概要
西武秩父線の開業と同時に運行を開始する有料特急列車専用車両として開発された。愛称レッドアロー。従来西武鉄道の車両は国鉄のようなX01系といった3桁の形式・系列を名乗っていたが、本系列は初めて末尾0の形式・系列となり、形式・系列も4桁表記となった。更に製造を自社内の西武所沢工場で行わず、外部の日立製作所に依頼した。(初期編成3編成12両のみ)
諸元
車体
軽量形鋼を使用した20m級車体を持ち、居住性向上を目的に一般車よりも100mm程度車体幅を広げた。
前面は流線型・非貫通構造で、床面を300mm嵩上げした高運転台としている。更に視界を広げるため前面窓は車体中心部を細いピラーで2分割し、車体隅は曲面ガラスとしている。
側面窓は幅1515mmの広幅固定窓とし、冷暖房効果向上と防曇効果を目した熱線吸収ガラスを用いた窒素ガス封入式の二重窓としている。
客用扉は片側2箇所。客席とデッキを壁で明確に仕切り、折戸を採用した。
塗装はクリーム色をベースに赤帯を巻くツートンカラー。
内装
車内はデッキを設け、仕切り扉は感圧式マットスイッチによって自動開閉する。
座席は930mmピッチで回転クロスシートが並ぶ。これは国鉄の特急普通車のシートピッチよりも20mm広い数値。
トイレは飯能方先頭車に設置。沿線が開発の進んだ住宅地・都市部であることから落成当初より循環式汚物処理装置を搭載する。
機器類
主要機器は保守合理化の観点から一般車の101系と共通のものが採用され、性能も同一に揃えられている。両系列で併結運転も可能だが、試運転や回送列車のみで営業運転では行われなかった。
制御方式は1C8M方式の抵抗制御で、力行ステップはバーニア制御などの特殊装備を持たない抵抗制御車としては比較的多い力行31段を有する。
ブレーキは発電ブレーキを併用する電磁直通空気ブレーキで、秩父線内の勾配に対応する抑速ブレーキも装備する。
台車はペデスタル式空気バネ台車のFS372/FS072。
運用
当初は4両編成でデビュー。多客期には2編成併結した8両編成での運転も行われた。
1974年には第2次車がデビュー。当初から6両編成で登場し、4両編成で登場した初期3編成も新造した中間車を組み込んで6両化された。6両編成への増結過渡期には6+4の10両編成での運転も行われている。2次車は座席を回転式簡易リクライニングシートに変更し、1次車も座席を簡易リクライニングシートに交換している。
1976年に新宿-秩父の特急おくちちぶ、新宿-所沢のむさしが新設されて新宿線にも進出している。
1987年からは特別修繕工事を施工し、座席のフリーストップリクライニングシート化などの工事が行われた。
1992年、後継車となる10000系の導入が発表され、翌年12月のダイヤ改正で5000系は新宿線より撤退。94年から5000系の老朽取替を目的に10000系の池袋線配置が進められ、同年10月の5509・5511編成の廃車を皮切りに淘汰が進められ、1995年10月末を以て定期運行を終了。12月に最後まで残った5503編成が除籍されたことで西武鉄道から形式消滅した。
なお10000系10106~10111編成は5000系から多くの主要機器を流用している。
譲渡車
1995年3月、5501編成のクハ5501・モハ5052・クハ5502、11月に5507編成のクハ5507・モハ5058・クハ5508の合計6両が富山地方鉄道へと譲渡された。
しかし機器類は10000系へ流用されることが決定しており、地鉄へ渡ったのは車体と10000系へ流用しないほんの一部の機器のみとなった。
地鉄譲渡後は同社の工場で全国から集められた機器を装備し、16010形と名を改めて95年7月より運行を開始した。
2020年10月には5000系の後継車である10000系が地鉄へと譲渡され、25年ぶりに車体と足回りが再会することとなった。
保存車
最後まで西武線に残っていた5503編成の両側先頭車が横瀬車両基地に保存され、イベントなどで見ることが出来る。
クハ5503は1両まるごと、クハ5504は乗務員室のみを残したカットモデル形式となっている。
クハ5503は貫通扉を封鎖した以外は新製当初に近い姿へと復元している。