概要
底の抜けた大きな湯のみを横にして豚に似た形をしたような蚊取り線香用の器で、夏を特徴づけるアイテムとして描かれる。
ルーツ
常滑焼土管説
愛知県の常滑焼(とこなめやき)の職人に伝わる話では、養豚業者が蚊を防ぐため、土管に蚊取り線香をいれて使っていたという。
常滑市は、明治から昭和時代にかけて土管の生産量で日本一を誇った地域で、身近なものを活用していたということになる。
しかし、土管は口が広すぎて煙が散ってしまうので、口をすぼめてみたら豚の姿に似てきた。そこで地域の焼き物である常滑焼で作り、お土産として販売したところ、昭和20年代から30年代にかけて爆発的に人気が出て、全国に広まったという。
今戸焼説
新宿区内藤町の江戸時代後期の遺跡から蚊取り豚らしきものが発掘されている。現在のものより長細く、イノシシのような形だった。
当時は、枯葉やおがくずなどを燻した煙で蚊を追い払っていたので、入れ物は大きめの徳利のようなものを使っていたと考えられ、徳利を横にして「豚に似ている」と思いついたのではないかとされている。
この蚊取り豚は、東京の今戸焼(いまどやき)で、浅草の土産物として売られる土人形と同じ素材のため、蚊取り豚も土人形と同じように焼かれて、土産物として全国に広まったとも考えられている。