概要
昭和4年8月~昭和5年6月まで『講談倶楽部』で連載された、江戸川乱歩の著した推理小説。
自身の好みのタイプである女性を殺害し、その遺体を芸術作品に作り替えてしまう事を趣味とした“蜘蛛男”を名乗る連続猟奇殺人鬼を追う、明智小五郎シリーズの「通俗もの」代表作で、本作をえて明智小五郎はより一層ヒーロー化し、以降は異形の怪人たちと対決する正義の味方としての人物像が定着していった。
あらすじ
東京Y町に新しく開店した美術商「稲垣商店」の事務員募集にやって来た里見芳枝は、店長の稲垣平造と出かけたきり、行方不明となった。やがて芳枝は石膏像に塗り込められたバラバラ死体となって発見され、彼女の姉である絹枝も殺害され、江の島の水族館の水槽に魚と共に浮かべられてしまう。
実は稲垣の正体は自身を「青髭」になぞらえる殺人鬼「蜘蛛男」で、一連の犯行も動機など一切なく、ただ単に自分の好みにかなった女性たちをターゲットに芸術を披露していたに過ぎなかったのだ。
捜査が難航する中、久方ぶりに日本へと帰国した明智小五郎は、客観的な状況証拠から稲垣の正体を看破。捜査に乗り出す事となる。