「あぁ!もうなんて言っていいのか分かんねぇけど、とにかく俺じゃねぇよ!」
「信じてくれて、ありがとな…」
概要
演:中村英司
現代(2005年)の人間。24歳、フリーター。 殺害された恋人・多河柳子と同棲していた。粗野な言動のせいで周囲とよく揉めるものの、実際は純粋な心と優しさの持ち主で、面倒見の良い一面も見せる。
事件当日、岸田百合と鉢合わせていたが、顔つきが柳子そっくりであったため岸田を柳子と誤解していた上、直後に発見した柳子の遺体は顔が認識できない程に潰れていたため、彼女の死を信じていない。その流れで警察に事件について事情を聴かれ、パニックになって逃走してしまったため、殺人容疑者として追われることとなる。
そして柳子の友人であり、占い師でもある喜代田章子の元へ逃げ込み、章子に無実を証明してくれるよう頼む。上記の事もあって「柳子がどこにいるのかを知りたい」とお願いをし、彼女が行ったペンデュラムによるダウジングで、柳子の居場所が夜見島と記されたため(実際は、柳子の大元であり阿部が指名手配される遠因でもある「母胎」に反応していた)、共にその場所に向かうことになった。そして、一樹守等が乗る夜見島行きの船に滑り込む形で同乗し、島に向かう途中で怪異に巻き込まれた。
怪異の中でも比較的マイペースを貫き、文句を言いながらも章子と共に柳子の死んだ原因を探りつつ、途中で出会った三上脩の目的達成の手助けをしていた。章子や三上とのやり取りでは、持ち前の根の良さを見せるが、最終的にはいずれも阿部の元を離れてしまったため、単独行動をすることになった。
残酷且つ陰鬱な展開が続く本編においては、場を和ますムードメーカー的な存在になっており、作中の人物は勿論、彼の言動に心理的に助けられたプレイヤーは少なくない。
※ネタバレ注意!
活躍と結末
他の登場人物が母胎の地上奪還阻止や異形の存在の殲滅等に奔走する中、阿部だけは相変わらず怪異そっちのけで単独行動を続けていた。そのうち空腹を覚えた阿部は、島の名産でその辺に生えていた夜見アケビをムシャムシャ嗜食。この夜見アケビは美味だが凄まじい下痢、腹痛を起こす副作用があり、そうと知らずに食べた阿部は案の定激しい下痢と腹痛に襲われた(島の郷土料理にはこのアケビを具材にした夜見鍋もある)。何とか団地近辺に便所を見つけた阿部は漸く用を足して人心地がつき、上機嫌に便所を出ると鼻歌混じりで一服。火が点いたままの吸い殻をバスケのシュートよろしく便器に放り込み、ガッツポーズした直後、便器内に溜まっていたメタンガスに引火して便所は爆発。爆発は地下のガスを通じて連続し、やがて鉄塔をも破壊する。
この煙草の火の不始末から意図せずに現世と異界を繋ぐ存在であった鉄塔を爆破したため、母胎の地上奪還は事実上破綻した。(鉄塔は因果律の象徴でもあったため、その因果律も崩壊した)
つまり彼は、まさにクソすぎる(原文ママ)理由によって世界を知らない内に救い、英雄になってしまったのである。
このような功績を残したためか、その後は怪異の原因がない、つまり堕慧児や母胎がいない(それが元で生まれた存在や事件もない)平行世界にたどり着く。阿部の指名手配も母胎に起因するものであったため、彼のたどり着いた平行世界ではそれもなかったことになっている。
しかし、それは母胎によって生まれた章子や柳子も存在しない(少なくとも阿部の知っている2人は存在しない)ということも意味しており、それを知った阿部は深い孤独の中で泣き尽くす。そんな彼に、共に平行世界に辿り着いた三上脩の愛犬、ツカサのみが寄り添うのだった。
同じく異界から脱出した、一見事件が収束したかに見えて不穏な一樹、まさにどうあがいても絶望な永井と比べると、母胎に脅かされる心配がない分一番救われていると言えるが、これまでの経歴や対人関係をほぼ否定されたような結果になった阿部自身にとってはそうとも言い切れない。今後の出会いとツカサとの生活が、平穏且つ幸あらんことを願うばかりである。