「ちょうしこいてんじゃねェ 小僧ォッ」
概要
声:緒方賢一
齢146を数える中国武術界の頂点。
海王の中の海王であり、全ての海王を統べる「海皇」の称号を持つ。烈海王の師のひとり。
普段は車椅子に乗っており、骨に皮がへばりついただけという印象の老人。
息子に郭春成がいる。
人物像
普段の様子とは異なり、いざ戦闘となると俊敏かつ無駄のない戦いをする。なお且つ146年という人間の寿命を超える人生を生きている為か、知識は豊富。
普段は人格者を装っているが、目的の為には手段を選ばない苛烈で冷酷な性格。中国大擂台賽での海王たちの惨敗に憤り選出にあたった武術省の重鎮3人の利き手を切り落としている。たとえ実の息子であっても、敗者に対しては目を向けない。一方で、機嫌が良かったり認めた相手には自身が会得しているレアな技を伝授するところもある。
ピクル編ではマッハ突きを武器にピクルに挑もうとする愚地克己に真マッハ突きを会得するヒントを与えたり、刃牙道では宮本武蔵に挑む烈に対して、修練に付き合ったりもしていた。
戦闘スタイル
長く生きた年月の大半を費やす鍛錬によって会得した、ありとあらゆる中国武術の集大成とも言える『究極の理合』をその身に体現し、完璧に使いこなす神懸かり的な『技』の持ち主。
肉体そのものはそのヨボヨボの見た目通り非常に脆弱であり、腕力・頑強さ共に一般人レベルにすら遠く及ばず、平時では最早普通に立って歩くことも適わない。
しかし、郭の『技』に掛かれば常人を超越した俊敏な動きを実現し、筋肉達磨の巨漢の体が意図も容易く宙を舞い、手刀で人間の手首を鋭い刃物で切ったかのように綺麗にすっぱり切り落とし、ただのパンチがコンクリートの壁を粉砕する威力にもなるなど、恐るべき力を発揮する。
また、岩をも砕く一撃をその身に受けても、威力と衝撃を完全に受け流して無効化し、無傷でケロリとしているなど、守りも鉄壁である。
その極意は究極・極限とも言えるほどのリラックス状態となることで、肉体を軸に周囲の力の流れをコントロールする『消力(シャオリー)』にある。
郭ほどの実力者ともなれば応用の幅は最早魔法の如き変幻自在振りであり、己の体重を完全に消し去って一時的に飛翔することすら可能なレベルとなる。
長い鍛錬の末に無意識かつ脊髄反射のレベルで『消力』で如何なる攻撃を受けても流してしまうため、郭にクリティカルヒットを見舞うことはほぼ不可能と言っても過言ではない。
…しかし、範馬勇次郎には、これに劣らないレベルの『消力』を見ただけで真似されてしまう…。
主な技
『消力』(守りの消力)
消力の極意である脱力、それを極限まで高める事で実現する防禦術。
通常人間は攻撃が迫れば反射的に体を強張らせてしまうが、それ故にまともに衝撃を受けてダメージを負ってしまう。
しかし、その本能的な反射をも克服し、極限まで脱力する事で攻撃が直撃しても身体を攻撃に合わせて動かし、衝撃を発生させる事無く受け流し、吸収してしまう。
その効力たるや、あの勇次郎のフルパワーの打撃すら無効化する程であり、鬼の貌を解放しても壁に叩き付けられる事によるダメージは受けたが、打撃そのもののダメージは防げている模様。
春成の腕に乗るという芸当も作中で見せており、守りの消力は単に脱力しているだけでなく、恐らく軽功術も使用していると思われる。
受け流し方次第では、相手の打撃の勢いをそのまま利用してカウンター技に繋げる事も可能。
読者からは「掴め」という感想が少なからず上がったが、武の頂たる郭海皇が何の対策も無いとは考え難い。
実際に作中での回想では合気の様な技も使っており、下手に掴めば柔にて投げ飛ばされる可能性が高く、そもそも守りの消力の極限の脱力は『攻めの消力』の予備動作でもある為、掴んだ瞬間に攻めの消力で迎撃される恐れもある。
まさに攻守一体の妙技と言えよう。
『攻めの消力』
極限の脱力たる消力を攻撃に応用した打撃術。
瞬発力を発揮するには「脱力と緊張の振り幅が要」という原理から、脱力の度合いを高め続ける消力を使う事で爆発的な瞬発力を生み出す事が出来る。
極限の脱力を要としている事から、その打撃速度は蝿も止まるであろう程に緩慢だが、相手に触れる瞬間には急速に加速する。
言うなれば、究極の寸勁といった感じである。
その打撃力は凄まじく、枯れ枝の様な身体でありながらコンクリの壁に直径10m程の亀裂を走らせ陥没させ、勇次郎の巨体をコンクリの床を抉りながら何mも軽々と吹き飛ばすなど、作中でもトップクラスの破壊力を見せている。
刃牙道では本部を背後からの不意打ちで一撃にて失神させてもおり、並の闘士では軽い一撃ですら致命打になる模様。
