高校の事務職員として働いているのは何故か……?

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