花梨(鬼の花嫁)
かりん
人物
開始時点で高校2年生、鬼に次ぐ上位のあやかしである「妖狐」の同学年狐月瑶太の花嫁。
平凡な容姿の柚子と対照的に、ピンクブラウンに染めたショートボブ、髪の毛から爪先まで一部の隙もなくサロンで完璧に整えた美貌、甘え上手で社交的な可愛らしい美少女。
漫画版は、柚子とあまり似ておらずツリ目気味で母親似のカールした髪質、幼少期~小学生までは頭頂部に大きなリボンをしていた。
あやかしと富裕層の人間が通うかくりよ学園初等部(学年は不明。)で、上位のあやかし狐月瑶太の花嫁に選ばれる。
狐月家は鬼の次に地位の高い妖狐一族でも上位分家であやかし全体でも上位に位置しており、花梨が周囲に気を使う必要性が全く無く、あやかしの階級や上下関係を学ばなくても周囲が(後ろ盾の狐月家を恐れて)、花梨の言いなりになる特別扱いの中で成長してしまう。
瑶太から溺愛されるだけでなく、美貌と社交的な性格に文武両道な成績から「花嫁に選ばれるにふさわしい特別な存在」と、もてはやされて順調な人生を歩む。
しかし狐月家より格上(あやかしの頂点)である鬼龍院家の花嫁に選ばれた姉(柚子)を実家に連れ戻し、破談にして花嫁を辞めさせ、柚子を自分より下の立場に戻したいという性格の悪さにより転落していくこととなる。
性格
両親と瑶太から、溺愛され一度も叱られず育ったため、非常に我儘な性格。
花嫁に選んだ瑶太は元より、花嫁として幼い頃から学校でも特別扱いされたこと、両親が何かにつけて「花梨は花嫁だから特別」、「花梨は特別扱いするのが当然」と偏愛したことで「花嫁の自分が願ったことは皆叶えるのが当然」という傲慢な思考になってしまう。
姉の柚子を召使いのようにこき使うだけでなく、誕生日を祝う言葉すらかけず誕生日プレゼントを嫌がらせで奪おうとする酷い仕打ちをしておきながら、柚子が花嫁に選ばれて実家を脱出すると「また、家族皆で実家で仲良く暮らしたい」という言い分で柚子を無理やり実家に連れ戻そうとしつこく婚約を妨害する。
花嫁ではない柚子を見下して優越感に浸っていたため、柚子が自分より格上のあやかしの花嫁に選ばれると、「何かの間違い」、「お姉ちゃんなんか花嫁に選ばれる訳がないのに」と頑なに認めようとせず、最後まで柚子に花嫁を辞めさせようとした。
(実際には、どんな醜い女性だろうと花嫁に選ばれる可能性はあり、花嫁の序列は嫁ぎ先のあやかしの序列に比例するため、花梨が柚子に対して「柚子様」、「鬼龍院様の花嫁」と敬わなければならない立場になったことが我慢できないという嫉妬心に過ぎなかった。)
派手な外見に反して瑶太を一途に愛しており、冒頭で柚子が元カレに振られたのは遊びに来た元カレに挨拶しただけの花梨に勝手に元カレが惚れており、花梨は一切元カレを誘惑していない。
進学先のかくりよ学園でも花梨に憧れる生徒は男女問わず多かった上、高い偏差値を誇るかくりよ学園で文武両道・成績優秀・美人で非の打ち所がない花嫁と周囲に絶賛されていたので外面は良かったと思われる。
周囲の友人が狐月家を恐れる、イエスマンや取り巻きばかり、対等な瑶太は花梨の我儘も暴走も容認してくれる環境から手遅れなほど性格が捻じれていき、更生が困難になってしまう。
漫画版は柚子が気弱な性格に変更されて発端となる事件が起こらない可能性があったためか、瑶太の性格と共に悪役らしい攻撃的できつい性格に変更されている。
かくりよ学園の人気と瑶太の愛情はともかく、狐月家と妖狐の当主である狐雪撫子からの評価は芳しくない。
花嫁の権利ばかり要求して義務を殆ど果たさない、実家に借金も無いのに婚約者の実家をATM扱い、家庭内で姉イジメ、花嫁だから自分は特別な存在とあやかしにも強気な態度という有様なので、花梨が同居を嫌がったのは花嫁の義務や勉強が嫌だったのかもしれない。。