加えて、当てるまで一切殺気も無い為実に厄介である。(勇次郎は触れられる寸前に直感で危険を察して避けた)
あまりにスローな打撃である為、読者から「避けろ」「攻撃しろ」といった意見が少なからず出たが、この攻めの消力は中々のクセモノである。
極めて打撃速度が遅いのは極限まで脱力しているからであり、これは言い換えるならば『守りの消力』を展開している状態でもある。
その為、カウンターで攻撃しようにもまず通じないと思われる。
それどころか、脱力しているという事は何時でも行動を切り替えられる状態であり、下手に攻撃しようものならその隙を突いてカウンターで切って落される可能性があり、逆に回避しようとしても回避しようとしたのを察知されて逃げた先に打ち込まれたり、動きが固まった瞬間を打たれる恐れがある。
刃牙も初めて見た際にはただの非力なパンチとしか思っておらず、郭海皇の擬態もあって最早初見殺し技であり、仮に刃牙が郭海皇と対戦していたらワンパンKOされた恐れもあり、軽率な対応をしても同じくその即死級の打撃の餌食となり得る。
勇次郎が取った「距離を取る」「ブロックする」というのは実は理に適った対処法であったと言えよう。
ただし、勇次郎の規格外の肉体があったからこそブロックは意味を成せるものであり、並みの者であればブロックしようものなら手足の骨は粉々になりかねないだろう。
『死んだフリ』
武を極め続けた事で完成した護身の極致とも言える技術。
自ら生命活動を停止させる事で仮死状態になるという、死んだフリどころか実際に死亡しているのだが、意図的に蘇生する事も可能。
武の本懐である『生存競争』という点から「勝てずとも殺されずに生き残れれば良い」とされ、自ら死す事で相手の追撃を免れ身を守る。
勇次郎との戦いの中激高するなどついに両者本気に…と思ったところに老衰により死亡という、郭の年齢を考えればありえないと言い切れないことや、実際に医師が診断し臨床学的にも死亡が確認されたこともあって流石の勇次郎も騙され、やり場のない感情から「ふざけんな」とキレた。「これは勝ちと言えるのか」というモヤりも広がったがその後あっさり復活。その際には息子や弟子たちもキャラが壊れるぐらい驚いていた。
郭はこれで生き残った事を「武の勝利」としたが、春成や多くの読者から不服の声が上がった。
しかし、生存競争という次元で戦う武術家にとって生存出来る事は再戦や闇討ちなどのチャンスへと繋げられ、相手がそれで死すればそのチャンスを与えてしまった相手の失態と言う他無い。
故に、見抜けず拳を止めて戦いを切り上げてしまった勇次郎の不覚(郭海皇の戦術勝ち)と言えよう。
『合気(?)』
郭海皇の回想シーンで描かれた投げ技らしき技。
消力の追求を進め、齢100歳に達した頃に理合に開眼して身についた技であり、恐らく合気道にもある脱力により相手の力を抜いて投げるという技術に近しい技術と思われる。
作中では郭海皇よりも数倍の体躯を持つ巨漢を宙に舞わせていた。
『手刀』
武術省の重鎮達の手首を切断するのに使用。
実力の乏しい海王を粗製濫造した武術省の重鎮3名に罰として利き手を串の様な物で串刺しにした挙句、手刀で切断した。
腕3本を綺麗に切断するという切れ味であり、平然と行っている事から郭海皇にとっては取るに足らない基本技と思われる。
とんでもねぇ。
『真マッハ突き』
関節が増えたイメージをする事で打突の速度を超音速にまで加速させる打撃法。
その威力は、片手打ちですら糸で吊るされた生卵を一切揺らさず且つ粉砕せずに刃物で切り裂いた様に綺麗に切断する程。
作中で実戦使用された事は無いが、烈曰く郭海皇なら実戦使用可能とされている。
克巳が完成させた全身の多関節化を見て「成った」と発言している事から、郭海皇も全身多関節化によるマッハ突きが使える可能性がある。
妖怪ジジイめッッ!!
来歴
若い頃は純粋に『力』を信奉しており、現在とは真逆の武道を歩んでいた。
当時は鋼のように鍛え上げた重厚極まる筋肉の鎧に身を包まれた巨漢であり、その腕力は『亜細亜一』とまで謳われたほどだったという。
『理合』の理論を嘘っぱちと断じて信用せず、そんなものは圧倒的な『力』の前には無意味であるということを証明すべく、多数の武術家を捩じ伏せてきたが、ある時『理合』を実践した本物の武術家に出会い、それまで負け無しだったにもかかわらず、完膚なきまでに打ち負かされてしまう。
以降、真なる強さを求めて独自に『理合』の鍛錬を重ね、気の遠くなるような月日の中、これまでの自身の強さの象徴にして結晶であった自慢の鋼の肉体が衰えていく絶望に耐えながら、ひたすら研鑽を積み重ねるという人生を歩み、現在に至る。