概要
1971年から1974年にかけて制作された、
『ウルトラマンA』
『ウルトラマンレオ』
の4作品の総称。
『ウルトラセブン』終了後、怪獣ブームの衰退によって一時は休止に追いやられたウルトラシリーズだが、低予算番組『ウルトラファイト』の予想外のヒットによって復活の機運が高まり、『セブン』放送終了から2年半の歳月を経てシリーズ再開。
未来を舞台としていた全作までとは一変し、現代を舞台とした作品作りとなっている。舞台設定は明確ではないが、後年の作品では1971年の出来事とされ、作中でも1971年の世相を反映した世界観作りが成されている。この作品から近未来の設定で世界観も独立していた『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』が同一世界の出来事という設定になり、時代設定も放送当時と同じという扱いになった。
『帰ってきたウルトラマン』は当初、本当に初代ウルトラマンが帰ってきたという設定で製作予定だったが、新キャラにすることで2キャラ分の玩具を売りたいというスポンサー側の都合から、「初代ウルトラマンにそっくりの別のウルトラマン」に急遽変更されてしまったのである。タイトルの変更は間に合わなかったので『帰ってきたウルトラマン』がそのまま採用されることになった。今となれば、ここで別人にしたことでシリーズの幅が広まったと言えなくもないかもしれない。
このシリーズからウルトラ兄弟やウルトラファミリーの設定が誕生し、4年間も続くロングランとなった。個々の作品も個性豊かな内容である。また、手持ちの武器や怪獣や戦士が再登場するなど、過去作との絡みが強く、近年のシリーズに言われがちな点は既にこの頃から行われている。そういう意味では、近年問題視されがちな部分は昭和2期からの課題である。
さらには、『A』でウルトラの父、『タロウ』でウルトラの母、『レオ』ではウルトラマンキングという後のシリーズでの重鎮達が登場したのもこのシリーズである。
他の円谷プロ作品と設定を共有しようという試みもこの時行われ、『ウルトラマンタロウ』では『ミラーマン』に登場したゴルゴザウルスの同族が、『ファイヤーマン』には『帰ってきたウルトラマン』に登場したグドンがゲスト出演したものの、あまり定着しなかった。
よりウルトラマンが密接に関わるストーリーとなった一方で、そもそも過去作のヒーローとの共演という試み自体が当時の特撮界隈にとっては画期的なものであったため、過去作のヒーローの扱いにムラが生じており、頼れる助っ人として登場することもあれば、敵にあっさりやられたりすることも珍しくなく、当時の児童誌の記事「ウルトラ5兄弟強さくらべ」ですらゼットンに敗れた初代ウルトラマンを散々にこき下ろしている始末であった。
シリーズの路線
『タロウ』以外の作品は良く言えばバラエティーに富み、悪く言えば一貫性がない。
当時はライバル作品との視聴率合戦が激しく、路線変更も多かった。このため、(特に『エース』と『レオ』)お世辞にも帰りマン以外の出来は特撮部分こそ優れているものの良いとは言い切れない。
『帰りマン』は、ドラマのクオリティこそ高いものの、その苦戦ぶりから視聴率が伸び悩み、様々な強化策が打ち出された。ウルトラブレスレットと過去作キャラの登場はその強化策の一つである。プロデューサーの橋本洋二は、「苦心の末に怪獣に打ち勝つ」という本来のテーマから外れるので当初は躊躇していたが、「ウルトラマンが弱すぎる」という意見から、採用に踏み切った。しかし、ドラマの一貫性はあったために高い評価を得ている。
『A』は、当時盛んだったウーマンリブ運動等の影響も相まって、男女合体変身という斬新な変身方法と史上初となる作品を通して登場するレギュラー悪役が登場したが、男女合体変身は物語の中盤で、「ごっこ遊びがやりづらい」などという理由でオミットされ女性側は退場、メイン悪役のヤプールも中盤から活動を休止し、復帰は最終盤になるなど意欲的な要素も次第に控えめになっていき、ドラマも一貫性のないもののなってしまった。
『レオ』は、史上初となるM78星雲出身ではなく、故郷を失った難民として登場。ウルトラセブンことモロボシ・ダンの特訓により強くなるというスポ根ものとして描かれたが、現在では美談にしてはいけないレベルの描写(俳優が抗議するほどだった)、弱い上にギスギスした関係の防衛チーム、ゲストキャラの死亡等の前作と変わりすぎた内容が鬱展開で視聴率が低迷し、結局路線変更で特訓は終了、明るい話も制作されたが、オイルショックによる製作費高騰の影響でそれの削減のために主人公とレギュラー1人を除いて全員が死亡退場、ダンも行方不明に。新レギュラーも数人となり、結果的に当初の路線へ逆戻りすることとなった。
ちなみに、出身地がこれまで違うということもあるが、主人公と血のつながった兄弟が登場した作品でもあり、ウルトラ兄弟では唯一となっている。
一方、『タロウ』は現在ではツッコミどころ満載な描写が指摘され、当時も子供向けになったと批判されることも多かったが、それによってメインターゲットである子供達の人気を得ることに成功し、防衛チームも強く、好評であったことから2期シリーズで唯一路線変更することなく初志貫徹した作品となった。
4作品に共通する要素として、1期シリーズでは描かれなかった、主人公の私生活が描かれたり、主人公を実の兄のように慕う少年がレギュラー登場するという要素がある。少年達はいずれも劇中で肉親と死別するという悲劇に見舞われるが、乗り越え成長する様子が描かれている。
残した功績
問題点も少なくない本シリーズだが、残したものは非常に大きかった。
ウルトラ兄弟の設定は、当時の子供たちに人気を博し、現在のウルトラシリーズへ多大な功績を残したことは間違いなく、『ウルトラマン80』放送終了後久々にウルトラ兄弟設定を復活させた『メビウス』以降はウルトラ兄弟も歴戦の勇士に相応しい扱いをされるようになった。
現在の再登場怪獣は本シリーズからの登場が多く、4年間という長期間放送もあって、現在のシリーズの土台となったと言える。
『タロウ』で確立されたウルトラ6兄弟は、現在ではシリーズの代表格的チームとなっており、メディアや商品展開、客演でも頻繁に登場している。
一方、6兄弟に該当しないレオも弟のアストラと共にウルトラマンゼロというシリーズを消滅の危機から救った功労者の師匠という唯一無二のポジションを確立している。
また、各ウルトラマンの戦闘スタイルは個性となり、現在の個性的な戦士が増えることににつながったといえるだろう。
激動の時代の中で様々な問題と向き合いながらも、シリーズの土台となり、欠かせない作品となったのである。
関連項目
ウルトラシリーズ 昭和ウルトラマン 帰ってきたウルトラマン ウルトラマンA ウルトラマンタロウ ウルトラマンレオ