第一部後半でお願いを叶えてくれない環境になるや婚約解消一歩手前の危機的状況なのに言いつけを守らず、脱走しようとして「花嫁の自分を大切にしてくれない」と逆ギレしたり、狐月家で問題行動を起こして嫌われてしまう。
瑶太は変わらず花梨を愛していたが、瑶太と花梨の犯した罪が狐月家を滅ぼしかねない重罪だったため、使用人たちは花梨の反省の無い態度や当主の撫子に庇ってもらった善意に不満たらたらな様子から厳重に監視され、宴会当日を迎えることとなる。
原作の瑶太は宴会当日花梨の横で不安そうにしているだけだったが、漫画版では花梨が柚子を睨んでいるのに気が付くと、抱き寄せ柚子のいない方に連れて必死に接触しないようにすると一定の努力は描かれていたが、その様子から宴会直前まで柚子に対する敵意を隠さなかった模様。
原作の性格は良く言えば無邪気、悪く言えば幼稚。
花嫁なのにあやかしの一族を巻き込む事件を起こし、自分の婚約者が姉に大火傷を負わせても罪悪感が全く無く、狐雪撫子に更生しなければ瑶太の花嫁にすることはできないと警告されてしまったほど。
しかし花梨は上記の警告と瑶太が警告以降花梨を叱るようになってから「皆が急におかしくなった」と困惑する始末だった。
柚子を見下したり、イジメることを悪いことと自覚していない節があり、柚子と最後に決別したのも柚子の言葉に逆上し、冒頭の柚子と対照的に花梨が癇癪を起こして決定的なことをしてしまうという結末になっている。
経歴
産まれた時から両親の愛情を一身に受け、姉妹仲もすぐに歪んでしまう。
小学生で同学年の瑶太の花嫁に選ばれ、両親からより偏愛される。
両親が花梨を褒めて柚子を貶す歪んだ褒め方や教育をした結果、柚子を見下すようになって使用人同然にこき使うようになる。
漫画版では(自分は、何一つ支度を手伝わなかったにもかかわらず)柚子が焼いた夕食のステーキが固すぎると文句を言い、スーパーで買い直して作り直せと店員に怒鳴る客のような言動をした上、家族はおろか婚約者の瑶太すら花梨に従って柚子を責めるという向かう所敵なしだった。
そして、柚子が祖父母から誕生日で貰ったワンピースを奪おうとし、引っ張り合いの拍子でワンピースが裂けたことでショックを受けた柚子から平手打ちを喰らう。
騒ぎに駆けつけた両親に「ワンピースを貸してほしいと言ったのに貸してくれなかった、わざと破いた訳じゃないのに叩かれた」と泣いて大騒ぎし、柚子が激怒した瑶太から火傷を負わされる姿を見て嘲笑する。
(原作では表情が描写されていないが、大火傷した柚子を放置して瑶太と一緒にリビングに立ち去ったので異常な言動には違いない。)
その後、柚子があやかしのトップである鬼龍院玲夜の花嫁に選ばれたことで立場が逆転。
今まで柚子に無関心だった両親たちが掌返しで柚子(経由で鬼龍院家)から資金援助を貰おうと態度を一変し、瑶太も玲夜から一方的に燃やされ無様にやられてしまう。
「花嫁になっていいのは自分のような特別な存在だけ」というプライドから、平凡で見下していた柚子を鬼龍院家から実家に連れ戻し、花嫁から降ろそうと画策。
しかし全工程を婚約者の瑶太とその実家(鬼龍院家より格下)に頼るという杜撰な計画で、自分を愛する瑶太を利用する最低な計画が失敗すると窮地に立たされる。
動機は柚子への嫉妬心なのだが「鬼に騙され利用されている柚子を助けて連れ戻し、家族皆でまた一緒に暮らしたい」という体で動き、本音の嫉妬心を認めなかった。(柚子と瑶太には本音を最初から見抜かれていた。)
