概要
福岡県福岡市西区姪の浜にある臨済宗寺院『興徳寺』の開祖・大応国師(南浦紹明)にまつわる伝承に登場する龍神。
伝承によると、若き日の大応国師は留学生として『宋』へと渡り、虚山の虚堂禅師に師事を受け、8年間の修業を得て帰国する事となった。
船に乗る為に出立した国司は、険しい山道を行く途中で血に飢えた狼の群れに追われている一匹の白兎に出くわしたので、兎を懐へ匿うと、念仏を唱えて狼が退散するのをじっと待った。命を救われた兎はその後も国師の傍を離れようとはしなかった為、とうとう国師は兎を再び懐に入れて乗船した。
やがて船は玄海難辺りで嵐に見舞われ、今にも転覆しようかという危うい状況に陥った。この時、国師が舳先で一心に念仏を唱えていると、懐から兎が飛び出したかと思うと、波間を飛び跳ねながら怒涛を鎮めていった。兎が通った後は不思議な事に水が引いて一筋の道となり、人々はその道を通って福岡の姪浜まで無事に辿り着く事ができたのだった。そして国師がふと空を見上げると、皆を導いた兎は金色の光を放ち空高くへと飛び上がり、龍王の姿になったかと思うと姿を消しさったという。