概要
当時社会問題になっていた乳幼児連続遺棄事件をモデルにし、「子供を捨てる親がいけないのか?親にそうさせる社会がいけないのか?」といった問題提起を投げかけるホラーエピソード。
1974年には、劇場用に再編集され『ウルトラマンタロウ 血を吸う花は少女の精』として公開された。
予告
捨て子塚にひっそりと咲く赤い花。血を求め闇を這う恨み花
連続する吸血鬼殺人事件の真相は何か?
白鳥家が危ない、いずみの危機
あどけない少女かなえの正体は何?
来週のウルトラマンタロウ『血を吸う花は少女の精』
みんなで見よう!
STORY
世間ではこのところ、体中の血液を抜かれて人間が殺される連続吸血事件が多発していた。
しとしとと雨が降りしきる梅雨のある夜、巡回中の警官が何者かに襲われ死亡した。
警官の耳の中からは血が流れており、すぐ近くの寺には赤い花の咲いた蔦の絡まった「捨て子塚」と書かれた石碑が立っていた。
頭を悩ませた警察はZATに調査を依頼。警官が殺された寺の境内で調査をするが、怪獣が出現した痕跡はない。
東光太郎は夜勤明けの疲れもあって、人間の犯罪事件として帰ろうとしたが、赤い花を手にした一人の少女が車道へ飛び出してきた。
トラックにひかれそうになった少女を間一髪、光太郎は助け出す。光太郎は少女に注意するが、その少女・かなえは聞く耳を持たなかった。
光太郎はかなえを家に送ろうとするも、彼女の教える場所はすべてデタラメなもので困り果ててしまう。そんな中、ZATの女性隊員・森山いずみ隊員が光太郎の下宿先である白鳥家にお手伝いにやって来た。
森山隊員はかなえを見て、昨年ZAT本部の見学会に招待した施設の子供であることに気づく。かなえは親に捨てられ施設に預けられており、里親の下へ引き取られたのだった。
森山隊員の情報でかなえの身元が判明。かなえの里親である岩坪家は資産家で何不自由ない家庭環境だったのだが、かなえは岩坪夫婦に心を開かず、度々家出していたのだった。
新聞でも捨て子の記事が書かれており、ZATでも意見が交わった。
「子供を捨てた親が悪い」「でも捨てたくて捨てる親はいない」
さすがのZATでも社会の矛盾に答えを見出すことはできなかった。
その夜、不気味に赤く発光する花と蔦が白鳥家へと迫っていた。蔦は昼間、かなえからもらった花と合体し森山隊員と白鳥健一に襲い掛かる。夜勤で光太郎がいないため二人で蔦の侵入を防ごうとするが、蔦は襖を破って二人に迫る。しかしその時、白鳥家の近くを通りかかった酔っ払いたちが蔦を切ったことで何とか事なきを経た。
動かなくなった花からは、まるで血のような黒い液体が流れていた…
花を基地に持ち帰った森山隊員。基地で解析が始まった。その花を見て、昨日かなえが持っていた花であることに気づいた光太郎は、岩坪家に電話するも取り持ってくれなかった。そして里親はかなえから花を取り上げ、捨ててしまった。
やがて花の正体が発覚した。この花は危険な吸血植物であり、赤い色素は血液であるヘモグロビンによるものだった。
一連の吸血事件の犯人がこの花だと睨んだZATは再び岩坪家へ電話する。しかし誰も出ない。
それもそのはず。岩坪夫人は蔦にからめとられて死亡しており、それを窓の外から表情のないかなえが見つめていた……
光太郎はウルフ777で岩坪家に急行。だが道中、親子連れが問題の花を持っているのを見つけた。
何と、かなえが親子たちに花を配り歩いているのだった。
光太郎は急いで親子たちに花を捨てさせ、かなえを問い詰めた。だがかなえは何も言わない。他の隊員の通報で花が咲いている場所が見つかったと知り、光太郎はそちらに向かう。
それは先の事件で警官が死んだ近くの寺にある「捨て子塚」と呼ばれる塚で、捨てられて死んだ子供たちを供養するために建てられたものだった。吸血花は土葬された子供たちの死体から養分を吸収して成長し、やがて子供たちから養分を取れなくなると、自ら栄養補給のために動き出したのだった。
光太郎たちは吸血花の茎に鉈を振り下ろし、切断しようとする。その時
「お兄ちゃんのバカ!」
近くの墓地にかなえがおり、そう叫んで走り去っていった。
直後、不気味な赤ん坊の泣き声が響き、地底から蔦怪獣バサラが現れた。
バサラは塚に埋葬された子供たちの怨念が取り憑いたかのように暴れまわる。
光太郎はウルトラマンタロウに変身。蔦攻撃に苦戦しつつもストリウム光線でバサラを倒した…かと思われたが、直後幻影のような姿になって復活を果たした。
親に捨てられた子供たちの怨念なのか、どこからともなくお経が流れ、捨て子塚のあった寺を燃やす。
それを見届けるとバサラの全身は炎上し、消滅したのだった。
事件は解決し、吸血花は消滅した。
かなえは再び施設に一人で戻ったという。
そして、かなえは再び赤い花を求めて、剪定ハサミの音を響かせながら墓場を彷徨い歩くのだった……
カチッカチッ