鬼と妖狐の争いに発展しかねない行動と花嫁の権限を悪用する様に、玲夜だけでなく妖狐一族の当主・狐雪撫子の怒りも買って狐月家で強制同居・監視されることとなり、次に柚子に接触したら花梨を花嫁から降ろし、瑶太と永久に接触禁止という罰を通達される。
漫画版では狐月家の屋敷で「外出はなりません」と常に使用人にはりつかれ、癇癪を起こして暴れる花梨に瑶太が抱き寄せ必死に宥めるという、地獄のような同居生活が描かれた。
何でもお願いを聞いてもらえて自由な実家に帰りたいと駄々をこねるも、瑶太にとっては花梨を失うことだけは絶対に避けたいためお願いを拒否されるように。
当主の撫子に庇われ婚約を維持できている危機的状況かつ、瑶太と花梨の柚子誘拐で狐月家の使用人たちから霊力をかき集め、結果的に誘拐に加担させた罰を狐月家全員が受けている状況から、花梨を見る目は非常に厳しいものだった。
漫画版では、「花嫁は嫁ぎ先で大切にされるはずなのに、この家は皆私を責める目をするから嫌い」と花梨は不満を口にしている。
さらに両親たちから、「花梨が柚子に謝れば解決する」、「狐月家からの資金援助を打ち切られ、引っ越し命令されたから柚子しか頼れない」と一転して責められ、今まで花梨のおかげで贅沢できたのに冷たく突き放される。
連れ帰ってくれと懇願する花梨を無視し、両親は柚子をかわいがろうとするようになったことで癇癪を起こし、瑶太と両親の変化を自分の罪だと顧みようとせず「全部お姉ちゃん(柚子)のせいだ」と逆恨みを加速させてしまう。
あやかしの宴会最終日に女子トイレで柚子を待ち伏せし、罵声を浴びせて今までのように命令。
「花嫁なのは間違い」、「実家に戻って」と促すが、本心を見抜かれた上に絶縁を言い渡される。
逆上して柚子に「両親に愛されない子」、「私の機嫌を伺うしか価値がない」と罵倒するも、実家に依存しなくなった柚子には通じず「今が一番幸せだから」と穏やかな笑顔で返されてしまう。
(花嫁になって、すぐ同居した柚子は自分のように同居先で辛い目に遭っているかと思いきや、実家にいるよりも晴れやかな笑顔で、自分との格差を感じて余計に惨めになったのもあっただろう。)
立ち去ろうとした柚子を怒り任せで階段から突き落とすが、寸での所で玲夜に柚子は救われる。
しかし玲夜や瑶太だけでなく、両家の当主である鬼龍院千夜(玲夜の父)、撫子も一部始終を目撃したため、前述の罰通りに撫子から花嫁の地位を剥奪され、両親共々遠い土地へ追放された。
原作では婚約解消させられた瑶太が号泣して離れたくないと花梨を強く抱きしめ、花梨は呆然として「えっ」と言っただけで終わるというあっさりとした顛末。
漫画18話追加 瑶太との別れ
漫画版18話では、原作で描かれなかった二人の別れの場面が追加された。
撫子から追放を宣言され、柚子の背中に罵声を浴びせていたが泣き崩れていた瑶太が立ち上がる。
「花梨、俺たちはもう一緒にいられない」
その言葉を最後に瑶太は花梨の言葉に振り返らず、背中を向けて立ち去ってしまう。
花梨の背後に狐月家の使用人たちが現れ、花梨はようやく現実を認識する。
遠ざかる後ろ姿に泣きながら何度も呼びかけるも、瑶太は遠ざかっていく。
走馬灯のように花梨は瑶太と出会った時、同居で癇癪を起こす花梨を宥める瑶太の言葉、柚子の花嫁に対する考え方の言葉を思い出し、自分を顧みるチャンスを何度も台無しにしてしまったのだと自覚する。
瑶太の背中に最初は恨み言をぶつけるが、振り返らない瑶太に次第に震えて縋るような言葉になっていく。
見捨てられて独りぼっちになった花梨の声だけが響くのだった。
「行かないでよ、瑶太ぁ――」
原作でも、描かれていない花梨が花嫁に選ばれた時の場面は、歪む前の無邪気で幼い瑶太と花梨がずっと一緒に幸せな未来を歩めると、そう信じて疑わない瞬間だった。
その後(漫画版ネタバレ注意!)
(以下スクロールにて掲載)
花梨は資金援助を打ち切られた両親の所へ送り返され、国内の遠方へ追放された。
一度贅沢を覚えた両親や花梨は狐月家の資金援助を失い、親族全員から絶縁されて困窮する。
人間の誰もが知っている鬼龍院家と狐雪家を敵に回した両親が再就職するのは非常に厳しかったと思われ、花梨も退学になっているため、アルバイトをさせられた可能性が高い。
(漫画4巻特装版書き下ろし小説にて、花梨が退学処分になったことが明かされている。)
原作3巻で瑶太は再登場するも花梨は登場しない。
その時点ではまだ柚子を恨んでいたようで、花梨と瑶太と共通の友人で幼馴染である、妖狐の女子生徒の菖蒲から「今、花梨ちゃんがどんな想いでいるか」、「瑶太は花嫁(花梨)を失って衰弱していっている」と柚子を糾弾する理由となってしまっている。
花梨が花嫁を降ろされた理由が柚子にあると菖蒲と花梨の友人グループがかくりよ学園中に噂をばらまいたことで、かくりよ学園ほぼ全部の生徒から柚子が嫌われるという形で周囲が報復してしまう。
もっとも、菖蒲のように本心から花梨と瑶太の復讐をしようとしたのはごく少数で、桜子と鬼の学生が警告したことで噂を表立って口にする者は殆どいなくなってしまった。
特別扱いされている柚子への嫉妬や反感、鬼龍院家を普段攻撃できないため瑶太を擁護する振りをしてバッシングできると便乗していたのが大半に過ぎなかった。
原作5巻で引っ越した両親と柚子は再会するが、転居先に花梨の姿は無かった。
花梨が、どこにいるか詰問しても両親は「知らない」、「あんな娘」と花梨を見捨てている様子だったが…、その後、玲夜の口から下記のことが語られる。
・瑶太の庇護を失って家庭の歪みに気が付き、家を出た。
・今は、別の所で無事に過ごしている。
・会いたいなら、いつでも会わせられる。
・(玲夜が会わせられるほど)内面が成長した。
柚子は会わない選択をしたので、姉妹対面は叶わなかった。
原作8巻(新婚編3巻)、作中5年の時を経てついに妖狐の当主・撫子と柚子の赦しを得て再び、瑶太の花嫁になる。
瑶太は5年間ずっと花梨を物陰から見るだけ(接触禁止令を破らないよう)、花梨も5年間一目も会えない瑶太を一途に想っていたのが妖狐一族の心を打ち、撫子に直訴するほど二人を復縁させてほしいと味方が出来るほど更生した。
柚子も玲夜も「本能がある瑶太と違って花梨は新しい相手を見つけているのでは?」と思っていたが、よくよく考えれば人間の男性はあやかしほど強烈に愛してくれないだろうし、容姿も瑶太より下と思えば花梨の心が靡かなかったのも当然かもしれない。
諦めず想い続けた花梨と瑶太が報われる一方、花嫁との結婚を諦め、あやかし同士の恋愛に行ったあやかしが本能で苦しむ様子が描かれ、対照的な様が描かれている。
両親に愛される妹、姉をイジメたり見下すことで優越感に浸る、自分より姉が幸せな結婚をするのが許せず妨害する、姉の婚約破棄を狙って悪事を働いた結果破滅して遠く離れた土地に追いやられる、現状再登場していないといった共通点がある。
容姿もウェーブした髪でツリ目、姉を見下し馬鹿にする表情が多いといった共通点がある。
此方は姉と自分の婚約者を入れ替えようとする、婚約者との間に愛情がないといった面でより救いが無い。
毒親に偏愛と「特別な子」「愛されるために生まれてきた子(複数の異性から必ず愛される)」という歪んだ思想を植え付けられた、自分の地位や特権を濫用して気に入らない人間に暴力を振るったり精神的に虐める、自分の思い通りにいかないと癇癪を起こして暴力を振るう、自分の味方でいてくれる異性を常に傍に置いて振り回す、終盤周囲に見放されて立場を失う、全てを失って更生してから想い人とよりを戻して結ばれるといった共通点がある。
容姿も作中で「美人」と何度も称されるほど整っており、ツリ目も共通している。
自分より立場の弱いきょうだい(此方は弟と妹)を見下して威張り散らしきつく当たる、自分より劣った兄が優遇されることが我慢できず次期当主から引きずり降ろそうとする、相思相愛のパートナーには可愛らしく甘えて性格の長所も見せる、親兄弟が絡むと敵対心をむき出しにした嫌味な言動に豹変するがパートナーには変わらず愛情を注がれる、最終的に大切な存在を失う(此方は最愛の夫と息子を殺されるという救いのない結末)と共通点が多い。
明日香:『ゴミ屋敷とトイプードルと私』
両親に溺愛されて育つ、姉を見下す。
最終的にそれまで好き勝手に生きてきたツケが回り破滅するという末路をたどるというのが共通。
ただし、こちら(明日香)のほうが主人公である。